酒蔵に聞く

「ハッピー太郎醸造所」に聞く!
農産物のようにつくる米麹のどぶろくは滋賀・伊吹山の伏流水で醸す発酵食品

最近、よく聞く“どぶろく”って、日本酒のにごり酒や甘酒とどう違うの?日本酒の元祖とは聞くけれど、おいしいの!?日本酒は好きだけど、実はどぶろくを飲んだこと無いかも!? そんな方には是非飲んでいただきたいのが、「ハッピー太郎醸造所」ハッピーどぶろくだ。

ハッピー太郎醸造所
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どぶろくとは?

最近、よく聞く“どぶろく”って、日本酒のにごり酒や甘酒とどう違うの?日本酒の元祖とは聞くけれど、おいしいの!?日本酒は好きだけど、実はどぶろくを飲んだこと無いかも!? そんな方には是非飲んでほしいのが、「ハッピー太郎醸造所」ハッピーどぶろく。極力お米を溶かすように醸すことで比較的サラサラしており、また綺麗な酸味があり飲みやすい。
女性や日本酒が苦手な人にも人気だ。

 ラベルにデザインされているのは滋賀県米原市の山間集落に拠点をおき、日々出逢う自然や動物をテーマに制作活動をしている切り絵作家早川鉄兵さんに依頼したキツネのモチーフ。▲ラベルにデザインされているのは滋賀県米原市の山間集落に拠点をおき、日々出逢う自然や動物をテーマに制作活動をしている切り絵作家早川鉄兵さんに依頼したキツネのモチーフ。

まず、ご存知のとおり、日本酒は「米と米麹、水を主原料とし、発酵させて、濾したもの」。
なぜ濾さないといけないのか?その話は今回はさて置き、酒税法にはそう定義されている。
その過程で荒い目で濾した結果、白濁しているものが「にごり酒」で、濾していないものが「どぶろく」だ。
定義上、一般的にはどろどろ加減は「どぶろく>にごり酒」となる。
日本におけるどぶろく作りの歴史は稲作の歴史とほぼイコールと言われている。
諸説あるが、稲作伝来が紀元前3500年ごろと言われている為、日本酒のオリジン、祖先と考えても間違いはないだろう。
どぶろくはまだ未発酵のお米が残っているので、ほんのりお米の甘みを感じられる。
食感は甘酒のように、お米からのメタモルフォーゼを感じながら飲むと、とても味わい深い太古の致酔飲料だ。

発酵文化そのものがおもしろい

「ハッピー太郎醸造所」は彦根で2017年に誕生。
2021年12月に湖のスコーレ開業ととともに移転し2022年2月からどぶろくの醸造を開始した。
鮒寿司をはじめ多くの発酵文化色濃く残る滋賀の地で、発酵文化そのものを楽しみ、後世へ残すために誕生した複合施設「湖(うみ)のスコーレ」とともに産声をあげた。
同施設には、チーズの製造室があり、チーズや味噌造り体験などを通じて発酵文化を学ぶことができる。
併設のカフェでは、手作りの発酵食品を使ったメニューを食べることができる。

長浜の地には米作りのアイデンティティーがあり、郊外の平野に広がる田んぼは、日本人が忘れかけていた風景そのもの。いくつかの必然が重なり、ここ長浜の地でどぶろく製造が始まった。

ハッピー太郎醸造所 池島幸太郎さん▲ハッピー太郎醸造所 池島幸太郎さん

ハッピー太郎こと池島幸太郎さんは、酒蔵勤務などを経て発酵文化に興味を持ち、最初は麹(糀)を製造販売していたそう。
麹は酒造りだけでなく、味噌、醤油、みりん、米酢、甘酒、焼酎、漬物など、日本を代表するさまざまな調味料・食材の製造に欠かせないもの。
「大切なものだからこそ、広く伝えたい!」と意気込んだのも束の間、なかなか売れない現実を突きつけられたそう。発酵文化を失いかけた日本人の一般家庭で、麹はほとんど使われなくなった代物。スーパーでも1種、多くて2種ほどの乾燥麹が片隅で販売しているというのが現状だ。

それでも3年ほどかけて地道にファンを増やしていき、ようやく工房の生産能力が天井に差し掛かってきたころ、タイミング良く湖のスコーレから「どぶろくを造りませんか?」と声がかかり、半年をかけてどぶろくの醸造免許を取得。
米づくりの地、長浜で幸太郎さんは米麹をも造り、日本酒の祖先とも言えるどぶろくを醸す人になったのだ。

ハッピーになれる2つのどぶろく

幸太郎さんの造るどぶろくは、大きく分けて2種類。
ひとつは正真正銘どぶろくで、いわばプレーンなタイプ。これを「ハッピーどぶろく」と呼んでいる。
そしてもうひとつはどぶろくに、いちご、八朔、煎茶、ハッカ、ブレンドハーブ、葡萄などの副原料を加えた「サムシング・ハッピー」。
季節限定のものが多く、面白い味わいが楽しめる。
特に冬から春先に発売される「いちご」はファンの多い人気商品。
飲んだ瞬間に口いっぱいに水々しい「いちご」の香りが広がる。

右の001がハッピーどぶろく醸造タンク。左の002がサムシングハッピー用。この2つしか醸造タンクはありません。お1人で手のいき届く範囲での丁寧な酒造りが伺えます。▲右の001がハッピーどぶろく醸造タンク。左の002がサムシングハッピー用。この2つしか醸造タンクはなく、1人で手のいき届く範囲での丁寧な酒造りが伺える。

幸太郎さんのどぶろく用の麹は、味噌用の菌を使用しておりアミノ酸が比較的多く発生するのが特徴。信頼のおける農家の米(無肥料、無農薬のものが中心)だけを“言い値”で購入している。
これは幸太郎さんが、農業に従事していた期間も長かったことが起因しており「あれだけ過酷な思いをして出来たもの」という気持ちがまだ残っているとのこと。

幸太郎さんの想いは続く
「農家さんには見合った収入を得て欲しい。10年〜30年間自家採種をして、その土地に“なじんだ”お米を使うことを大切にしています。そして綺麗な土壌で育ったお米で醸したどぶろくは綺麗な味わいになりやすいと感じています。さらに、農家さんの手元では商品選別のふるいから落ちるお米が10%程度あり、そのお米を“はみだし米”と呼んで買い取って、どぶろくのかけ米として使っています。実は、そういうお米は崩れやすいからこそ、どぶろく造りには最適だと考えています。なにしろ、濾過をしないどぶろくは、米が溶けた方が飲みやすい。そして、どんなお米も人も、どこかに居場所があるのが幸せですよね!ゆたかな経済圏は、そうやって育まれると考えています」

池島幸太郎さん

行き着いたのは、農産物のようにつくる米麹
目的によって麹をデザインする

日本酒もどぶろくも麹づくりが大切なのは同じ。しかし、麹の作り方が日本酒とは違うと幸太郎さんは言う。「日本酒を極めた訳ではないですが、酒造りを経験して感じたのは、日本酒は濾して透明な液体をおいしくするために麹をデザインする。いわば“工芸品”のように洗練させる作り方。一方で味噌、甘酒、どぶろくは麹ごと食べるための液体をおいしくするための麹デザイン。例えば、味噌汁は濾さないですよね?より重要になるのは、そのまま食べて美味しいか。最後まで水を絶やさずに、実を熟すように育て、収穫するイメージです」。

ハッピー太郎醸造所 麹室▲すべて滋賀県産の杉材で作られている麹室。昔ながらの麹つくりを目指しており、かなり湿度は高め。

目指すのは、自然との調和

「僕なりの良いお酒の条件があります。キャンプが好きで、森の中や湖畔など、自然の中で感じる自然の香りはとても豊で、この中で違和感を感じないお酒を作りたいと思っています。だから6号酵母のやさしい香りは好き。自然と調和し、人の体にも染みわたりやすいかなと考えています。サムシングハッピーにも、様々な副原料を使うので、今のところ穏やかな6号酵母が最適だと思っています」と幸太郎さん。

火入れのしかたも独特で、保管や開封などその後の取り扱いを容易にするために、酵母数を減らす程度に熱をかけているそう。その分、醪のフレッシュな香りを残したどぶろくに仕上がっている。
「今月から“生酛造り”のどぶろくも始める予定です!」
「今後は副原料に合わせて酵母を変えてみてもおもしろかな?」
山、田、湖。自然豊かな滋賀長浜で、大昔からの酒に思いをよせて、幸太郎さんのチャレンジは続く。

ハッピー太郎醸造所 池島幸太郎さん

ハッピー太郎醸造所醸造室の蛇口からは伊吹山からの伏流水(地下水)が滾々と流れ出す。薬草の宝庫として有名な伊吹山は醸造所からも望むことができる。雨水は石灰岩層を通って長浜の町に流れ込み、水は中硬水。口に含むとアタックはまろやかで綺麗だが、後味に割とミネラルを感じる。幸太郎さん曰く「この中硬水は麹の味を引き出しやすい」。

ハッピー太郎醸造所

明後日瓶詰め予定のハッピーどぶろくのタンクを見せてもらった。
吟醸酒のように10度以下で管理されており、良いかおりが辺り一面に広がる。

このどぶろくを飲んで多くの人が笑顔になっている姿が想像できる。

ハッピー太郎醸造所

ハッピー太郎醸造所

創業
2017
代表銘柄
Something happy
住所
滋賀県長浜市元浜町13-29 湖のスコーレ内Googlemapで開く
TEL
080-5236-2593
HP
https://happytaro.jp/
営業時間
11:00〜18:00 
定休日
火曜日

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