【豆知識】海のロマンを感じる日本酒、ちょっと不思議な海底熟成酒について知りたい!
海の底で貯蔵すると、お酒が美味しくなるって知ってました?通常の熟成とはどんな違いがあるのでしょう。ちょっと変わった海底熟成酒について唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
海の底で熟成させる日本酒って?
海底熟成酒という言葉をご存知ですか?海の中に半年から数年間沈めて熟成させた日本酒のことで、瓶の表面にはフジツボや付着物がつくこともあり、珍重されています。海中での熟成は陸とは違った味わいになるといわれ、数年前から日本酒に限らず焼酎や泡盛、ワイン、ウィスキーなど様々なお酒においても試みられています。
きっかけは沈没船のシャンパーニュ
では、海にお酒を沈めるなんてアイデアはどこから生まれたのでしょう?
ヒントとなったのが、沈没船から見つかったシャンパーニュでした。2010年にフィンランド沖に沈んでいた難破船が引き上げられ、積み荷からたくさんのシャンパーニュを発見。調べてみると約180年前に製造されたグーグ・クリコとわかり、世界最古のシャンパーニュとしてオークションにかけられ、高値で落札されたことが話題になりました。
この出来事をきっかけに注目が集まり、南仏やイタリアなど各地で海底熟成を行うワイナリーが現れました。
日本各地で行われる海底熟成
ここ数年、日本酒でも各地で海底熟成が行われ、販売されるようになりました。一例としては京丹後の琴引浜沖や三重県の英虞湾、静岡県下田、北海道ほかが挙げられ、なかでも瀬戸内海の牡蠣いかだを利用したお酒は、呉市のふるさと納税返礼品に採用されています。蔵元自らが行うこともありますが、酒販店の企画やクラウドファンディングを利用するケースが多いようです。
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どうして美味しくなるのかは不明
海中に貯蔵された日本酒は、通常と比べて熟成が早く進み、まろやかな味わいになるといわれています。でも、その理由はまだはっきりとはわかっていないのだとか。海中には光が届かず、低い温度に保たれること、さらには波による細かい振動が熟成に良い効果を与えているのではと考えられているそうです。
学術的には、東海大学海洋学部の研究チームが2019年から泡盛での研究を開始。日本酒においても地元の酒造業者と連携し、静岡県清水港内水深2.5mの海底に日本酒を貯蔵して分析を行なっています。これから研究が進んで、熟成のメカニズムが解明されることを期待しています。
ほかにはこんな変わった場所で
変わった場所を利用した熟成日本酒はほかにも。洞窟や鍾乳洞などの天然の貯蔵庫をはじめ、富士山頂や昔の防空壕、ダム内部、廃墟となったトンネルなども使われているなんてびっくり。ちょっとした話のネタにもなりそうです。
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海のゆりかごに揺られて長い眠りから目覚めた日本酒を、波の音を思い浮かべながら一献傾ける。海のロマンを感じるひととき、贅沢な時間が過ごせそうですね。
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほかお酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。
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