酒蔵に聞く

【酒蔵クロストーク】福井~京都に続く鯖街道、始終着の酒蔵が見据える先とは!?

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鯖街道、始終着の酒蔵
「福井・小浜酒造」×「京都・松井酒造」
【酒蔵クロストーク】

2023年5月27日・28日に開催されたイベント「やせのそとあそび」

叡山電車「八瀬比叡山口駅」下車すぐにて八瀬の自然に包まれて“そとあそび”が満喫できる大人から子どもまで楽しめる年に1度のフェスティバル。
鯖街道をテーマに“若狭もの”の販売をはじめ、人気店のおいしい特別メニューなども提供。

イベントのベースにもなっている「鯖街道」。単なる道の名前だけではなく“鯖街道”という文化。鯖が来た道で、鯖だけではなく小浜と京都との文化が往来したと言われている。
イベントの目的として地域の特色ある文化や食を見つめ直し、自分たちのアイデンティティを理解し誇りを持ち豊かな暮らしを考えるいい機会となっている。

今回はSAKE WORLD編集部もブース出店。

鯖街道の出発点でもある福井「小浜酒造」、終着地点の京都「松井酒造」の各銘柄を中心に編集部が厳選した日本酒の試飲や飲み比べを開催。

イベントの目玉は小浜酒造・代表取締役 高岡明輝(あきてる)さんと松井酒造・15代目松井治右衛門(じえもん)さんによる酒蔵クロストーク。

トークテーマ「京都・小浜、両市の再興蔵、日本酒酒蔵による1000年を見据えた今、何をすべきか?」

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小浜酒造・代表取締役/高岡明輝さん
プロフィール
1830年創業、前身の「わかさ冨士」の閉業に伴い、娘婿として事業継承。2018年に小浜酒造として復活し地元産にこだわり新しい形で「わかさ」など地酒を受け継ぐ。

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松井酒造・15代目/松井治右衛門さん
プロフィール
京都出町柳に位置する享保 11 年(1726 年)創業の酒蔵。治右衛門さんが大学生の頃に先代と共に酒蔵を復活。「神蔵Kagura」「富士千歳」などを醸造。

2蔵の共通点、再興蔵~酒造り~こだわりに関して

    • 松井さん
      「出町柳で酒造りをしており、享保 11年(1726 年)創業、もうすぐ300年なります。元々は兵庫県香住という町から江戸後期に京都へ。そして大正時代に現在の場所へ。45年ほど前に鉄道が延伸してくる工事があり、そのタイミングで水が出なくなることに。一旦、松井酒造としては酒造りを辞めました。私としては大人になるまで全くお酒の事を知らないまま育った。その後、東京で勉強していたところ、父親(現在の会長)から酒蔵を復活させると連絡があり2009年の14年前に一 緒に復活しました。」
  • 高岡さん
    「創業は1830年、小浜南川というほとりで当時は“わかさ冨士”という名前で酒造 りをしていた。そんな中、義父の代で一旦蔵を閉じることになった。日本酒の販売のみ手伝っていたところ、海外で販売する機会があり英語表記など世界に目を向けたデザインの考案をしたところ販売数が増加した。日本酒の良さを伝えたい、地酒の灯を消さないという想い、義父からの依頼もあり2018年に酒蔵を復活させた。」

 

酒造りの学びのスタートは?

  • 松井さん
    「まずは伏見の酒蔵に修行に伺いました。その後、スタートしてから3年間は能登杜氏さんに来ていただきました。能登の珠洲にある“宗玄酒造”さんで長く杜氏されていた方が私の師匠になります。私たちのお酒造りはひょっとすると宗玄さんに似ているのかもしれません。」
  • 高岡さん
    「私も全く同じ。最初の3年間は能登杜氏さんに来ていただきました。滋賀県で薄桜を出している増本藤兵衛酒造場にいらっしゃった方です。来られた当時86歳という大ベテラン!能登弁が強くて聞き取れない中からのスタートでした。」

 

酒造りで大切にされていることは?

  • 松井さん
    「ありすぎてどれから言っていいものなのか(笑)小さい蔵なので1年中酒造りをしています。そのため温度管理、衛生管理は徹底しています。ビルの1Fで酒造りをしているという事もあり古くて新しい、伝統と革新を大切にしています」
  • 高岡さん
    「水ですね。お酒は8割以上が水。海沿いで湧き立つ小浜の水は名水とも言われており、非常にきれいな軟水。お水の良さを武器に素材の良さを大切にしている」

 

それぞれのお酒の特徴は?

  • 松井さん
    「酒蔵で飲むお酒は美味しい、搾りたての生のお酒を出したいとの想いで無濾過生原酒を出している。美味しさの期間は短いが美味しさのピーク高さを意識している。」
  • 高岡さん
    「“地域に根ざしたお酒”との想いから、100%小浜産の米と水を使用。小浜酒造の武器の水を活かした土地の個性が感じられるお酒。」

蔵としての新しい取り組み

外国人蔵人に関して

  • 松井さん
    「アメリカ、ニューヨーク出身の蔵人が1人います。コロナ前にふらっと来て、お酒と造りたいという熱意が強いこともあり採用しました。海外からのお客さんも増えてきていたタイミングだったのでマッチしましたね。」
  • 高岡さん
    「アメリカ出身、前職は英語の先生。アニメが好きで日本に来た。SNSで外国人から見た酒造りをテーマに発信しています。」

 

キャラクター・アニメ・ゲームとのコラボ

  • 松井さん
    「これからの300年をどうするか?を考えていた時に海外も踏まえ“米山舞さん”にお願いをしてメインキャラクターを描いてただいた。おかげさまで注目度は高いです」
  • 高岡さん
    「小浜では旧歴を大切にしている。旧暦になぞらえて出したお酒“五芒星”が陰陽師を題材にしたゲーム“あやかしランブル”とコラボをしている。旧暦や月の満ち欠けで酒造りが変わるの分からないが今後実験をしてみたいですね。」

鯖街道1000年後を見据えて今何をすべきか?

  • 松井さん
    「小浜との関係は、鯖の養殖事業で弊社の酒粕を食べている。鯖街道の終着地点の酒蔵が遡っていって餌を与えており“よっぱらいサバ”というブランドがあります。このような伝統は途絶えさせず続けていきたい。1000年後は環境を意識して、太陽光発電などのカーボンニュートラル、土に返る素材など意識しています。」
  • 高岡さん
    「1000年とは言わず、50年100年を見据えて、情報は全てオープンにしています。国籍、性別問わず、やる気のある方と一緒に酒造りがしたい。今関わっているすべての人の経験を後世に伝えていきたい。そして1000年後に多くの人が幸せになるような飲み物が出来ていたら嬉しいですね。」

経歴の違う2蔵だが、共通点も多く興味深い内容。
美味しい日本酒を造りたいという想いはどこも同じ。
日本酒を始めさまざまな日本の食文化が見直されてきている中、酒文化と鯖街道を通じて少しでも本質的な豊かな暮らしや自然との繋がりを見つめ直す機会になれば幸いだ。

最後に「うちのルリやクリアは小浜の海の色に似てませんか?」と松井さんの一言が、小浜と京都、そして鯖街道の繋がりを物語っている。

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