農酵酒 sign50
都錦酒造 | 島根県
都錦酒造
「都錦酒造」は明治17年(1884年)、石見・那賀の都濃村(つのむら)と呼ばれていた地域で創業した。健やかな微生物の営みや自然のダイナミズムから生じるケミストリーを大切にした酒造りを営む。
石見・那賀の都濃村で冬に仕込まれ春に搾られた酒が夏を越して熟成し、最も味わい深くなる秋に、高都濃山(高角山)や周囲の山々の樹木が紅葉し、錦のように美しく彩られる様子から「都錦(みやこにしき)」と酒造場の名が付けられた。
醸造所が立地する場所は、太古は海底であったと言われている。こうした歴史と豊かな土壌もあり、自社敷地にある井戸から汲み取る多様かつ多量なミネラルを含んだ「錦彩水(きんさいすい)」を原料水に使用する。
中国地方一の流域面積を誇る「江の川」が日本海と出会う豊富な水源がある地で行う酒造業は“ナチュラルでシンプル”がモットー。土壌や微生物、地域の風土などを大切にすることで、味わいや風味を超えた自然のダイナミズムを感じる酒造りを目指す。
豊かな土壌や脈々とこの地に受け継がれる自然の恩恵を最大限に活かし、ほとんどのお酒に島根県産の無農薬、有機栽培のお米を使い、米原料100%のみというこだわりっぷりだ。
また微生物の営みである発酵の力を引き出すことにも注力している。発酵の醍醐味によってかすかなノイズや揺らぎも味わいとなり、風味での表現を超えた日本酒における感動の要素となる。
種々の生物が共生する健全な土壌から生まれる実り。そしてその実りを舞台に繰り広げられる健やかな微生物の活動。自然の流れから生じる化学反応に醸し手が調和していくことで、余計な手が加われない素直な美味しさへと転じていく。
「農酵酒(のうこうしゅ)」はまさに都錦酒造の酒造りを体現する代表銘柄だ。原料米も環境保全型農業のもと、多様な微生物や小動物、植物が共生する土壌で育ったものを使っている。素材主義の純米酒で素直で飾らない、発酵のエッセンスを濃厚に表す味わいに仕上がった。
都度出会う農産物の個性を認めて、微生物の営みにも感性で応えた醸造に日々勤しむ「都錦酒造」。今後は清酒の製造にとどまらず、発酵を中心とした幅広い事業展開で自然との調和を目指していく。