【豆知識】新品種も続々と誕生!100品種以上もある日本各地の酒米について知りたい!
日本酒選びのポイントの一つが酒米。有名な「山田錦」以外にも全国にはたくさんの品種の酒米があり、地元産の酒米にこだわる酒蔵も増えてきました。もっと知りたい酒米について、唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
酒米と食用米はどう違う?
酒米とは別名を酒造好適米といい、日本酒造りに特化したお米の品種を指します。農林水産省に酒米として登録されている品種は100種以上あり、新品種も続々と開発されています。
ところで酒米と私たちがご飯として食べるお米とは、どういう違いがあるのでしょう?
酒造に適した米の特徴として挙げられるのは、①粒が大きい ②「心白」の大きさがほどよい ③タンパク質が少ないこと。
心白とは米の中心にある白く見える部分で食用米にはほとんどありません。心白の部分はでんぷんの隙間が多いため、吸水率が良く、麹菌の菌糸が入り込みやすくなります。タンパク質は雑味の原因となるため少ない方が好ましいとされています。
また、山田錦に代表される酒米は、稲の背が高く倒れやすいことや収穫量が少ないために、一般に値段は食用米の約二倍ほど。山田錦を使用したお酒が高価なのもうなずけますね。
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3品種で生産量のほとんどを占める
最も生産量の多い酒米の王者は、なんといっても「山田錦」。ほぼ全国で栽培していますが、代表的な産地は兵庫県。なかでも加東市社地区、加東市東条地区、三木市吉川町は特A地区aと呼ばれ、この地域の山田錦は最高品質と評価されています。大吟醸酒などに使われることが多く、繊細でまろやかな味わいが特徴です。
次に多いのは「五百万石」。新潟県を始め、東北南部から九州地方まで広い地域で栽培されている早生品種です。すっきり淡麗な味わいに仕上がります。
三位は「美山錦」。長野県を中心に東北地方で主に栽培されています。すっきりと軽やかな味わいが特徴です。
これら山田錦、五百万石、美山錦の3品種で生産量のほとんど、約70%を占めています。
全国各地の酒米いろいろ
ほかにも有名なものでは岡山県の「雄町」、山形県の「出羽燦々」、広島県の「八反錦」、青森県の「華吹雪」、兵庫県の「愛山」、北海道の「吟風」などが知られています。なかでも京都府の「祝」は京都だけの酒米として、府内の契約農家のみで栽培され、府内の蔵元限定で使用が認められています。
近年では新品種の開発が進み、2024年だけでも長野県の「やまみずき」「夢見錦」、奈良県の「なら酒1504」、北海道の「北冴」などが登録出願されています。注目されるのは奈良県で初めて開発された酒米「なら酒1504」で、今後は清酒発祥の地・奈良のオリジナル清酒の誕生が期待されています。
地元の米で醸す「本物の地酒」
この頃は日本酒でもワインのようにテロワール(気候風土や土地の個性)が意識されています。これまで日本酒造りにおいてはほかの地域から輸送した米を使うことが多くありましたが、土地の米と水で醸した「本物の地酒」を作ろうとする酒蔵も増えてきました。また、地元産の酒米が注目されることで、近隣の米農家と協力して自ら米作りに携わる酒蔵もあり、地域の活性化につながっています。
酒米によって日本酒の味は変わります。その地域ならではの味わいは、それぞれの個性ある酒米から生まれるといえます。時には酒米に注目して、日本酒を探してみるのもおもしろそうですね。
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ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。