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“酒米の王様”を極める!「山田錦」を使ったおすすめの日本酒12選

日本酒造りに使用される酒造好適米は、日本酒の味わいを決定づける重要な要素だ。今回は、“酒米の王様”とも呼ばれる代表的な品種「山田錦」で醸した、おすすめなお酒をご紹介!

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日本酒造りに使用される米は酒米、または酒造好適米(日本酒造りのために開発された米)と呼ばれ、日本酒の味わいを決定づける重要な要素だ。現在日本各地で、気候風土に合わせた100種類を超えるさまざまな品種の酒米が栽培されている。なかでも、全国の酒造好適米生産量の約4割を占め、“酒米の王様”とも呼ばれる代表的な品種が「山田錦」だ。

酒造りに理想的な特性を備えた“酒米の王様”

1923年、兵庫県立農事試験場で「山田穂」を母に、「短稈渡船」を父として人工交配され、優れた特性を持つ新品種として生み出された。その後、さまざまな試験を経て1936年に「山田錦」として誕生。
酒造好適米のなかでも、粒が大きく、心白が現れやすいなどの特徴を持つ一方、背が高いため(約130cm)台風などの強風に弱く、育成期間が長いなど栽培の難しさもある。現在山田錦は各地で栽培されているが、気候や地形・地質に恵まれた兵庫県は、全国シェアの約6割を占める最大の生産地であり、次に岡山県、山口県と続く。

山田錦が“酒米の王様”と呼ばれる理由は、日本酒造りに理想的な特性を備えていることだろう。大粒で砕けにくい性質は高度な精米に耐えられる。大きな心白は、麹菌が米の内部まで菌糸を伸ばしやすく、良質な麹作りを可能にする。雑味の原因となるタンパク質が少ないのも大きな利点だ。さらに吸水性が高く、麹作りに最適な“外硬内軟”の蒸米を作りやすい。
つまり、山田錦は高品質の酒を醸造できる理想的な酒米と言えるのだ。 多くの酒蔵が山田錦を好んで使用する理由はここにあり、その高い評価こそが、“酒米の王様”という称号を裏付けるのである。

特A地区の山田錦って?

山田錦は兵庫県で誕生し現在では他の地域でも栽培されているが、最高品質の産地として知られるのは兵庫県、なかでも特地区と呼ばれる県南東部の三木市吉川町、加東市東条町、加東市社町である。山麓や谷あいの棚田地帯で日照時間が長く、昼夜の気温差が大きいという気候条件に加え、酒造好適米の生育に必要なミネラルや養分に恵まれた土壌という理想的な条件が揃った、山田錦の生育に最適な環境なのだ。
山田錦の産地では、古くから「酒米買うなら土地を見て買え」といわれてきたという。良質な酒米の生産には、産地の気候風土や土壌条件が重要であることを示しており、山田錦の主要産地は、まさにこの条件に恵まれた土地と言えるだろう。

それでは、山田錦で醸した酒を紹介していこう。

兵庫県特A地区産山田錦を100%使った日本酒

越前岬 大吟醸 / 田辺酒造

海外の日本酒品評会で最も歴史ある全米日本酒歓評会2023の「大吟醸部門B(精米50%以下)」でグランプリを獲得。和釜を用いた米蒸し、約1カ月におよぶ長期低温発酵、槽搾りによる丁寧な搾りなど、時間と手間を惜しまずに醸されている。田辺酒造の伝統的な酒造りスタイルが体現されたこの大吟醸酒は、控えめな吟醸香と米本来の旨みを巧みに引き出し、上品な味わいを実現。後切れの良さと食事との相性の良さも際立つ逸品だ。

特定名称:大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+1
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
酸度(濃淡):1.4
精米歩合:50%
使用米:山田錦(兵庫県特A地区)
フレーバー:控えめな吟醸香
アルコール度:16%
酵母:非公開
参考価格:720 ml 3,300 円

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城陽 特A地区産山田錦 Kirihata(2023) / 城陽酒造

兵庫県三木市吉川町の桐畑氏が丹精込めて育てた「山田錦」と、軟らかな木津川の伏流水によって醸された限定醸造酒。酒米農家の名を冠した杜氏渾身の一本だ。エレガントな米の旨味と上品な酸味が、スッキリとした心地よい余韻をもたらす。香り豊かな果実を思わせる芳醇な香りと、フルーティな甘みをを楽しめる、とっておきの酒として堪能したい。

城陽 特A地区産山田錦 Kirihata(2023)

原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合:40%
使用米:兵庫県産三木市吉川町産山田錦100%
アルコール度:15%
冷蔵:要冷蔵(10度以下で保管ください)
酵母:きょうかい1801号他
参考価格:720 ml 5,500 円

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多賀 稲澄 純米大吟醸 / 多賀

令和4酒造年度全国新酒鑑評会で金賞を獲得した酒を、マイナス5度で熟成させた希少限定酒。特A地区産山田錦を35%まで磨き、雑味を出さず吟醸酒に相応しい絶妙なバランスを追求して醸された。味わいはデリケートで繊細。リンゴや洋ナシを思わせるフルーティーな吟醸香と程よい甘み、さらに後切れの良さが特徴だ。搾りは伝統的な”袋吊り”を採用。酒袋を吊るし、自然の力のみで滴る雫を集めるこの方法により、醪一本から僅かしか得られない極上の一本となっている。

多賀 稲澄 純米大吟醸

特定名称:純米大吟醸酒
日本酒度(甘辛):-4
原材料:米、米こうじ
酸度(濃淡):1.4
精米歩合:35%
アミノ酸度(コク):0.9
使用米:兵庫県産山田錦(特A地区)
フレーバー:フルーティーな吟醸香
アルコール度:15%
酵母:K-1801
参考価格:720 ml 8,800

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おすすめの山田錦でつくった日本酒

来楽 大吟醸35 / 茨木酒造

兵庫県産の山田錦を100%使用。米は35%まで磨き上げ、すべて手作業の小仕込みにより醸された大吟醸だ。口に含めば、優美でふくよかな香りと、透明感のあるなめらかな味わいが広がる。ほのかな甘みとクリアな飲み口も魅力だ。その卓越した酒質は、2022年全国新酒鑑評会での金賞受賞によって証明され、さらに、日本酒の地理的表示制度である「GIはりま」の認定を受けることで、播磨地方の伝統と技が結実した地酒としての地位を確立している。

来楽 大吟醸35・来楽 大吟醸35 しぼりたて生原酒/茨木酒造合名会社

特定名称:大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+2
原材料:米(国産)・米こうじ(国産米)、醸造アルコール
精米歩合:35%
使用米:兵庫県産山田錦100%
フレーバー:洋梨のような香り
アルコール度:15%
酵母:1801
参考価格:720 ml 3,630 円

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浪乃音・春乃峰 純米大吟醸 生酒(4526コラボ酒)/ 浪乃音酒造、田中酒造

滋賀県内の[浪乃音酒造](浪乃音)と[田中酒造](春乃峰)による蔵元の縁から生まれた限定コラボ酒。同い年であり、なんと誕生日も一緒という縁を持つ 両蔵の蔵元が、同時に精米歩合50%まで磨き上げた山田錦と1401酵母を用いて純米大吟醸を醸すという、ユニークな取り組みだ。「浪乃音」は、そのこだわりが表れた上品な甘みと優しい口当たりが特徴。一方「春乃峰」は、甘みを含んだ繊細な香りと、爽やかな酸味がアクセントとなっている。このセットならではの醍醐味は、個性豊かな2つの銘柄の飲み比べはもちろん、アッサンブラージュによって生まれる、新たな味わいの発見にあると言えるだろう。

浪乃音・春乃峰 純米大吟醸 生酒(4526コラボ酒)

特定名称:純米大吟醸酒
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合:50%
使用米:山田錦
フレーバー:浪乃音/上品な甘味、春乃峰/甘みを含んだほのかな香り
アルコール度:15%
酵母:協会1401
参考価格:1440 ml 5,000 円

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豊倉町下村下 山田錦 生もと 純米大吟醸 2020 /富久錦酒造

酒米を育む田んぼへのこだわりが生んだ、「田圃限定シリーズ」の1本。契約農家である豊倉町営農組合がその品質を保証する「豊倉町下村下」の田んぼで収穫された山田錦を使用している。「豊倉町下村下」は川沿いの低地で水はけが良く、ミネラル豊富な土壌が特徴だ。酒米の栽培環境、つまり田んぼごとの土壌と水の違いが、米の特性に影響を与え、同じ山田錦でも醸された酒は熟成とともに個性が出てくるという。酒米の個性を最大限に引き出すため、仕込みには木桶を用い、昔ながらの「生酛造り」によりじっくりと醸されている。

豊倉町下村下 山田錦 生酛 純米大吟醸 2020 富久錦

特定名称:純米大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+4
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
酸度(濃淡):1.8
精米歩合:50%
アミノ酸度(コク):0.9
使用米:山田錦
フレーバー:芳醇でやわらかな香り
アルコール度:16%
酵母:きょうかい9号
参考価格:720 ml 3,960 円

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山田錦を極めたプレミアム日本酒

越前岬 長期熟成大吟醸「福福」/ 田辺酒造

特A地区産山田錦を40%まで磨き上げ、和釜で蒸した後、白山水系の軟水で丹念に仕込む。この醪を、伝統的な「袋吊り」でゆっくりと時間をかけて搾ったのが「長期熟成大吟醸 福福」だ。特筆すべきは、搾り工程の中盤で得られる「中取り」だけを贅沢に使用している点である。雑味が少なく香りと味わいが整った良質な「中取り」の酒を、年間わずか500本分のみ蔵出しし、3年以上の低温熟成を経て、豊潤な香りと深い味わいの逸品へと昇華させている。

特定名称:大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+1
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
酸度(濃淡):1.3
精米歩合:40%
使用米:山田錦(兵庫県特A地区)
フレーバー:熟成香 豊潤な香り
アルコール度:16%
酵母:自社酵母
参考価格:720 ml 11,000 円

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美濃菊 純米大吟醸 薫 / 玉泉堂酒造

軟水仕込みと兵庫県東条産特A地区山田錦とを組み合わせ、総手造りで丹精込めて醸された「美濃菊 純米大吟醸 薫」。華やかな香りと透明感のある味わいを追求し、瓶燗火入*後、瓶囲い冷蔵熟成**という、手間を惜しまない工程を経て仕上げている。数種のベリーを思わせる香りが特徴で、ほのかな甘みとクリアな旨味が絶妙なハーモニーを奏でる。雑味のない澄み切った味わいは、この酒の真骨頂と言えよう。楽しみ方は多彩で、やや冷やしてワイングラスでじっくりと味わうのもよし、和食やフレンチなどのコース料理の食前酒としてもおすすめだ。

*瓶燗火入:生酒を瓶に詰めてから湯煎して火入れ(加熱処理)を行う方法
**瓶囲い冷蔵熟成:火入れした酒を瓶に詰めて低温で貯蔵熟成する方法

特定名称:純米大吟醸酒
日本酒度(甘辛):±0
原材料:米(国産)、米麹(国産米)
酸度(濃淡):1.2
精米歩合:30%
アミノ酸度(コク):1.0
使用米:兵庫県東条産特A地区「山田錦」
フレーバー:ベリー
アルコール度:15%
酵母:協会1801
参考価格:720 ml 15,400 円

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大吟醸原酒 鮒屋三右衛門 /北川本家

全国新酒鑑評会に出品された斗瓶採り(とびんどり)原酒の逸品である。
京都・伏見の[北川本家]が、360年以上受け継いできた伝承の技で醸した大吟醸「山田錦」の原酒だ。醪を入れた酒袋から自然に滴り落ちる雫酒(しずくざけ)を一斗瓶*で受け、その中でも厳選された最高品質の酒のみを瓶詰めしている。年間100本ほどの稀少な限定酒だ。きれいな香りと澄明な味わいが特徴で、まさに極上の日本酒と呼ぶに相応しい一本といえよう。

*斗瓶:一斗(一升瓶10本分、18リットル)の酒を溜めることができるガラス瓶

特定名称:大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+2
原材料:米、米こうじ、醸造アルコール
酸度(濃淡):1.5
精米歩合:39%
アミノ酸度(コク):1.3
使用米:山田錦
フレーバー:華やか
アルコール度:17%
酵母:1801他
参考価格:720 ml 11,000 円

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山田錦でつくったおすすめの熟成酒

葵鶴 AOI CLASSIC 259 / 稲見酒造

兵庫特A地区山田錦100%の純米大吟醸を、20年寝かせた至高の熟成酒。フランス・パリで開催された日本酒コンクール「KuraMaster2024」古酒部門での金賞受賞ほか、International Wine Challenge(IWC)での受賞など、海外での評価も高い。味わいは深遠で、柔らかな口当たりと香り、輝く琥珀色が贅沢さを醸し出す。熟成チーズや風味豊かな料理との相性が抜群で、ドライフルーツやチョコレートとのマリアージュも絶品だ。特別な日の晩酌や大人のデザートタイムに最適な、古酒の真髄を堪能できる逸品である。

特定名称:純米大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+2
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合:50%
使用米:兵庫特A地区山田錦100%
フレーバー:カラメル、ナッツ、マスカット
アルコール度:15%
酵母:非公開
参考価格 720 ml 11,000 円

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熟露枯 大吟醸 秘蔵10年 / 島崎酒造

「熟露枯」は、自然の洞窟を活用した“洞窟酒蔵”というユニークな環境で低温熟成されているのが特徴だ。年間平均気温10度前後を維持し、日光の影響を受けない洞窟環境で時を重ねることにより、上品で繊細な風味を持つ大吟醸古酒が誕生する。軽快でスパイシーな香りに甘い花の香りが溶け合って心地よい熟成香を醸し出し、口に含めば、蜂蜜を思わせる甘美な口溶けとふくよかな味わいが広がる。まさに、洞窟という自然の恵みが、匠の技と融合して生み出した至高の古酒と言えよう。

熟露枯 大吟醸 秘蔵10年

特定名称:大吟醸酒
日本酒度(甘辛):+2
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
酸度(濃淡):1.2
精米歩合:40%
アミノ酸度(コク):1.2
使用米:山田錦
アルコール度:17%
酵母:自社酵母AZ-7
参考価格:720 ml 8,800 円

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純米吟醸 阿波山田錦vintage2009 原酒 /諏訪酒造

徳島県阿波町産山田錦を100%使用し、精米歩合60%で醸造後、タンクで熟成させた”Vintage 2009″は、2009年産米を用いた特別な一本だ。辛口でありながら、口当たりはやさしく、まろやか。これは諏訪泉の水の性質によるもので、山田錦の熟成した旨味と阿波山田錦特有の風味が見事に調和している。苦味のない素直な旨味が口の中に広がり、長い熟成期間を経た、深みのある味わいが余韻として長く続く。時を経て育まれた一杯とともに、至福のひとときを堪能してみたい。

純米吟醸 阿波山田錦vintage2009 原酒

特定名称:純米吟醸酒
日本酒度(甘辛):+5
原材料:米、米こうじ
酸度(濃淡):1.5
精米歩合:60%
使用米:山田錦(阿波山田錦)
フレーバー:円熟の味わい
アルコール度:15%
酵母:協会9号
参考価格:720 ml 2,750 円

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ライター 石川葉子
フリーランスライター/Japanese Sake Adviser (SSI)/WSETLevel1/東京出身/アメリカ・ラスベガス在住。
この地でおいしいお酒に出会ってから日本酒に目覚める。最近は飲むはもちろん、自宅でのSake造りも楽しんでいます。
SNS:Instagram @lvsakegirl note @lvsakegirl

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