【豆知識】熟成によって日本酒が美味しくなる理由は?熟成酒に合う料理も!
ここ数年、熟成酒の美味しさにハマる人が増えています。その独特の味わいはどうやって生まれ、瓶の中ではどんな変化が起きているのでしょう?また、熟成酒と相性のいい料理について唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
熟成で深まる色や味わい
純米酒や本醸造酒を常温で熟成させる濃熟タイプは、年月を経るごとに琥珀色が濃くなり、味わいは力強く重厚感を増して酸味は和らぎます。香りは複雑でナッツ、スパイス、バニラ、ドライフルーツ、ハチミツ、メープルシロップなどに例えられます。
それに対して吟醸酒を低温で熟成させる淡熟タイプの変化は穏やかで、吟醸らしい香りを残しつつまろやかな味わいに。新酒の時に荒々しさや硬さのあったお酒も数年の熟成で落ち着き、まとまりがよくなります。
どんな化学変化が起こっているの?
熟成による色の変化は、お酒に含まれる糖とアミノ酸の化合によるアミノカルボニル反応によるものです。別名をメイラード反応といい、これは炒めた玉ねぎが茶色く色付くのと同じ理屈。またアミノ酸と有機酸が化合してできるソトロンという物質が特有の甘い香りの元となります。糖やアミノ酸が少ない吟醸酒よりも純米酒の方が変化が著しいのは、このような理由からですね。
味がまろやかになるメカニズムは、まだはっきりとは解明されていませんが、一説には時間の経過とともに水の分子のかたまり(クラスター)にアルコールの分子が入り込み、アルコールの刺激を水が包んで和らげると考えられています。
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熟成酒にはこんな料理がぴったり
特に濃熟タイプに合うのは味の濃い料理。和食なら鰻の蒲焼や豚の角煮、洋食では鴨のロースト、ビーフシチューなど。ほかの日本酒では合いにくいスパイスを効かせた料理も熟成酒ならOKです。ブルーチーズやウォッシュタイプのクセのあるチーズにも負けません。
適した温度帯は淡熟タイプは冷やして、濃熟タイプは常温からぬる燗でじっくり旨みを堪能したいもの。もし強い香りが気になる場合は、冷やすと飲みやすくなります。
器はせっかくの色付きを見られる透明なグラスがおすすめ。ブランデーグラスのような深いボウル型だと、芳醇な香りを存分に楽しめます。
手軽にできる自家熟成の勧め
熟成酒は個性が強いだけに、いったんハマるととことん追究したくなるディープな世界が広がっています。専用の冷蔵庫を導入したり、押し入れに一升瓶を並べて自家熟成にこだわるマニアもちらほら。かくいう我が家にも10年以上常温熟成(放置?)しているお酒が何本かあります。さてどんな味になっているでしょう、いつ栓を抜くかを楽しみに、もうしばらくは眠らせておく予定です。
日本酒には賞味期限がなく、製造時に問題がなければ未開封では腐敗せず、俗にいわれる酢になるということもありません。常温熟成なら光が当たらず、なるべく温度が変化しない場所を選んで置いておくだけ。意外と手軽にできる自家熟成、あなたも始めてみませんか。
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♯NFT♯熟成酒♯京都
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。
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