酒好きに聞く

お燗と骨董を極める二人が“酒をより旨くする”酒器と料理を語り合う

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お燗と骨董を極める二人が
“酒をより旨くする”酒器と料理を語り合う

左:京都市役所近くで骨董屋を営む【ANTIQUE belle/前田さん】
右:京都出町柳で日本酒barを営む【酒とつまみ蓮/山城さん】

前田さんと山城さんが出会ったのは4,5年前。共通の知人からの紹介で、前田さんが[酒とつまみ蓮]へ通うように。以来、意気投合し、定期的に会う仲なのだとか。今回は、山城さんが選んだ日本酒と料理に合わせて前田さんが酒器と器を用意。いつものように酒を楽しみながら、話に花を咲かせてもらった。

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[ANTIQUE belle]店主・前田 隆汎さん
プロフィール
1971年、京都府生まれ。
大学在学中から骨董に興味を持ち、2002年に骨董屋[ANTIQUE belle]をオープン。
毎日外食するほどの食通でInstagramを参考にする人も多数。飲食店「にこみ鈴や」「ニューオーモン 」も営む。

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[酒とつまみ蓮]店主・山城さん
プロフィール
1981年、愛知県に生まれ。大学進学を機に京都へ。学生時代から日本酒を嗜み燗酒にハマる。2013年に出町柳でオープンした[酒とつまみ蓮]は、燗酒と酒が進むつまみが評判。

お燗好きという共通点

前田さん
ではまずは乾杯!

山城さん
昼からいいんですかね?

前田さん
これも仕事です(笑)そもそも、どうしてお燗が好きになったの?

山城さん
昔、この出町柳あたりに居酒屋がオープンしたことがあって、たまたま店に入ったんです。メニューに熱燗としか書いていないお店が多い中、お燗を全面に打ち出していて。頼んでみたら、今まで飲んでいた熱燗や日本酒と明らかに違って、そこからお燗にハマりました。

前田さん
僕も日本酒は元々好きで、飲む時は基本的にお燗かな。温かい方が料理に合うと思う。
この店にある睡龍は、結構飲んだよね。まろやかですっきりしすぎないのが好みかな。

山城さん
前田さんはしっかりしたお酒が好きですよね。熟成していても綺麗というか。お酒のすっきり感は出ていて、濾過には頼らないものが好きなのかなと。

前田さん
さすが、いつもお酒を選んでくれているだけあって、僕の好みがよく分かってる笑

酒器と料理を合わせて嗜む

アジの酢じめ750円


天穏 純米酒(島根県/板倉酒造) 一合800円 半合400円

山城さん
お皿が葉っぱの形をしているので、大葉を添えずにアジだけで潔く盛り付けてみました。

前田さん
このお皿は、1600年代前半の古染付。日本人が中国へ発注したもので、日本人好みに素朴に作られている。わざと縁を虫食いのようにして、茶会席好みの侘び寂びを感じられるね。
…このアジ、脂がのっていて美味しい!

山城さん
長崎県産のアジを塩と酢で締めました。
合わせるお酒は、ほのかな乳酸があって爽やかな天穏でどうぞ。

前田さん
ちょっと変わったものを酒器に使ってみようかな。
実はこれ、1960年代の医療器具!未開封で出てきたから、こういう使い方もアリかなって。
合わせる盃は、江戸時代のもの。鉛が入っていて、うっすらとグレーがかってる。

山城さん
同じガラスでも、年代によって雰囲気が違うんですね。
医療器具も前田さんらしい遊び心!

よだれ鶏 500円


玉櫻 純米吟醸にごり(島根県/玉櫻酒造) 一合900円 半合450円

前田さん
器は、古伊万里の技術が一番良かった1700年代初めごろの柿右衛門白磁。
菊の花びらのように繊細でシャープなデザインが料理を引き立ててくれる。

山城さん
よだれ鶏のタレは自家製。黒酢をベースに山椒を効かせています。
このタレはニューオーモンの焼きそばにも使っていただいています。
油を使う中華料理は、にごり酒や古酒との相性が良いので、今回はにごり酒を用意しました。
…このお猪口、金継ぎがしてありますね。

前田さん
タレが抜群!うちの焼きそばでも好評だよ。
この盃は初期伊万里で、おそらく幕末ごろの金継ぎ。5客持っているんだけど、一番趣があるのを選んできたよ。

山城さん
金継ぎを見ただけで、時代が分かるんですね。


えび油まぜそば 650円

睡龍 生酛純米吟醸 熟成(奈良県/久保本家酒造) 一合1300円 半合650円

前田さん
この器はアジの酢じめに使ったお皿と同じ染付だけど、これは日本人からのオーダーではない明の時代のもの。比較すると分かりやすいけど、薄く作られている。中国らしくて、まぜそばにぴったり!

山城さん
えび油は、自家製です。海老の頭と殻をじっくりと油に抽出しました。
油っこい料理には睡龍 生酛純米吟醸 熟成。清涼感のある酸味の後に熟成の深みが感じられますね。

前田さん
猪口は、江戸中期の伊万里。
猪口と徳利は、お酒のラベルに合わせて渦巻きにしてみたり。
中までしっかり渦が描かれているのはもちろんなんだけど、裏も・・・。

山城さん
高台の中まで渦巻きが描かれてる!なんとも粋ですね。

酒器でお酒の味が変わる!?

前田
色々な日本酒を飲んでいると思うけど、
酒器によってお酒の味が変わったなって感じたことはある?

山城
たまにあります。ただ、必ずしも良い変化ではないですね。
でも、何度かびっくりするくらい味が変わる組み合わせがありました。

前田
やっぱり、変わるよね!でも、気に入っている酒器だから良いって訳じゃない。

山城
形状もあるけど、材質で変わるのかな。見た目がそっくりなのに、味が全く違ったり。
お猪口は磁器とか陶器が多いけど、漆器のお猪口の変化は面白かった。
口当たりが非常に良くて、お酒が格段に美味しくなりました。

前田
酒器次第でもいろんなお酒と出会えるから、これからも飲み続けるしかないね笑。

山城
美味しい酒を美味しいと思う分だけ、自分に合った量をじっくり嗜んでいきたいですね。

取材後記・・・
取材の後も2人のお燗と骨董の話は続く。まだ日は明るいがあくまでも仕事です。
※お酒と料理の価格は取材時点のもの

●酒とつまみ蓮

急な階段を上がると、どこか懐かしさを感じる少し雑多な店内。
棚の上には「竹鶴」、「日置桜」、「辨天娘」などなど、お燗向きの日本酒がずらり。
料理は、お燗好きの店主が手がける酒のアテが中心。
大きな窓から吹き込む夜風が心地よく、ついつい長居をしてしまう。
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京都市左京区田中下柳町8-12東側入口 2F
営業時間17:00〜24:00
不定休(インスタグラムにて投稿)
問い合わせはInstagramのDMから
https://www.instagram.com/saketotsumami_ren/
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●ANTIQUE belle

地下鉄「市役所前駅」より徒歩約5分にある、アンティークショップ。カフェのような雰囲気の店内には、業者市や個人宅から買い付けた個性あふれる商品がズラリ。江戸期の伊万里焼、理科系古道具、ガラスシェード、家具など幅広い取り扱い、アンティーク好きの人々が足繫く通う。
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京都市中京区丸屋町334
075-212-7668
12:00〜18:00
無休
https://antiquebelle.com/
https://www.instagram.com/coccotobelle/
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