RWAに係る近時の動向![NOT A HOTEL]と[Sake World NFT]が目指すこと
RWAビジネスを行うスタートアップを含む事業者等を対象としたオープンセミナー【JCBAオープンセミナー「RWAビジネスの最新動向と発展に向けた課題」】と題して開催された。[NOT A HOTEL]と[Sake World]の事例を交えつつディスカッションした様子をレポートする。
現実資産をトークン化ブロックチェーン/Web3を用いて現物資産をトークン化する「RWA(Real World Assets)」領域。
貴金属や芸術品、家や土地などの不動産などの有形資産のほか、株式、債券などの無形資産、そしてSake World では日本酒に紐づけたRWAビジネスを展開している。
現実世界には様々な形の資産があり、そうしたRWA(現物資産)のトークン化が近年は資産運用の新たなトレンドとして注目されている。
今回開催された[(JCBAオープンセミナー)RWAビジネスの最新動向と発展に向けた課題]ではRWAビジネスを行うスタートアップを含む事業者やRWAビジネスのエコシステムに関わるステークホルダー等の方を対象としており、業界の最新動向や今後の見通しについて情報交換を行った。
※このイベント一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が取り組んでいる、経済産業省事業「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」の一環として実施された。
Web3.0・ブロックチェーンは将来的なポテンシャルを秘めた技術でありながらも、「価値が見えづらい」「事業として取り組むにはハードルが高い」「複雑で不明瞭な部分も多い」といった課題が多岐に渡る。これらの課題を解決するため、実際にデジタル資産を活用するビジネスを行う事業者や法規制等の専門家の意見も踏まえながら、「RWA(現実資産等)に係るトークンの利活用に関するガイドライン」を策定している。
■一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)
https://cryptocurrency-association.org/
INDEX
RWAに係る近時の動向 パネルディスカッション
■左より
・ 斎藤 創氏
(創・佐藤法律事務所 代表弁護士/NY州弁護士)
日本ブロックチェーン協会、日本STO協会、日本暗号資産ビジネス協会、メタバースジャパン、FinTech協会)などの理事、監事、顧問、事務局などを勤めるほか、HashPort監査役、前bitFlyer取締役も歴任。Web3やFinTechに関する造詣が深く、AI、VR/AR、ドローンなど各種テクノロジー関係案件、スタートアップ、ベンチャーファイナンス等を主に取り扱う。
・ 増田 雅史氏
(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士/一橋大学特任教授)
IT・デジタル分野を一貫して手掛け、業種を問わず数多くの案件に関与。金融庁でのブロックチェーン関連法制の立案担当を経て、Fintechにも精通。コンテンツ・ブロックチェーンの両分野に通じた稀有な弁護士として、web3・メタバース領域で多くの情報発信を行い、政府や業界におけるルールメイキングにも積極的に参画。
・ 神本 侑季氏(モデレーター)
(N.Avenue株式会社/CoinDesk JAPAN 代表取締役社長CEO
2013年にヤフー株式会社(現LINEヤフー)に入社。18年、Web3の情報発信を行うメディア企業N.Avenueを設立し、代表取締役社長に就任。世界最大のデジタル資産報道メディアCoinDeskの公式日本版や、国内最大の法人制Web3ビジネスコミュニティ「N.Avenue club」を運営する。
・ 羽間 弘善
(株式会社リーフ・パブリケーションズ 業務統括取締役 副社長/弁護士)
東京大学工学部/東京大学法科大学院。2014年より弁護士として上場企業等の大規模争訟案件、 M&A、株主総会対応などに従事。2020年よりリーフ・パブリケーションズの出版・Sake 事業の全事業を統括。
・ 岡本 伊津美氏
(NOT A HOTEL株式会社 Web3事業リード)
bitFlyerでカスタマーサポート業務に従事した後、サクラエクスチェンジビットコインでビットコインの相談窓口を立ち上げた。2022年8月よりNOT A HOTELに参画。
パネルディスカッションはRWAのトレンド全般、最新の事例に伴い先進的な取り組みをしている[NOT A HOTEL株式会社 岡本氏]と[リーフ・パブリケーションズ/Sake World NFT 羽間]に話を聞き、斎藤氏、増田氏に意見を求める形でスタートした。
“世界中にあなたの家を” NOT A HOTEL
―NOT A HOTELとは?
岡本さん「実はホテルではなく別荘を作っているんです。世界中に皆さんの家を拡張していく体験を進めてます。具体的には年間10泊から使える別荘を販売しています」
保有している物件はもちろん全てのNOT A HOTELという別荘が使えるサービスだ。2024年4月1日からは、国内の物件だけではなく、提携している海外のホテルも泊まれるサービスを開始。
岡本さん「2022年にNFT販売させていただいて、累計で7.6億円になります。面白かったのが、80%以上が日本円で購入いただきました。アンケート取ると、初めてのNFTだったという方が大半です。」
2022年夏から、NFTを用いたメンバーシップサービス「NOT A HOTEL MEMBERSHIP NFT」を展開している。現在は、NOT A HOTEL COINを新たに発行し自社施設や開発用の土地を保有・運用するプロジェクト「NOT A HOTEL DAO」のプロジェクト開始がスタート。
岡本さん「今、NOT A HOTEL DAOという新しいプロジェクトを仕掛けてます。今日の主題でもありますRWA、現実資産のところをどうやって新しい保有の仕方と新しい利用の仕方ができるのかいうところにチャレンジしております。」
プロジェクトの中でNOT A HOTEL COINという暗号資産を新たに発行し、今まではNFTで別荘の宿泊券を10日間から購入できるところを、細分化して年1泊から利用できることができるという。
―新しい暗号資産になり今までとこれからのターゲットの違いに関して
岡本さん「クリプトの方をマーケティングしたい気持ちもありますが、クリプト層だけではなく私たちNOT A HOTELのことを興味ある方々です。数千万とか数億する物件があって、それを125万円のNFT会員券にしたら、より多くの方に手に取っていただいた。これを消費じゃなく資産の置き換えにすると泊まりやすくないですか?というご提案をさせていただいています。」
1人で買うと数千万、数億円の物件を複数人で所有する。NOT A HOTEL DAOはNOT A HOTEL COINを保有することで参加することができ、現実資産であるNOT A HOTELを複数人で所有し利用(宿泊)することができる。
―シェア購入・NFT・暗号資産それぞれのターゲット、メリット、デメリットについて
岡本さん「シェア購入はNOT A HOTELいいよねっという方、別荘購入、リゾート系のホテルと迷われてNOT A HOTELを選んでいただくっていうのが、 今のメインターゲットです。NFTを作った理由は、100万円台の商品を作ることで会社員の方や私含め社員でも購入できる商品として設計しました」
まず試してみてから、 物件を購入したいというエントリーのモデルになっているという。暗号資産に関してはより多くのユーザーを集めたところにメリットを感じたとのこと。新たなターゲット層に向け、認知拡大は欠かせない。デメリットの部分はサポートや作業工数がかかる点とのこと。
増田さんは最後にこのような見解をした。
「NOT A HOTELは非常に分かりやすい事例。RWAトークンに適していると思われるものは、小口化へのニーズがあるもの。シェア購入というのは、ユーザーにとってもイメージが湧きやすい領域だと思います。小口化、細分化して取引をするという需要があるところに、ブロックチェーンというツールが登場して、もっと便利にできるんじゃないかというところが着眼の良さだと思う」
”サケクリエイターエコノミーの創造” Sake World NFT
羽間「Sake World という事業ですが、大きく1つはSake World NFTという基盤システム の構築、運用しています。端的に言えば、日本酒と引き換えができるNFTチケットの流通市場ということになります。」
【Sake World NFTについて】
通常の通販サイトのように日本酒を購入することができるほか、日本酒を熟成・保管し、個人間で売買することができる、新しいマーケットプレイス。
羽間「今Sake World NFTにご出品いただいてる酒蔵さんが、申し込みベースで約215蔵を超えておりまして、現時点で出品している銘柄数で、約500銘柄弱というような状況です。全てがRWA現物に紐づいてまして、現物をどこに届けるかというと国内はもちろん、11月よりシンガポールへの配送を可能としてい ます。今後一か国ずつ、各国法制度を対応し広げていくというようなステージになっております。」
主な特徴は、日本酒を含む酒類は、酒税法の規制により、原則として酒類販売業免許を保有する者しか販売することができなかったが、当該免許を保有していない一般ユーザーでも売買することができるようになった点。また、日本酒業界を盛り上げるため、一般ユーザー間での売買が成立した場合、日本酒を製造した酒蔵に対して取引額に応じた一定のロイヤリティが収益として還元される仕組みを組み込んでいる。
羽間「1番時間がかかったのは酒税法です。お酒の販売は通常、販売用の免許を持っていないと流通できないですが、弊社の酒販免許の範囲で、現物が動かないNFT(酒チケット)としての流通であれば法律上抵触しない確認を国税庁より得ています。これがクリアにできたことによって、一般のユーザーさんが酒類をNFT化することによって売買できるというところが非常に大きな広がりを持っていると考えています。」
また今後の展開としてブレンド日本酒を作ることができる体験施設を11月20日にプレオープンした。
羽間「今取り組んでいるのが、サケリエイターエコノミーを作ろうと。お酒を誰もが自由に作って発信してNFTで流通し、さらに収益化できるというような仕組みを整えています。」
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♯京都♯アッサンブラージュ
※Sake World NFTは経済産業省事業「令和5年度 Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」(URL:https://jissui.or.jp/project/project017/)におけるテーマ①「現物資産や無形資産のデジタル化市場(発行・流通市場)構築」の公募に対して採択されている。
増田さんはこのように見解する
「酒類販売業の免許の取得について乗り越えたという点は、おっしゃるとおり大きなブレイクスルーですね。」
Sake World NFTが海外への展開も考えていることに関して、アルコールは特に世界各国はそれぞれ独自の免許の体系があるという。「その中で、取り扱う国・地域を先陣きって広げているこの試みは素晴らしいですね。」と増田さん。
RWAの昨今のトレンド―日本と世界を比較して―
斎藤さん「RWAが世界的に流行していると言われています。ただ、海外の人と話した時のRWAは金融領域が多いかなと思います。株や証券をトークン化するとか、そういう話が多い。日本でも不動産のセキュリティトークン、 すなわち金融商品が金額的には1番多いと思うのですが、日本でRWAが流行と言った際には、有価証券ではないものを指すことも多いように思い、そこは海外とは少し違うかもしれません。とはいえ、海外でもアートのRWAとか、ホテルなど今回話してるような資産のRWAもあります。」
増田さん「日本はアメリカと比べて証券に該当する範囲が狭くて、NFTを通じて取引できる物の範囲は結構広い。たとえば、シェアリングエコノミーという文脈で、所有と利用との間のグラデーションを埋めるサービスはどんどん拡大してきてると思います。また、例えばレストラン、コンサート、アイドル、スポーツといったエンターテインメント文脈でのラグジュアリーな体験を細分化して、トークン化して販売することによって、コミュニティ形成を図りファンエンゲージメントを高めるというトレンドもありますね。」
食べ物に関しては証券該当性を回避していけたりするとのことで、トークン化をする可能性のアイデアもあると面白いという。また地方創生の分野に価値を届けやすくするような仕組みとして、RWAトークンの考え方も有用だと続ける。
NOT A HOTELは日本各地の絶景と建物、Sake World NFTは日本各地の地酒。今まで注目されていなかった観光地に着目することで新たな日本の魅力が世界に伝わっていく力がRWAトークンにはある。
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