酒蔵に聞く

「農醸一貫」を理念に掲げる秋鹿酒造。新しくなった蔵での酒造りに密着。

大阪・能勢町で米作りから手掛ける、熱烈なファンの多い秋鹿酒造。今回は2023年11月に改修し、新しくなった蔵での酒造りを密着取材。合わせてSake World NFT出品の3銘柄も紹介する。

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2023年11月に改修し新しい蔵での酒造りがスタートした「秋鹿酒造」
大阪・能勢町で米作りから手掛ける、熱烈なファンの多いのは有名だ。
今新しくなった蔵での酒造りを密着取材。
酒造りの想いが今後について聞いた!

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秋鹿 奥 航太朗さん
プロフィール
秋鹿酒造の次期7代目。1990年生まれ。辻調理師専門学校を卒業後、心斎橋の有名懐石料理店で一年間務める。神奈川県の大矢孝酒造でも二造りの研修を経験。もっかの趣味は出汁の研究で、昆布の水出しなど色々と実験をして遊んでいるとか。

 1 . 改修後、初めての酒造りは

とある1月の朝9時の酒蔵。キンと冷えた空気の中、甑(こしき)からもうもうと湯気がたちのぼる。蒸しあがった米はシートごとクレーンで持ち上げて、すぐ脇に据えた放冷機へ投入。コンベアの出口で「もやし」を振りかけ、布で包んで蔵人が背負い小走りで麹室へ運び入れる。蒸米は用途や種類ごとに何層ものシートで分けられ、麹用が終われば次に酒母。その後はシューターの長いチューブを通って大型タンクへ注ぎ込まれる。機械をうまく取り入れ、作業は流れるように手際がよい。

「うちは大きさの割には石高が多くてやることも多いので、効率化は重視しています。その分酒質に関わるところはじっくり手をかけてて、まだそんなことやってんのって言われることもあります」と奥 航太朗さん。
大阪府の最北端に位置し谷間に田園風景の広がる能勢町で、明治19年(1886年)に創業した秋鹿酒造。このたび築100年以上を経た酒蔵を大幅に改修し、2023年11月に第2期工事が完了。今回が初めての酒造りになる。

「改修で作業の動線が改善され、時間短縮ができるようになりました。でも最大の目的は補修です。耐震も考えて、次世代100年持つようにしたいというのが一番でした。元の壁土や梁も使えるところは使いました。これは酒質の関係ではなく費用面の理由です。蔵が新しくなっても、うちの場合そんな味が変わるかなと思っていましたが、実際、多少はきれいな味わいになっているかも。お客さんの元に届いて、賛となるか否となるか分かりませんが、自分的にはいいんじゃないと思ってます」

2. 総破精の麹作りが秋鹿らしい味の由来

今回、なるほどと思わされたのは、放冷機から出てきた蒸米にその場でもやしをふりかける独特の、を削除麹の作り方だ。
「うちは大吟醸であろうが、すべてあの作りです。なるべく米を溶かしたい、強い麹を作りたいという思いがあって、よくあるように麹室でもやしを振ってしまうと壁や天井に散っていくんですよね。基本は米粒に付くもやしは点でよく、付いたところから中に入る突き破精ですけど、うちは真逆できっちり付いて欲しい。もう外側も内側も菌糸がびっしりで麹の香りが出まくりでいい。そこが秋鹿らしさの由来でしょうね」


米を無駄にせず、なるべく溶かしたい。それは米作りから自分たちの手で行う米農家でもあるからという。25haの自営田で作るのは主に山田錦と雄町。今でも自分たちの足で田んぼに入って草引きをしたり、毎日水の様子を見に回り、最大限の手をかけているという。米ぬかやもみ殻、酒粕を醗酵させた堆肥を使用して循環型有機農法を行っているのも特徴だ。
「肥料分が多いとアミノ酸の多い米になり、酒にすると飲み口が重たく、苦みが出るんですね。うちがどんなお米を欲しいかっていうと、肥料分の少ない割れの少ないお米。それを作りたいので今の農法になりました」

3. 自分たちが欲しい米は自分たちで作る


現在は石高の4割弱に自営田の米を使用している。冬の酒造りの責任者は父である社長の奥 裕明さん、夏の農業の責任者が航太朗さんだ。
「自営田の米で作った酒は出来立ては意外と淡白で、いや、よそのお酒と比べるとめちゃめちゃ濃いんですけど(笑)。それが熟成を経て味が乗ってくるんです。買い付けたお米の酒は早飲み向きで、最初から美味しいというすみ分けがあります。米作りはプロの農家さんがやった方が上手い。でも自分たちが欲しい米は、やっぱり自分たちじゃないとできない。それが僕らが米作りをやる意味です。
一番大事なのは米の味、今年の米の味をどこまで酒にできるかです。だから酒造りは、あまり毎年の手法を変えていません。うちは米が溶ける年にはより溶かす、溶けにくい年にも溶かす。それでやっとその年のお米の味になるんです」

4. Sake World NFTに出品の3銘柄


今回NFTに出品いただいた3銘柄を選んだ理由は?
「『八八八』は広島の八反錦という酒米の8割精米、8号酵母を使用した語呂合わせです(笑)。8号酵母は醗酵力が弱くて酸が出る使いにくい酵母です。だけど置いていたら香りのクセが収まってきて後から旨みがどんどん出てくる。酸も高いから抜群に熟成向きで、熟成させたら花開く、開花率のすごく高い、好きなお酒の一つです。
『大辛口』の2種類は単純な興味です。うちではほとんど売り切ってしまうので、これまであんまり熟成させたことがなかった。11号酵母系の熟成もなかったので、この企画にのせたら面白いんちゃうかなと思ってます。
Sake World NFTの参加が若い方や新しいお客さんとの出会いになって、いろんな層の方に飲んでいただけたらうれしいですね」

●純米吟醸大辛口 生原酒(写真中央)
秋鹿の中でも最も辛い人気商品!ただ辛いだけではなく、酸やアミノ酸とのバランスがよいので旨みの中にある、芯のある辛さ。米の甘みや、麹感が漂う雑味のないコク深い味わいは、まさに秋鹿らしさが溢れる。キレのある酸と旨みが抜群、すっきりとした飲み口でさっぱりとした料理と合わせたいお酒。
●純米吟醸大辛口 火入れ原酒(写真左)
純米吟醸大辛口 生原酒を火入れして一年熟成させたバージョン。味わいに落ち着きとまろやかさが生まれ、辛さと旨みとのバランスが絶妙だ。
●2019年純米生原酒 八八八(写真右)
濃厚な酸と旨み、蔵で5年熟成させてからの発送。秋鹿の中でも群を抜く強主張、渋めの酸が利いている。旨みを引き締める辛口は飲みごたえあり。肉、中華、チーズなどにも合う、八反錦を使用した純米酒。

5.これからの展望について


蔵も新しくなって心機一転、今後やってみたいことについても尋ねてみた。
「米作りをもっと昇華させて、田んぼを広げていきたいです。能勢の遊休地を増やさないという意味合いでも。今「原田ふぁーむ」さんに作っていただいている有機米の単一銘柄があるんですが、野菜だけじゃなく秋鹿のお酒の米も作っているんだということが若手の農家さんの手助けになり、うちとウィンウィンの関係になればいいですね。
どぶろくもやりたい。米を溶かして食べきる、農家冥利に尽きる究極の酒やなって思っています。山で採れたハーブや地産のものを使って自由度を持たせたものを作ってみたい。まだまだ構想だけでアウトプットが進んでいないんですが。
改装で屋根を上げて物置を作ると同時に、見学通路とイベントスペースみたいなのを設けました。基本的には一般のお客さんは見学NGでまだまだ対応はできないんで先の話になりますが、今後はツーリズム事業もおもしろいなと思っています。酒造りを体験して、近くのゲストハウスに泊まってもらってうんと飲ませて(笑)。また秋鹿ファンの料理人に来ていただいて料理とお酒のイベントをしたり、秋鹿って音楽ができる人間が多いので演奏会も。どれも死ぬまでに(笑)できたらいいなと思ってます」

秋に実るお米のように航太朗さんの想いはまだまだ続く。

秋鹿酒造

秋鹿酒造

創業
1886(明治19)年
代表銘柄
秋鹿
住所
大阪府豊能郡能勢町倉垣1007Googlemapで開く
TEL
072-737-0013

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