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あおもりの地酒アンバサダーと巡る青森酒蔵ツアー
~青森の魅力再発見~ Vol.1

青森県酒造組合が取り組む「あおもりの地酒アンバサダー」制度。任命されたアンバサダーはSNSを中心に1年間、青森の地酒をPRしている。今回アンバサダー4名と普段は入る事のできない蔵の中を巡るツアーに密着した。

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1.あおもり地酒アンバサダーとは?

青森県には酒蔵が15蔵があり、その大半が青森県酒造組合に加入している。
青森県酒造組合は2020年に青森の地酒のPRを目的とした「あおもりの地酒アンバサダー」の公募をスタート。任命されたアンバサダーは青森県出身者に関わらず日本、海外に在住するメンバーも多数。現在、2024年度の第4期目は7名が活動している。
活動の内容はInstagramにて「#あおもりの地酒アンバサダー」で検索を。

取材は3月中旬、少し肌寒いが最高気温10度と例年より気候が良い。
青森県酒造組合の方も「温かくて良かったですね」と口をそろえる。

今回一緒に巡った4人のアンバサダーの皆さんはこちら

この記事の紹介者はこちら

左より、戸島彩香さん・Miyaさん・横山未歩さん・工藤順平さん
プロフィール
戸島さんは横浜にて百貨店勤務、Miyaさんは香港在住、横山さんは青森県八戸市出身で現在京都在住、工藤さんは青森県平川市出身、現在は東京の飲食店にてソムリエとして勤務

それぞれ違った場所や環境にいながらも青森の地酒の魅力を伝えたいと日々発信をしている。
Miya(Chong Wing Yan)さん@__b2m__
工藤順平さん @sommelier_kudo
横山未歩(みほりん)さん _@mihokitchen_
戸島彩香(ぽんちゃん)さん @ponpon_jpsake

2. 情緒溢れる町で昔ながらの酒造り「鳴海醸造店」

まず辿り着いたのは黒石市の観光スポット「中町こみせ通り」。
津軽黒石藩の城下町の風情そのままに、約600メートルに渡り伝統的建築物と木造のアーケードが連なる。
この通りの一角にある文化三年(1806年)より続く造り酒屋、「鳴海醸造店」。
まるで映画のセットのような佇まいは、平成10年に重要文化財に認定されている。

今回案内してくれたのは鳴海醸造店七代目当主 鳴海信宏さん。
趣味は蕎麦打ち。

約200余年にわたり、伝統を受け継ぎ、昔ながらの手法と現代的な設備が「和合」し酒造りに励む。
近隣田園から厳選した青森県産のお米と酵母、南八甲田の伏流水から湧き出た敷地内の井戸水。
「お酒は90%以上が県内で消費されている。日本酒を通じて、少しでも津軽や青森を知ってほしい。」と鳴海さん。
「和合」という合言葉を用いており、お米と、酵母と、水が、そして働く蔵人の心が一つになって美味しい日本酒が生まれるという考えだ。

特筆すべきはやはり昔ながらの酒造りの作法や道具。
アンバサダーが注目したのはずらりと並ぶ櫂棒。
櫂棒は麹、蒸米、水を搔き回すのに使用する。
1本の杉の木の皮を剝いでおり、慣れれば手にしっかりと纏わりつくという。
「想像より重いですね」と工藤さん。
建物を見渡していた横山さんは「古い建物だからこそ工夫がすごい」と感慨深い。

それぞれに目指す味わいも違えば、醸す方法も違う。
酒蔵によって酒造りの作法や道具に至るまで、その蔵独自の伝統があるのだ。

昼食は鳴海さんおすすめの店で鳴海醸造店の日本酒をグイッと。
左より純米吟醸生原酒中汲み久〇・稲村屋純米大吟醸生原酒無垢

洗練された香り、飲みごたえのあるボディはバランスもよく、ついつい酌が進む。
華やかな香りに、みずみずしい飲み口、ふくよかな味わいが体全体に沁み込む。
アンバサダーの皆さんも「華やかでフルーティー」と1本が早々に空に。

■株式会社 鳴海醸造店
住所:青森県黒石市大字中町1番地1号
電話番号:0172-52-3321
HP:https://narumijozoten.com/

3. 新ブランド「杜來」を立ち上げた「六花酒造」

桜で有名な弘前市に県内で一番新しい蔵がある。
創業300年を超える「六花酒造」が岩木山の麓に移転したのが2023年8月。

アンバサダーの多くが今回見てみたい蔵として名前が挙がるのが印象的だ。
今回案内してくれたのは取締役・杜氏/河合貴弘さん。

「三季醸造でよりフレッシュな酒を提供したい」と主力ブランドだった「じょっぱり」の製造を停止し、より高品質な純米酒を醸造するために今までの10分の1以下の規模へ縮小。最新の設備を取り入れた空間で新ブランド「杜來(とらい)」を立ち上げた。
以前の銘柄にかけて「“じょっぱり”精神は忘れてはいませんよ」と河合さん。

杜來には「300年の歴史を繋ぎ、酒造りへのこだわりを未来へ受け継ぐ」「挑戦する」という思いが込められている。岩木山系の伏流水と青森県産のお米、酵母で醸造し、低圧でもろみの負担を抑える槽搾りなどのこだわりの工程で香り高い純米酒だ。

六花のロゴは雪の結晶、雫、山の麓を表し、杜來のラベルは岩木山に生息する野ウサギ、カモシカ、サンショウウオをモチーフとしている。

直売所では試飲も可能。今回試飲させていただいたのは6銘柄。
中でも特におすすめが杜来純米酒生酒
横山さん「ボディーに来る旨さ!」
米本来の旨み、マスカットやメロンを彷彿とさせる華やかな甘み、香りの後にスッキリとした余韻が残る。
ツアー早々に青森の新旧の蔵を体感することができ、満足度が高い。

■六花酒造株式会社
住所:青森県弘前市大字宮地字川添77-5
電話番号:0172-88-7280
HP:https://www.rokkashuzo.com/

4. 機械に頼らない「手」が生み出す日本酒「松緑酒造」

昔ながらの酒造りの「鳴海醸造店」、最新の設備を導入する「六花酒造」、そして今回は手作業にこだわる「松緑酒造」

案内してくれたのは、取締役/田代尚志さん。
珈琲と紅茶、日本酒好き。

元々は江戸末期より酒母を造る会社としてスタート。
日本酒は白神水系岩木山の伏流水、青森の酒米を基本とし、職人の技にて醸される。
洗米は機械に頼らず、全て手洗いをしているという。
味を同じにすることを大切にしている中でも、自然相手の中、予想もしていない味わいが見つかることも楽しみだとか。
「酒造り=農家に近い感覚です。菌が心地良く過ごせる環境を用意し大切に育て、その結果、美味しいお酒を生み出してもらう。」と田代さん。

今回試飲したお酒は純米吟醸 六根 タイガーアイ、サファイア、ルビー。
使用するお米がそれぞれ異なり、香りと味わいの違いが感じられる。
「ん~マスカットの香り」とMiyaさん


「今でももちろん美味しいですが、しばらく置いておくと味わいが変化します。この変化を楽しめるのも日本酒の魅力です。今後はもっと地域の魅力を伝えていけるお酒を提供していきたいですね」と田代さん。
手から生まれる日本酒の良さはきっと飲み手にも伝わるだろう。

■株式会社松緑酒造
住所:青森県弘前市大字駒越町58番地
電話番号:0172-34-2233
HP:https://matsu-midori.com/

5. りんごのある風景を守りたい「弘前シードル工房kimori」

初日の最後は少し角度を変えてシードル工房へ。
青森県と言えば最初に名前が挙がるのはやはり“りんご”。
そんなりんごで造るお酒「シードル」を醸しているのが、株式会社 百姓堂本舗 代表取締役 高橋哲史さんだ。

岩木山の麓に広がる広大なりんご畑を営む高橋さん。
りんごの木はひとつの木になるのに10年はかかるという。
1本1本、枝にハサミを入れ年月をかけて丁寧に育てる。
技術力の継承はもちろんのこと、後継者不足に悩まされるりんご農家がほとんど。
そこで青森のりんごを守る為に始めたのがシードル工房kimoroのプロジェクトなのだ。

店舗では1杯500円で試飲ができる。
果汁の甘さが全体を包み込むような自然本来の旨み、微発泡のシュワシュワ感が心地よい。

醸造タンクの中で酵母の力でじっくり発酵させているので、発酵時に発生する炭酸がそのまま果汁に溶け込んでいるという。
食中酒はもちろん、デザートと一緒に飲むのもおすすめ。

「今私たちが食べているりんごは先代が作ったりんごの木からなっている。今できる事は未来へのたすき。りんごのある風景をいかに守っていくかを考えています」と高橋さん。

日本酒もシードルも地酒なのだ。
青森への想いはどちらも変わらない。

■弘前シードル工房kimori
住所:弘前市大字清水富田字寺沢52-3(弘前市りんご公園内)
TEL:0172-88-8936
HP:http://kimori-cidre.com/

編集後記
無事に1日目が終わり、それぞれの宿泊場所へ。
初日を振り返り「地元が近いエリアで、古き良き蔵と新しい蔵を巡れたのがよかった」と工藤さん。新旧酒蔵からシードル工房まで青森の魅力を再発見できた1日だ。
Vol.2へ続く。

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