菊泉 ひとすじレイ
滝澤酒造 | 埼玉県
滝澤酒造
荒川水系の伏流水と麹の乾燥に向く冬の気候を持つ深谷で、日々酒造りに勤しむ滝澤酒造。手造りと伝統製法にこだわり、綺麗で上品なお酒を目指す。
1863年に埼玉県小川町で創業した[滝澤酒造]。その後1900年に埼玉県深谷市にある中山道深谷宿の街道沿いに蔵を構え、現在に至る。
かつて日本煉瓦製造株式会社の工場があり、東京駅や赤坂離宮の建設にも使われた良質な煉瓦が生産されていた深谷。[滝澤酒造]でも、1930年に建てられた高さ20メートルの煙突や製品を貯蔵する蔵がこの煉瓦で建てられた。特に保温性と保湿性に優れた煉瓦製の麹室は、繊細な温度管理を求められる麹造りに欠かせない存在だ。
発酵に有利な硬水である荒川水系の伏流水と麹が乾燥しやすい深谷の冬の気候は、淡麗ですっきりとした酒造りに向く。代表銘柄「菊泉」の味わいは、この地域の風土が存分に活かされている。
日本酒造りは昔ながらの道具や蔵人の経験と勘に基づいた手作業にこだわる。伝統製法によって原料や発酵の状態を感じ取り、微調整を重ねることで機械には生み出せない繊細な旨さを醸し出す。
洗米の時点から10kgずつ小分けにして秒単位で手洗いし、米が水を吸い過ぎないように徹底。ムラのない酒造りに適した蒸米に仕上げるため、蒸米でも機械ではなく和釜と甑(こしき)を使い続けている。
最も重要とされる麹造りでは個体差をできるだけなくす箱麹法を採用。蒸米に麹菌を振りかける「種付け」の後、こまめな温度管理や麹の繁殖状態の確認と木箱に振り分ける作業を数時間ごとに行う。すべての工程がこうした蔵人の熟練の技術で行われることで真に旨い酒へと実を結んでいくのだ。
「菊のように香り高く 泉のように清らかな 伝承の酒」という思いで名付けられた代表銘柄「菊泉」。目指す酒としての在り方は「名脇役」だ。主役である料理の邪魔をせず、料理を引き立てつつも、飲んだ後にふと印象に残る酒。深谷という風土を活かし、手造りの伝統製法によって生まれるすっきりとした淡麗な地酒は、長らく地域の人に愛されてきている。
六代目当主が南部杜氏である先代親方を引き継ぎ、自ら杜氏に就任したのが2007年。2013年にはIWC(インターナショナルワインチャレンジ)にて初めて金メダルを受賞、2016年にはシャンパン製法を応用した瓶内二次発酵による透明な発泡性清酒「菊泉 ひとすじ」を発売。本格的なスパークリング日本酒などの開発に着手している。
受け継がれてきた伝統を礎に、新たな技術と価値観を取り入れながら挑戦を続けていく。