サケヤスケ
株式会社三馬力社 | 新潟県
株式会社三馬力社
馬の力を使って田畑を耕す馬耕や、山から木を伐り出す馬搬。機械がなかった時代、多くの地域で行われてきた日本の原風景でもあるが、現在、馬を育成したり調教技術をもつ”馬方”は、全国でもわずか数人になっているという。高齢化や機械化の影響で途絶えつつある馬搬・馬耕の技術を後世へ継承したいと、畜力を活かした幅広いビジネスを展開しているのが、自らも馬方である岩間敬さんによって設立された[株式会社三馬力社]。2020年の春から、新潟県十日町市と津南町で馬耕による酒米造りをスタート。岩間さんのもとで技術指導を受けたメンバーとともに、自然と人と馬が共生しながら、無農薬栽培で酒造好適米・五百万石を育てた。津南町の圃場は標高600mに位置し、苗場山上流の澄んだ山水が注ぐ自然豊かな場所。十日町市の圃場は中山間地に広がる美しい棚田だ。「馬が人とともに田畑を耕し、その土地の草を食み、馬糞は肥料となって田んぼに還る」という循環が生まれるこの土壌ならではの”テロワール”。田、人、馬が三位一体となりできあがった貴重な酒米のバトンを、地元酒造会社[津南醸造]と京都伏見[招徳酒造]に託し、醸され、白黒2種類の「田人馬」が誕生した。2021年6月に発売されて以来、年に一度新作を発売。それぞれ磨きや醸造方法も異なるが、いずれも大地の力強さを感じられる重厚な味わいで注目を集める。出来上がりまでの背景に想いを馳せ、ワインのようにその年ごとの味を堪能したい日本酒。古きを活かし新しきを生む馬耕米の可能性は、これからますます広がっていきそうだ。