関西最大級の日本酒の祭典!2024年3月30日(土)に行われた「Sake World Summit」の盛り上がりをレポート
日本酒の祭典「Sake World Summit」が2024年3月30日(土)、京都・岡崎にある京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催されました。全国から65蔵約250銘柄が京都に集合、秘蔵酒や熟成酒、話題のクラフトサケなど多様なお酒が提供されたイベントの様子をレポート!
2024年3月30日(土)、京都・岡崎にある京都市勧業館「みやこめっせ」にて「Sake World Summit」が開催されました。
「新しい米や酵母でのチャレンジ、オーガニックやナチュラル思考での取り組み、樽での熟成、アッサンブラージュ(ブレンド)など、様々な取り組みが日本各地で進められており、江戸時代にほぼ今の酒造りが完成されて以降も、まだまだ発展中です」。
こう語るのは京都・伏見の酒蔵[月の桂]14代目蔵元であり、本イベント実行委員長でもある増田德兵衞氏。2024年現在、日本酒は過去最高レベルの品質であると言われており、その多様な味わいから国内外のファンを虜にしています。こうした状況を反映させるかのように、「Sake World Summit」では熟成酒、クラフトサケ、海外醸造所、燗酒など多種多様な商品、楽しみ方を展開。また、「NFT」での日本酒販売も行われ、これまでにない日本酒の楽しみ方を消費者に提示しました。
イベントは1部(11:00〜13:30)と2部(14:00〜16:30)に分かれて実施。本記事ではイベント1部の盛り上がり、各ブースの様子をレポートします。
INDEX
開始前から会場を心待ちにする来場者
1部の受付開始は10:30よりスタート。第1部は前売り、当日券含めて1500人(第2部は約2000人)の来場者が詰めかけ、開始前からかなりの盛り上がりをみせていた。
メインステージでは代表者による挨拶と鏡開きが行われて、いよいよイベントスタートだ!
POINT1. 全国から65蔵約250銘柄が集合
本イベントでは全国から65蔵約250銘柄が集合。オリジナルおちょこを片手に、1枚100円のお酒券と引き換えに好みの銘柄を飲み歩くことができる。お気に入りの酒蔵、目当ての銘柄だけではなく、新たな発見や出会いの多い魅力的なブースとなっていた。
中でも2020年にハワイでオープンした日本酒蔵「Islander Sake Brewery(アイランダー・サケ・ブリュワリー)」は、多くのブースの中でも一際注目を集めた。2024年6月に日本上陸が予定されている純米吟醸は、非常にみずみずしくさっぱりとした味わいが楽しめる。
▲[Islander Sake Brewery](ハワイ)
もちろん、全国各地の酒蔵にも多くの人が集まる。これだけ多種多様な銘柄を一同に飲み比べられる機会はそう多くない。さらに、蔵人との会話を楽しみながら日本酒の味わいを確認できることはイベント参加の醍醐味だろう。
▲[美吉野醸造](奈良県)
長い歴史を持つ伝統的な酒蔵と新しい酒蔵が肩を並べる本イベントは、まさに現在の日本酒の多様性を表している。
POINT2. 今注目のクラフトサケも充実
クラフトサケとは「日本酒の製法をベースにしつつ、従来の『日本酒』では法的に採用できない原料などを取り入れた酒類」であり、お米と麹に加えてホップや果実といった原料が利用される。従来の日本酒にはない新たな風味、味わいが表現できることから大きな注目を集めているのだ。
中でも秋田県男鹿市に蔵を構える[稲とアガベ]は、クラフトサケ市場をけん引する存在として広く知られており、多くの来場者が列をなしていた。
▲[稲とアガベ](秋田県)
滋賀県長浜市でクラフトサケを醸す[ハッピ―太郎醸造所]にも多くの来場者が並ぶ。両蔵の銘柄はこれまでにない日本酒の味わいを表現している。今後も市場の垣根を広げる存在として注目を集めるはずだ。
▲[ハッピ―太郎醸造所](滋賀県)
通常ブースに加えて、参加酒蔵の超秘蔵酒や長期熟成酒などが試飲できる「PREMIUM SAKE BAR」も展開。一律2000円でグラス1杯分の試飲が可能となっていた。
提供された中で最も高額な銘柄は、[白木恒助商店](岐阜)の達磨正宗 昭和四十六年醸造酒。55万円(1800ml)という商品が気軽に試せるとあって、開始早々に売り切れとなる人気をみせた。
筆者は[諏訪酒造](鳥取)の時の旅 ビンテージ1989年を試飲。香りはクリームブリュレの表面のようなカラメルの甘やかさに加えてドライフルーツ、穀物や香木といった複雑な熟成香。濃厚な蜂蜜を塗ったトーストのように香ばしい甘み、凝縮感がありながらもまったくくどく無い味わいが楽しめた。35年という年月が作り出した味わいに感動を覚える。
「燗 SAKE BAR」では熱燗DJつけたろう氏による熱燗も第1部は3銘柄提供された。
第1部の燗酒ラインナップ
・something happy 政所の茶縁[ハッピー太郎醸造所]
・Doburoku[稲とアガベ]
・Islander Kona Coffee Sake[Islander Sake Brewery]
冷蔵流通環境が整ってきたことから、これまで蔵でしか楽しめなかった無濾過生原酒などの商品も一般化している。そうした新しい楽しみ方に加えて、歴史ある熟成酒、そしてお燗というスタイルを提示している点も本イベントの特徴だろう。
POINT4. 京都の人気飲食店15店舗によるおつまみも充実!
豊富な日本酒銘柄が楽しめるイベントだからこそ、様々な料理と一緒に楽しみたい。本イベントでは料理やおつまみブースも非常に充実していた。
ちょっとしたおつまみから満腹になるメニューなど、日本酒にマッチする料理が豊富に揃っているのは嬉しい。
POINT5. 試飲酒はすべてNFTとして購入可能
「Sake World Summit」は各銘柄の試飲だけではなく、「Sake World NFT」で販売している商品のショーケースとしても活躍した。提供される銘柄の全ては「NFT」として実際に購入することが可能なのだ。
「NFT」とは「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」を実現する技術であり、日本酒と紐づけることでその所有権をデジタル上で証明できる。日本酒購入に必要となる「引換券」を、Web上で発行するイメージが分かりやすいかもしれない。
2021年にNFTアートに数億円の価格が付けられたことで注目を集め、現在では様々な業界での活用が試みられている。しかし、まだまだ新たな技術ということもあり一般普及前の段階だ。
そのため本イベント会場には初めてNFTに触れる方を対象にした相談ブースを設置。NFT購入までの流れを丁寧に教えてもらえるなど、初めての方でも安心して購入できる環境が整っていた。
NFTでは熟成オプションも付けられたり、二次流通や欲しい日本酒の所有権にオファーができたりと通常のWeb通販とは異なる利用方法も可能。本イベントを通じて日本酒とNFTの可能性が広く認知されたはずだ。
POINT6. イベントを通じてより日本酒を楽しめるように!
会場のメインステージでは1部、2部を通して以下イベントが実施されていた。
- ・Update!クラフトSAKEの世界(第1部)
- ・めくるめく熟成酒の世界(第1部)
- ・⽇本酒×NFT ⽇本酒を“飲める資産”へ(第2部)
- ・伝統的な酒造りはユネスコ無形⽂化遺産へ(第2部)
誰でも分かりやすく楽しめる内容となっており、多くの来場者が日本酒片手に聞き耳を立てていた。
現在、日本酒は国内外で大きな注目を集めていることから、より一層の市場成長が期待されている。そうした状況において「Sake World Summit」は長い歴史を持つ日本酒と、最新技術であるNFTをかけ合わせた可能性を提示するものとして大きな役割を果たしたはずだ。
また、本イベントが世界的な文化都市である京都で開催されたという点も意味深いだろう。厳しい状況が続く日本酒業界だが、周囲を取り巻く環境は決して暗くない。さらなる発展が期待される日本酒の動向に引き続き注目だ。
ライター 新井勇貴
滋賀県出身/唎酒師・SAKE DIPLOMA
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターに転身。好みの日本酒は米の旨味が味わえるふくよかなタイプ。趣味は飲み歩き、料理、旅行など
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