【今さら聞けない教えて!?シリーズ⑨】製麹(せいきく)について“其の二”
製麹(せいきく)とは、蒸した米にアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)という学名がつけられた黄麹菌(きこうじきん)(麹カビ)を振りかけ、繁殖させる麹米づくりのことです。製麹についての後編を中野恵利さんが解説します。
この方が解説します

- 杜氏屋主人・プロデューサー中野恵利さん
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プロフィール1995年、大阪・天神橋筋に日本酒バー「Janapese Refined Sake Bar 杜氏屋」を開店。日本酒評論家、セミナー講師、作詞家としてさまざまな分野で活躍。
●床もみ・もみあげ
引き込み、種切りを施され、保温のために布で包まれた蒸し米をもう一度広げ、揉みほぐします。種麹が均一に着床するよう、しっかり混ぜ合わせる床もみという作業です。混ぜ合わせる動作が、蒸し米を揉んでいるように見えることからそう呼ばれます。
床もみのあとはもみあげ。再び丘状に盛り上げ、布で包み、約8時間、場合によっては10時間以上、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)の潜在能力を信じて待ちます。
● 切り返し・盛り
もみあげ後、蒸し米に白い小さな点が見え、米粒はくっつき、硬くなります。白い点は菌糸、これが見え始めると発熱するので、ほぐしてバラバラにし、温度が上がらないようにします。温度が上がり過ぎるとアスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)は活発さを失うからです。また、バラバラにすることで酸素を供給し、菌糸をさらに伸ばしやすくするのです。これを切り返しと言います。ここからは、蒸し米ではなく麹米と記します。
切り返しのあとにはすぐ、盛りという作業が待っています。麹米を小分けにして、一定の高さに盛っていく作業です。盛る容器は、麹蓋(こうじぶた“ もろぶた ” とも言う。通称;ふた)という木製の小型容器(寸法目安45cm×30cm 深さ5cm 杉の柾目製)が使われることが多いですが、麹米の量や酒蔵の設備によって異なります。近頃では、樹脂製のものも使われています。
● 仲仕事・仕舞い仕事
盛り(もり)のあと、麹米の温度は再び上がり、菌糸はその勢いを損なうことなく繁殖は続きます。麹米が目標とする温度(約34度~35度)に達したときに行うのが仲仕事です。温度が上がり過ぎないよう、黄麹菌の繁殖により再びくっついた麹米をばらし、広げ、熱と湿気を逃がし、そしてまた布で覆います。米の表面にだけ菌糸が伸びることを阻止するため、急速な温度上昇を抑え、ゆっくりと温度を上げて菌糸が米の中心へ喰いこむように仕向けます。
仲仕事を終えると、麹米は室温を上回る熱を持ちます。最後の作業は仕舞い仕事。盛んに発熱する麹米に指でスーッと線を引き、熱を逃し、水分の蒸発を促します。線は三本引かれることが多いですが、近頃では、絵や文字を描いて心を和ませる、ウィットに富んだ酒造家もいます。
● 出麹
40度~43度という高い温度を10時間以上も保ったまま、麹米は栗のような甘い香りを漂わせ、完成を迎え、出麹という文字が示す通りに麹室から出されます。出麹のあとは、出枯らしといって、仕込みに使用出来る温度まで冷まし、乾燥させます。
蒸し米を混ぜ込み保温、ほぐして放熱、再び混ぜ込み、また温度が上がれば放熱…… 山のように盛り上げたり、布で包んだり、ほぐしたり、かき混ぜたり、麹室での作業は二昼夜つづき、刻々と変わる蒸し米の表情に注意をはらう時間を過ごす、これが製麹です。
● 機械製麹
酒造りにおけるすべての工程・作業に言えることですが、酒蔵によって、持てる設備、製造量が違います。
引き込みから出麹まで、完全に自動化された機械で製麴を行う酒蔵、盛りのあとの工程だけ機械を使う酒蔵もあります。
麴に風を送ることによって温度や湿度を制御する通気式製麴法を採用する酒蔵、無通風状態で水蒸気分圧差により水分蒸発量を制御することで適正品温経過を実現するとともに、麹表面から十分な水分蒸発を確保するVEX方式(Vapor pressure Equalizing Control System)完全無風自動装置(フジワラテクノアート社製)を導入する酒蔵など、機械の性能も様々です。
“ クラフト ” という言葉が定着した昨今、飲み手は機械化に否定的な考えを持ちがちですが、機械は、酒造家が思い描く酒造りの本質を捉え、共有し、再現する酒造りのサポーターだと思ってくださいね。
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