【豆知識】初詣はお酒の神様にお参りしよう。お酒にまつわる神様について知りたい!
日本酒と神様の関わりは深く、全国には多くの酒造にまつわる神社があります。酒造関係者も崇敬する初詣に訪れたい三大酒神神社について、唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
酒蔵に神棚がある理由
古来から日本人にとって祭りにお酒はつきもの。神様にお酒をお供えしてお下がりの御神酒を皆でいただき、酒宴を通して神様から力を授かるとされていました。また、発酵について科学的に解明される以前は、お酒を醸すことは自然の力に委ねられ、神の領域だったのです。現代でも多くの酒蔵には神棚があり、酒造りの神様がまつられています。毎朝杜氏や蔵人は神棚に向かい、良いお酒ができるようにお参りするのです。
初詣はお酒の神様にお参りしよう!
酒造の神様をおまつりする神社は全国にありますが、なかでも奈良県の大神神社、京都府の松尾大社と梅宮大社は三大酒神神社として知られ、多くの酒造家の崇敬を集めています。
大神神社(奈良県桜井市)
大神神社は日本最古の神社といわれ、酒神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)と少彦名神(すくなひこなのかみ)、杜氏の祖先といわれる高橋活日(たかはしいくひ)をおまつりしています。例年11月14日の醸造安全祈願大祭には多くの酒造関係者が訪れて、神社の御神体である三輪山の杉で作られた杉玉を授かり、新酒ができた印として軒先に吊るします。
松尾大社(京都市西京区)
松尾大社は京都最古の神社といわれ、家内安全や地域鎮護の神・大山咋神(おおやまぐいのかみ)をおまつりしています。5世紀頃、朝廷の招きによって渡来した秦氏一族が地域の開拓に力を尽くし、彼らが酒造を特技としていたので、室町時代以降に「日本第一酒造神」として信仰を集めるようになりました。例年11月には醸造祈願祭の「上卯祭」が行われ、全国の酒造関係者が訪れます。また、境内の「お酒の資料館」ではお酒の文化や酒造の工程などについての展示が楽しめ、お酒を飲む人のためのお守り「服酒守」を授かることもできます。
梅宮大社(京都市右京区)
御祭神の大山祇神(おおやまずみのかみ)は別名を酒解神(さけとけのかみ)、木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)は酒解子(さけとけのみこ)といわれ、酒造を始めた神様といわれています。11月の醸造安全繁栄祈願祭「上卯祭」では参拝した酒造関係者に神代穂(稲)の初穂が授与されます。
初詣にはお酒の神様にお参りをして、「今年も一年健康で、美味しくお酒が飲めますように」お願いをしてはいかがでしょうか。
お正月は日本酒でお祝いを
昔から神と人を結び、神聖なものとされてきた日本酒。2025年のへび年にちなんで思い出されるのが、神話の八岐大蛇(やまたのおろち)伝説です。出雲(今の島根県)に現れた八つ首のある恐ろしい大蛇の怪物を退治してほしいと頼まれた素戔嗚尊(すさのおのみこと)。八つの樽に八塩折酒(やしおりのさけ)を満たしておいたところ、怪物は喜んで平らげ、酔っ払ったところを切り倒しました。その時に尾から出てきた見事な太刀が、三種の神器の一つ「草薙の剣」といわれています。
お正月には邪気を払って長寿と健康を願うお屠蘇や、初詣で振る舞われる御神酒など、祝い酒がつきもの。くれぐれも八岐大蛇のように飲みすぎてダウンしてしまわないよう、ほどほどにしながら、美味しい日本酒でお祝いをしてくださいね。
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。