【豆知識】美味しくて健康!注目されている酒粕料理のおすすめ
日本酒の製造過程で生まれる副産物、酒粕。昔から関西の冬の食卓に粕汁は定番ですが、ほかの地域ではあまり馴染みがないようでもったいない話。酒粕の意外な健康効果と美味しい料理について、唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
酒粕とは?
酒粕は日本酒造りの副産物で、米や麹を発酵させたもろみを搾ったあとのカスです。カスといっても、食物繊維やブドウ糖、必須アミノ酸やビタミン類などさまざまな成分が含まれて栄養が豊富。もちろん日本酒の旨みや香りもたっぷり残っています。
一般に売られている板粕は圧搾機を通したものですが、見かけたらぜひ手に入れて欲しいのが吟醸粕。袋吊りなどでやんわりとしか搾っておらずペースト状で香りも華やか、そのまま食べても美味しいものです。
驚きの健康効果に大注目!
実は酒粕は、数多くの健康に良い成分を含んだ食材として話題になっています。
まずはダイエット効果。豊富な食物繊維とともに、ある物質が消化酵素アミラーゼの作用を妨げてでんぷんの吸収を遅らせ、太りにくくなるとか。またレジスタンスプロテインというたんぱく質は、胃では消化されず腸で余分な脂を吸着して排出するため、肥満防止とLDLコレステロールを低下させる作用があるといわれています。
ほかにも高血圧の防止、健忘症の予防、がんの予防、抗酸化作用に効果があるとされる成分を数多く含んでいます。もちろん食品として摂取する分にはあまり影響がないとは思いますが、なかには欧米で処方薬として利用されている成分もあり、今まさに研究が進められています。
手軽にできる酒粕料理あれこれ
簡単にできて美味しい酒粕料理のレシピを紹介します。
酒粕が固い場合は、ちぎって30秒ほどレンチンすれば使いやすくなります。
●粕汁
鮭のあら(または鰤か豚肉)、大根や人参などの根菜類をたっぷり入れて、味噌汁の要領で作ります。魚介や野菜から旨みが出るので出汁は省いてもOK。材料に火が通ったら、酒粕を溶き入れ、好みで味噌か塩を加えて味を整えます。身体が温まる冬の味覚です。
●魚の粕漬け
酒粕に味噌、みりん(または砂糖+酒)を加えてよく練り混ぜ、粕床を作ります。鮭・鰤・鯛・鰆などの白身魚の切り身を漬けて冷蔵庫で一晩寝かせ、粕を拭って焼きます。焦げやすいので要注意。3〜4日漬けておいても大丈夫だから、食べそびれた生魚がある時もとりあえず突っ込んでおけば一安心。粕床は数回使いまわせます。
●酒粕クリームシチュー
鍋で鶏肉、じゃがいも、玉ねぎ、人参を炒め、牛乳と同量の水とコンソメを加えます。材料に火が通ったら酒粕を入れてよく混ぜ、とろみがついたら塩胡椒で味を整えます。意外と牛乳と相性がいいので、グラタンソースに酒粕を加えても美味しくなります。
●こんな料理にもちょい足し
・鍋つゆにちょい足しして→粕汁風鍋
・インスタントラーメンにちょい足しして→酒粕ラーメン
・カレーにちょい足しして→酒粕カレー
・味噌+マヨネーズにちょい足しして→野菜のディップ
食べて食品ロスを無くそう
日本酒の製造過程で出るたくさんの酒粕。一部は漬物や家畜の飼料用になりますが、残りは産業廃棄物として処理されてしまいます。さらに飼料にするにも乾燥に大量のエネルギーが必要になるため、できるだけ食品として流通させることが、エコにつながります。ヘルシーでなにより美味しい酒粕料理。もちろん日本酒との相性もばっちりです。食品ロスを減らすためにも、もっと酒粕を食べましょう!
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。