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【豆知識】並行複発酵、三段仕込みがすごい!改めて知りたい日本酒ができるまで

日本酒はどのようにして造られているのでしょう? 世界的にも他の醸造酒と比べて複雑といわれる日本酒の製造工程について、唎酒師の藤田えり子さんが解説します。

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まずはワインと比べてみよう

日本酒はアルコールを含んだ飲み物です。まずはアルコールがどうやって作られるのか、その仕組みについてワインを例にとるとわかりやすいです。

ワインは、原料となるブドウを潰してしばらく置いておくだけで自然に発酵し、お酒になってしまうんです。これは、果汁に含まれる糖をブドウの皮の表面に付いている酵母が食べてアルコールができるのです。

なるほど、アルコールを作るには糖が必要、でも日本酒の原料となる米は甘くない。どうすればいいのでしょう?

並行複発酵は日本酒だけ

そこで活躍するのが麹菌です。蒸米に麹菌を付ける「麹造り」は、米に含まれるデンプンを麹菌が分解して、糖に変える工程です。次に酵母を加えてアルコールを作るのですが、その二つの過程が同時に行われることを「並行複発酵」といい、これは世界でも類を見ない日本酒だけの特徴です(ワインは「単発酵」)。日本酒が醸造酒なのに高いアルコール度数ができるのは、この独特の手法によるもの。麹菌と酵母、二つの微生物が日本酒造りには欠かせないということがわかりますね。

日本酒ができるまで

スゴ技、三段仕込み

蒸米に麹、乳酸(速醸の場合)、水、酵母を加えて作るのが酒母(酛)。その名の通りお酒のモトとなるものです。できた酒母は発酵タンクに移され、3回に分けて麹と蒸米、水を足して醪(もろみ)を仕込みます。これを「三段仕込み」といいますが、一度に量を増やしてしまわないのには理由があります。

酒母には乳酸を加えて酸性度を上げ、雑菌の繁殖をおさえています。そこに大量の原料を入れてしまうと酵母と酸の濃度が薄まり、雑菌に付け入る隙を与えてしまう。少しずつ加えていくのは、酵母が作る酸とのバランスを崩さないための工夫なんです。この三段仕込み、すでに江戸時代初期には行われていたそうで驚かされます。

日本酒の基本的な工程

1.精米:雑味の原因になる表面のタンパク質などを削りとる。精米歩合60%以下は吟醸酒、50%以下で大吟醸酒。

日本酒ができるまで

2.洗米・浸漬:米を洗って吸水させる。どの程度水を吸わせるかはお酒の出来に関わり、秒単位で調整する酒蔵もあるほど。

3.蒸し:米は蒸して「外硬内柔」に仕上げ、麹菌の菌糸を入り込みやすくする。

4.麹造り:温度と湿度を調節した麹室で、蒸米に種麹をふりかけて繁殖させる。床もみ、切り返し、盛り、仲仕事、仕舞仕事など数時間ごとの作業が二昼夜にわたって続く、重要な作業。

5.酒母(酛)造り:小さなタンクに蒸米に麹、乳酸、水、酵母を加えて発酵させ、お酒のモトとなる酒母を作る。生酛の場合は市販の乳酸を加えず、天然の乳酸菌を増殖させる。

6.醪造り:大きなタンクに移した酒母に麹と蒸米、水を足して醪を造る。初添え、仲添え、留添えの3回に分ける「三段仕込」で行う。

7.搾り:3〜5週間かけて完成した醪を搾り、お酒と酒粕に分ける。

8.仕上げ(ろ過・火入れ・割り水):活性炭やフィルターを通してにごりを取り除く。品質を安定させるために60〜65℃に加熱殺菌する。アルコール度数を15%程度に調整するため仕込み水を加える。いずれも行わない無ろ過生原酒もある。

9.瓶詰め:光をさえぎる茶色や緑色の瓶に詰め、ラベルを貼ってできあがり!

今回は「並行複発酵」と「三段仕込み」に焦点を当て、あとは駆け足になりましたが、もちろんそのほかの工程にも数々の技が込められています。それはまた機会をみて紹介しますね。


ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。

豆知識一覧はこちらから
https://sakeworld.jp/trivia/

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