【豆知識】日本酒の新たな可能性、話題のお酒“クラフトサケ”とは?
おしゃれな居酒屋で最近よく目にするクラフトサケ。でも、いったいどんなお酒なのか?今知っておきたい“クラフトサケ”について唎酒師 藤田えり子さんが解説します。
クラフトサケは「日本酒」ではない?
クラフトビールやクラフトジンと同じく、クラフトサケも小規模な醸造所で作られる個性派のお酒という印象です。では、クラフトサケは日本酒の一種なのかといえば、実はそうではないのです。
“クラフトサケ”という名称にはいくつかの意味合いがありますが、ここで取り上げるのはクラフトサケブリュワリー協会の定義にもとづく「日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の『日本酒』では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒」のこと。クラフトサケはフルーツなどを合わせて発酵させることが多く、お米以外の副原料を使ったものは法律上は日本酒と認められていません。
クラフトサケブリュワリー協会とは、ブームの牽引役となった秋田県の[稲とアガベ]ほか7つの醸造所が集まり2022年に立ち上げた団体です。現在はメンバーも増え、20代や30代の若手が中心となって、日本酒のルールに縛られない自由な発想で美味しいサケを造っています。
自由な発想による新しい味わいが特徴
それぞれの造り手が工夫を凝らし、新しい味わいを次々と生み出しているのがクラフトサケの楽しさです。テキーラの原料となるアガベのシロップや、多種多彩なフルーツやハーブと一緒に発酵させたもの。エディブルフラワーを加えたり、ビールのようにホップの苦味を効かせたもの。どぶろくもクラフトサケとして進化し、再び脚光を浴びています。また地元の農家とコラボしたり、自然との共生という視点を持つ醸造元が多いのも特徴です。
味わいは特にフルーツを使ったものは、甘味や酸味が爽やかで飲みやすい。スタイリッシュなラベルのデザインも相まって、これまで日本酒に縁のなかった層がお酒と出合うきっかけになりそうです。
日本酒の新たな可能性に目が離せない!
実はクラフトサケの誕生については、清酒製造免許の新規取得が難しく、原則的には認められないという事情が絡んでいます。2021年に海外輸出用の日本酒に限って規制が緩和されましたが、国内向けに日本酒を造りたくても免許が取れない。ならばと「その他の醸造酒」の製造免許でスタートしたのがクラフトサケだったのです。
いわば苦肉の策として生まれたクラフトサケですが、いまや新ジャンルとして日本酒市場を活気づける存在に。日本酒の新たな可能性を切り開くクラフトサケからは、これからも目が離せそうにありません。
ライター 藤田えり子
唎酒師。大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか。
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。
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