地域の風土が生きる酒造り!個性豊かな山口県の日本酒を紹介
本州最西端に位置し、東以外の3方面を海に囲まれる山口県。海岸線の延長が長いことから、気候全体が海の影響を強く受けている。県内は大きく3つの地域に分けられ、それぞれの地理的特徴を活かした個性豊かな日本酒が特徴だ。本記事ではSake World NFTで取り扱いがある山口県内の酒蔵とおすすめ銘柄を紹介すると同時に、同県の日本酒の特徴と歴史を振り返る。

室町時代、大内弘世が京の都を模した街づくりを行ったことから、山口市が「西の京」とも称される山口県。2024年1月には、ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ「2024年に行くべき52カ所」にも選出され、大きく注目を集めたことは記憶に新しい。
瀬戸内海沿岸地域、日本海沿岸地域、内陸の山間地域と3つのエリアに分けられることから、県内で醸される日本酒のタイプは多種多様。下関市のふぐや瓦そば、長門市の剣先イカなどタンパクで上品なグルメによく合うスッキリした大吟醸タイプから、硬水仕込みによるボディの太いタイプまで幅広く揃う。
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INDEX
奈良朝廷へ献上されていた山口県の日本酒
山口県の酒造りの歴史は古く、6世紀頃には長門や周防などから奈良朝廷へ献上酒があったとの記録が残る。室町時代には現在の山口市で京の都を模した街づくりが進められ、江戸時代には長州藩毛利家の本拠地になるなど栄え続けてきた。
江戸時代初期には500件を超える酒蔵があったと伝わるが、明治以降は時代の流れとともに県内酒蔵は苦戦を強いられることになった。
昭和後期に入ると山口県工業技術センターが中心となり、県内の酒造技術向上を図る。1999年(平成11年)には「やまぐち・桜酵母」や「やまぐち山廃酵母」などの酵母を開発。2006年(平成18年)には待望のオリジナル品種「西都の雫」を開発し、現在でも多くの酒蔵で使用されている。
「やまぐち地酒維新」など、県内酒蔵が連携した企画活動にも精力的。現在の日本酒業界をリードする酒蔵も登場するなど、多くの日本酒ファンから注目を集める地域となっている。
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①「中島屋酒造場」
1823年(文政6年)創業。
山口県周南市で200年以上酒造りを行う[中島屋酒造場]は、神代川と富田川の合流地点である富田土井に蔵を構えている。地元密着の銘柄「寿」は長命を願い祝い事や儀式にも使われ、「鶴・亀・寿」と呼ばれて長い間地元住民に愛されてきた。コンセプトが明確で豊かなラインナップの酒が並んでおり、社訓には「酒中在心」を掲げ、一心に醸し、量産では出せない旨さが魅力である。
日本酒造りにおいての格言である「一麹、二酛、三造り」の通り、最も重要な工程とされる麹造りをおこなう「麹室(こうじむろ)」には質の高い秋田杉を使用。酒を介して繋がる人との縁を大切にし続けながら、自らの酒造りをより広く知ってもらうため、商品開発や、海外コンテストへの出品などの海を越えた展開にも取り組む老舗酒蔵だ。
『おススメの1本!』寿(ことぶき) 純米大吟醸
長生きすることを神に祈る様子を表す「寿」の名を関した一本。厳選された最高品質の米と水を使用し、伝統的な手法で丁寧に醸造されるお祝い事や特別な日にぴったりのお酒だ。高級感のある箱付きであるため、大切な方への贈り物としても最適だろう。一口飲めば華やかな香りが広がり、まろやかな口当たりが持続する。家族や友人との団らんのひととき、大切な方へのギフト、特別な日のディナーなど、幅広いシーンに華を添える1本としておすすめだ。
特定名称:純米大吟醸
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
使用米:山田錦100%
アルコール度:15%
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- 中島屋酒造場
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中国・四国♯山口
②「岡崎酒造場」
1924年(大正13年)創業。
山口県萩市の阿武川沿いに位置する[岡崎酒造場]は1924年、山口県屈指の名勝「長門峡」近くで創業した。阿武川ダム建設によって、1970年(昭和45年)に萩市の上流にあたる現在地へ移転。創業地の名を冠した代表銘柄「長門峡」を筆頭に、米本来の風味を最大限に引き出すことを目指した酒造りを続けている。
2010年からは農薬不使用米「イセヒカリ」を使った純米酒の醸造を開始。山口県オリジナルの酒造好適米「西都の雫」で醸した純米吟醸「福良雀」や、地元の農家や酒蔵と連携し、地元・萩市で栽培・精米された酒造好適米「特A山田錦」を使った銘柄の限定販売など、地域に根ざした取り組みも積極的に展開している。
2018年には、麹を造る麹室(こうじむろ)を一新。室内の温度と湿度を厳密に管理することで、麹菌が最高の状態で働ける理想的な環境を整えた。伝統を大切にすると同時に、新しい味わいの創造に挑戦する[岡崎酒造場]は今後も萩の酒文化の発展に貢献するだろう。
『おススメの1本!』長門峡 P&A(PANDA)
クエン酸の酸味によって軽やかな香味を演出するため、日本酒造りで通常使用される黄麹ではなく、焼酎造りに使用される白麹と黒麹をブレンドして造られた一本。爽やかな酸味は合わせる料理を選ばず楽しめるだろう。お米は食用米であるイセヒカリ米を使用。お米のふくよかな旨味と適度な酸味が合わさることで、ついつい杯が進んでしまう香味に仕上がっている。爽やかで軽快な日本酒を探している方におすすめする逸品だ。
特定名称:純米酒
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
使用米:イセヒカリ米
アルコール度:15%
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- 岡崎酒造場
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山口♯山口♯酒蔵
③「はつもみぢ」
1819年(文政2年)創業。
江戸後期に山口県周南市の中心市街にある繁華街に創業した「はつもみぢ」。特徴的な社名は、お酒を飲んで頬がほんのりと赤くなる様子を色づく紅葉にたとえて詠んだ和歌「初紅葉」に由来する。
「日本の季節は、呑める」をキャッチコピーに、お米の旨味を存分に引き出したお酒を造るために全量を純米酒として製造。春は新酒、夏は低アルコール酒、秋は冷やおろし、冬は濁り酒と、春夏秋冬それぞれに一つずつ季節の酒を製造しており、「いつでも搾り立ての味を届けたい」という想いから一年中酒を仕込む四季醸造を行う。
酒造りに使用される米は全て山口県産。地元の素材にこだわった、山口の生え抜きの純米酒を追求。「原田」は山口県のオリジナル酒米「西都の雫」、最高峰の酒米「山田錦」、そして「幻の米」とされる「イセヒカリ」や「雄町」などを原料としている。
『おススメの1本!』 原田 純米大吟醸原酒35 西都の雫(さいとのしずく)
長い歴史を持つ[はつもみぢ]だが、1985年(昭和60年)には当時の日本酒需要の低迷さから酒造りを一時中断し酒販に専念。酒造りは20年に渡って中断された。その後2005年(平成17年)、十二代目蔵元によって酒造りが再開し、原点回帰の意味も込めた「原田」という蔵元の名を取ったお酒が誕生した。歴史ある酒蔵だからこそ、これまでの先祖からの繋がりを大切にしたいという想いが込められた「原田」は現在では代表銘柄となっている。
そんな「原田」の名を関し、山口県オリジナル酒米「西都の雫」を35%まで磨いた純米大吟醸。心地よい酸味が口の中でやさしい甘みと調和し、米本来の味わいを引き立たせ、西都の雫特有のキレを感じさせる。
特定名称:純米大吟醸
原材料:米(国産)、米こうじ(山口県産)
使用米:西都の雫
アルコール度:16%
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- はつもみぢ
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中国・四国♯酒蔵♯山口
④「酒井酒造」
1871年(明治4年)創業。
周辺の山々から湧き出る豊かな水脈が集まる錦川の三角州に蔵を構える[酒井酒造]。代表銘柄「五橋」は山口県岩国の清流・錦川に架かり、木造の五連アーチが美しい「錦帯橋(きんたいきょう)」に由来し、“心と心の架け橋に”との想いも込められている。
1947(昭和22)年、全国新酒鑑評会で「五橋」は全国1位を獲得。当時は硬水仕込みの蔵も多かった日本酒業界へ「超軟水でも良い酒が造れること」を示し、軟水仕込み特有のやわらかな口当たりと香り高い「五橋」の名は全国へ広まった。
1996(平成8)年に近隣の研究熱心な農家と契約栽培を開始。さらに副杜氏の実家が農家だったことから、田んぼを借りて自社でも酒米造りに挑んだ。次第に作付面積が増えてゆき、2017(平成29)年には農業法人「五橋農纏(ごきょうのうてん)」を立ち上げ、現在では5ヘクタールの田んぼでこだわりの米作りを行っている。社員自ら米作りを行うことで酒造りと農業の深い結びつきを築いてきたことから、現在使用する米は全量山口県産米を実現させいる。
『おススメの1本!』五橋 純米大吟醸 錦帯
山口県産の山田錦を35%まで精米して醸す純米大吟醸は、酒井酒造のフラッグシップ商品として位置づけられる。華やかな吟醸香、繊細な味わい、水のごとき舌触りはまさに手造りならでは。リニューアル元年である平成30BYの造りでは山口県新酒鑑評会吟醸酒部門での最優等賞に選ばれるなど、同蔵の純米大吟醸への移行が正解だったことを証明する1本となった。
特定名称:純米大吟醸
原材料:米(国産)、米こうじ(国産米)
使用米:山田錦
アルコール度:16%
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- 酒井酒造
⑤「山縣本店」
1875年(明治8年)創業。
山口県周南市のJR徳山駅から車で10分ほど。旧山陽道に面した場所にある[山縣本店]。1970年代半ばに日本酒の消費量が減少し始め、世の中の「日本酒離れ」が進んだ際には、若者や女性にも喜ばれる新たな日本酒として冷酒で楽しめるフルーティーな生酒「かほり」を開発。現在でも「かほり」は代表銘柄のひとつであり、今に繋がる生酒ブームのパイオニアともいえる存在だ。
「美しい酒を造る」ことが杜氏の目標であり、毎年「昨年よりも良い酒を」という気持ちでアップデートし続ける。近年は創業時のアイコンだった「防長鶴」ブランドを復活させ、美しく生まれ変わらせたことで注目を集めた。酒造りの工程ひとつひとつに手を抜かないこと、蔵や道具をすみずみまで手入れすること、日々の作業に丁寧に向き合うことが、より良いものを生むためのこだわりとして徹底されている。
『おススメの1本!』防長鶴(ぼうちょうつる) 純米大吟醸 山田錦
創業当時のブランドであった「防長鶴」の名を2019年に満を持して復活。「防長鶴」は伝統を守りながらも進化を恐れず突き進む[山縣本店]を表す銘柄だ。山口県産の選び抜かれた山田錦で、透きとおるような優雅な香りと、絹糸のようにするすると繊細できめ細やかな味わいを実現。酒米の王様といわれる山田錦の力強いポテンシャルをしっかりと感じる1本に仕上がっている。
特定名称:純米大吟醸
原材料:米、米こうじ
使用米:山口県産山田錦100%
アルコール度:15.5%
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- 山縣本店
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中国・四国♯山口
山口県の日本酒が持つ奥深い魅力を楽しんで!
山口県は長い酒造りの歴史を持ちながらも、常に新たな挑戦を続ける酒蔵が多い地域だ。穏やかな気候と豊かな自然が育む清らかな水、そして酒米へのこだわりが豊かな味わいを表現している。
本記事で紹介した酒蔵の日本酒は、それぞれの土地の風土や蔵元の想いが詰まった逸品ばかり。ぜひ、山口の地酒を味わいながら、その奥深い魅力を感じてみてほしい。
ライター:新井勇貴
滋賀県出身・京都市在住/酒匠・SAKE DIPLOMA・SAKE検定講師・ワインエキスパート
お酒好きが高じて大学卒業後は京都市内の酒屋へ就職。その後、食品メーカー営業を経てフリーライターに転身しました。専門ジャンルは伝統料理と酒。記事を通して日本酒の魅力を広められるように精進してまいります。