日本酒とお店

酒好きにこそ食べてほしい!国内初の日本酒アイス「SAKEICE」とは?

「お酒も甘いものも好き」という人にぜひ食べてみてほしい、日本初の高アルコール日本酒アイス「SAKEICE」。そのおいしさに思わず感動した実食レポートと、国内初の試みに挑戦した事業責任者のインタビューをお届けする。

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日本ではよく「酒好きは甘いものが苦手」というが、これは当てにならない俗説だろう。かくいう筆者も、お酒が大好きだが、甘いものはもっと好きだ。
そんな「酒好きの甘いもの好き」が垂涎すること間違いなしの次世代スイーツがある。その名も「SAKEICE」。読んで字のごとく、日本酒をふんだんに使ったアイスクリームだ。

「SAKEICE」は現在、オンラインショップや各種取扱店で購入できるが、東京駅には日本で唯一の実店舗「SAKEICE Tokyo Shop」がある。フレッシュな状態で食べられるということで、筆者も訪れてみた。

世界初の高アルコール日本酒アイス

「SAKEICE Tokyo Shop」は東京駅から徒歩5分ほどのところにある。高層ビルに囲まれるなか、温かい雰囲気の木目調の店内が目を引く。
ここでは常時、ノンアルコール2種、アルコール入り8種の計10種類のアイスクリームを販売しているそう。取材に訪れた日は、ちょうど「大関上撰ワンカップ」とのコラボレーションも行われていた。

アイスクリームに使用する銘柄は、一定期間で入れ替えているとのこと。繰り返し訪れても、そのたびに新たなフレーバーとの出会いが期待できる。
この日いただいたのは、店長の福嶋仁美さんがおすすめしてくれた「シュワッとピスタチオ」と「稲とアガべ コーヒーどぶろく」の2種類。

「シュワッとピスタチオ」は、福岡県の醸造所「LIBROM」と「SAKEICE」がコラボレーションして生まれた。
ピスタチオの香ばしい風味とミルクの濃厚さのバランスがすばらしく、ほどよいアルコール感で、サクサクと食べ進めてしまった。

「稲とアガべ コーヒーどぶろく」は、コーヒーのほろ苦さとしっかりとしたアルコール感が印象的な大人な味わい。どぶろく特有の「もろみ」がそのまま残っていて、食感も実に“おもしろい”。

味はもちろん、風味や香りがフレーバーによって異なる。そんなところが、日本酒の飲み比べと似ていて楽しかった。

「SAKEICE」にしか出せない味わいの秘密

今回、実際に「SAKEICE」を食べてみて驚いたのは、予想以上に日本酒の味わいがしっかり残っていること。そのまま飲んだときと同じくらい、芳醇な香りが鼻に抜かれていく。
その上でアルコールもしっかりと感じられるので、1つ食べればほろ酔い気分だ。口の中で徐々に溶けていくぶん、日本酒の味わいもゆっくりと楽しめる。

アイスクリームとしての完成度が高かったことにも驚いた。
単に日本酒を混ぜたというような無理やりさはなく、なめらかな口当たりやほどよい甘みが格別で、アイスクリームとしてしっかり成立。まるで贅沢なスイーツを食べたときのような、満足感と幸福感を覚えたほどだ。

それもそのはず、「SAKEICE」のフレーバーの開発を手掛けているのはプロのパティシエ。日本酒の味わいを最大限に引き出しながら、おいしいアイスクリームとして昇華させている。
この両立のために、フレーバー開発には、かなりの時間と労力をかけてこだわり抜いているそう。

そもそも「日本初の高アルコール日本酒アイス」と謡っているように、アルコール度数を保ったままお酒を凍らせるのは、技術的にとても難しい。例えば冷凍庫に酒瓶を突っ込んでおいても、中身は基本的に凍らないのと同じこと。
これまで、酒粕入りやアルコール分1%未満といった、お酒の風味をほとんど感じられないアイスクリームしか市場に出回らなかったのには、そういう事情もある。

そのなかで「SAKEICE」は、企業秘密という特殊技術を使って、日本酒のアルコール分を保ったまま凍らせることに成功した。「これぞまさに日本酒アイス!」という味わいは、これがなければ実現できなかったのだ。

酒蔵とのコミュニケーションが開発のカギ

それにしても、なぜ技術的に難しい「高アルコール日本酒アイス」の開発に挑戦するにいたったのか?筆者は事業の責任者である、[株式会社えだまめ]の成田博之さんに話を聞いた。

—「SAKEICE」事業は、技術的にも簡単なものではなかったようですが、どのようなきっかけで取り組み始めたのでしょうか?

「弊社はもともと冷凍技術のコンサルティングをする会社で、さまざまなお客様の商品開発のお手伝いをしてきました。そのなかで、自社開発のオリジナル商品を作ってみようという機運が高まってきたとき、何かインパクトのあるものはないか、模索し始めたのが最初のきっかけです。」

「そして、せっかく技術をいかすのなら、弊社にしかできないような挑戦的なことをやりたいと、目を付けたのがアルコールを使ったアイスクリームでした。ご存知のとおり、お酒は凍りにくく溶けやすいので、アイスクリームにするのは、技術的にかなり難しいんです。どの種類のお酒を使うかは、試行錯誤の結果、シンプルにおいしいというのはもちろん、銘柄ごとの味の違いが色濃く出るということで、日本酒に白羽の矢が立ちました。」

—企画が立ち上がってから、どれくらいで発売にこぎつけたのでしょうか?

「本当は、スピード感を持って進めたかったんですが、結果的に1年半ほどかかってしまいました。まず、そもそも凍らないものを凍らせるということで、100回以上の試作が必要だったこと。それと国税庁との交渉にも時間がかかりました。」

「というのも、当時の法律では、アルコール度数が1%以上の商品を作るのは酒造行為にあたり、酒造免許が必要だったんです。それを約半年かけて掛け合った結果、『一定の条件を満たせば、酒造行為には当たらない』という、法令解釈の変更が認められ、ようやく発売にこぎつけました。」

—国税庁まで動かすというのは相当な熱意だと思います。その源泉はどこにあったのでしょうか?

「これまで、高アルコールのアイスクリームが開発されてこなかった背景には、酒造法という障壁があったからですよね。それは、むしろチャンスだと思ったんです。その障壁さえ突破できれば、画期的な商品を販売できるわけですから。食品業界はどうしても、すぐに競合が出てきたり、結局大手が強かったり、という側面があるので。いい『隙間』を見つけられたと、ビジネスチャンスを感じました。」

「それと、日本酒業界と関わりをもつなかで、『SAKEICE』が何か力になれるのではないかと思えたことも、もう一粘りできた理由です。日本酒市場は縮小を続けていて、ピーク時に比べると3割程度まで落ち込んでいます。私も日本酒は大好きなので、業界にとって少しでもプラスになればと、頑張る意義を感じていました。」

—実際に日本酒業界に貢献できているのは、どういった部分でしょうか?

「正直、日本酒業界全体の売上に大きなインパクトを与えることは難しいです。ただ、酒蔵さんの商売を邪魔することなく、1円でもプラスになっていることが、私たちのやりがいだと思っています。全国の酒蔵さんとやり取りをするなかで気付いたのですが、みなさん苦心しているのが20代〜30代の女性へのアプローチ。一方、『SAKEICE』のお客様は、約8割が若年層の女性です。これまで日本酒の魅力を知らなかったターゲットに訴求できるのは、『SAKEICE』ならではの強みかなと思っています。」

「実は酒蔵さんたちも、日本酒市場の縮小には危機感を覚えていて、化粧品だったり、スパークリングだったり、新しい試みはある程度やり尽くしているんですよね。そのなかでも、我々が提案する「アイスクリーム」というのは、少し目新しかったようです。」

—現在、「SAKEICE」事業に取り組むにあたり、大切にしていることはなんですか?

「酒蔵さんがこだわっているお酒の味を最大限にいかすことです。フレーバーを開発するときも、試作品は必ず酒蔵さんに送って食べてもらうようにしています。フィードバックもお願いして、味に納得していただけたものだけを店頭に並べるようにしているんです。やっぱり、酒蔵さんに自信を持ってすすめていただけるものを作ることが、何より大切だと思うので。」

—今後の展望を教えてください。

「海外展開には、より一層力を入れていく予定です。すでに、新たな生産拠点として、台湾に法人を立ち上げました。年内にも本格的な稼働をスタートさせていきたいと思っています。台湾では今、空前の日本酒ブームが来ていて、輸出を始めた約2年前から売上が好調でした。また、『SAKEICE Tokyo Shop』も3割ほどは海外からのお客様で、反響もとてもいいんです。今後、もっと多くの国に広げていって、『SAKEICE』が海外の方々に日本酒の魅力を知ってもらう1つのきっかけになればと思っています。」

まずは一度ご賞味あれ!

冒頭述べたとおり、「SAKEICE」は、オンラインショップや取り扱いのある店舗でカップアイスを購入することができるが、「SAKEICE Tokyo Shop」にも一度足を伸ばすことをぜひおすすめしたい。

それは、「SAKEICE」をフレッシュな状態で楽しめることがなによりの理由だが、店内では全国各地の日本酒やクラフト酒を試飲したり、気に入ったものをその場で購入したりすることもできるからだ。
店頭に並んでいるフレーバーに使われた銘柄も、ボトルで販売されており、15分1,000円で10種類以上のお酒が飲み放題になる「角打ちチャレンジ」という、酒好きにうれしいサービスも。


一方で、「SAKEICE Tokyo Shop」には、「お酒が苦手」という人も多く訪れるという。
若い女性を中心に、日本酒を飲んでみたいけれど、アルコール度数の高さや自身の酔いやすさから敬遠してしまうという人たちも、「SAKEICE」なら気軽に試すことができるそうだ。
酒好きはもちろんのこと、お酒が苦手な人でも、少しでも日本酒に興味があるのなら、ぜひ一度食べてみてほしい。そのおいしさに舌を巻くこと請け合いだ。

甘いもの好きの筆者は、新感覚スイーツとして、おやつどきから楽しみたいと思っている。

ライター:近藤世菜
東京在住のフリーライター。お米の味わいがいきた甘めの純米酒が好き。現在、日本酒の知識を日々勉強中。
X:@sena_kondo

SAKEICE

SAKEICE

住所
東京都中央区八重洲2丁目1−1 YANMAR TOKYO 1FGooglemapで開く
TEL
050-3627-8876
HP
https://sakeice.jp/
営業時間
11:00~20:00
定休日
無休

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