銘酒のまちの今「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア」レポート
京都伏見、広島西条とならび、日本三大酒どころに数えられる兵庫・灘。灘五郷のある西宮市は、毎年日本酒の日に合わせて一大酒イベント「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア」を開催。当日の様子を編集部が初潜入。
日本三大酒どころの一角、兵庫・灘。一帯にある[灘五郷]は、「西郷」「御影郷」「魚崎郷」「西宮郷」「今津郷」の5つの酒造地からなっている。
西宮郷と今津郷のある西宮市は、『銘酒のまち』と謡い日本酒が街のシンボル。毎年10月最初の土日には、「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア(以下、酒ぐらルネサンス)」という一大イベントを開催している。
28回目となる2024年は、翌年春に西宮市が市制移行100周年を迎えることにあたっての節目の回となる。
銘酒のまち・西宮
阪神タイガースのアレや高校野球など、甲子園球場による喧騒のイメージを持たれがちな西宮だが、中心部一帯を七園(苦楽園・甲陽園・甲東園・香櫨園・甲風園・昭和園・甲子園)と呼ばれる高級住宅街が占める都市でもある。縦に長い地理的特徴もあり、地域によって様々な顔を持つ。
そんな西宮において欠かせない文化であるのが日本酒。瀬戸内海を面する南部で盛んに行われてきた。六甲山系より流れ出る伏流水「宮水」が、辛口芳醇でキレのある[男酒]を生み出している。灘の酒において絶対不可欠な存在であり、各メーカーが専用の井戸場を有している。
西宮神社付近より流れ出る湧水は、周囲に著名な酒蔵を生み出す呼び水となった。
ワンカップの[大関]、宮内庁ご用達惣花の[日本盛]、伊勢神宮御用酒蔵の[白鷹]、360年超の歴史を有する白鹿の[辰馬本家酒造]などなど…。呑兵衛たちの推しを数多く有するのが銘酒のまち・西宮である。
えべっさんに集う国際色豊かな呑兵衛たち
阪神大震災復興を機にはじまった酒ぐらルネサンスは、西宮神社をメイン会場として開催される。最寄り駅である阪神西宮駅では、いつも以上に“酒色”が強くなる期間だ。
西宮神社といえば、毎年1月10日前後に開催される「十日えびす」で広く知られているが、メインイベントのひとつが福男選び。
脚力自慢の有志たちが表門から本殿までを駆け抜け、一番福を狙いに境内を駆け抜けるのだが、その全長は実は約200メートルほど。神社全体の敷地面積は42,000平方メートルで、伏見稲荷大社の約20分の1という規模感だったりする。
“コンパクト”な空間で行われる酒ぐらルネサンスだが、境内に足を踏み入れた瞬間、そこにいたのは人・人・人。「この日を待っていたんや!」と言わんばかりだ。
なお、イベントを記念した限定枡は開場から一時間も経たないうちに完売。まさか手に入れられへんとは…。
場内には所狭しと、灘の銘酒たちが一堂に会する。先述したメーカーも含めたブランド銘柄が、次から次に出迎えてくれる。
まずどれを選ぶかだけで大いに悩んでしまうのもこのイベントの最大の魅力。
肴についても「フェア」と呼ぶにふさわしい逸品がズラリ。美味い酒があるところにはごっつ美味い食もあるもんや。
悩みに悩んで、白鷹の飲み比べセットと、西宮で知る人ぞ知る手羽先唐揚げのB級グルメ「甲子園ヒーロー揚げ」をチョイス。
白鷹が誇る5種の銘酒が喉を潤し、ヒーロー揚げを口に運ぶスピードを加速させる。
各々が好きな酒をかっくらいながら食を頬張り、場内はさながら酒池肉林状態。
酔いしれる来場者もまた色とりどりで、地元西宮市民を筆頭に、ある人は東京から、ある人は九州から、ある人はアジアから、ヨーロッパからと、国内外の呑兵衛たちがえべっさんに集結し宴を楽しむ。
ほろ酔い状態の中、皆が酒を通じて交流。そこに国境や肌の色は一切関係なく、ただただ酒と食を楽しむ友人だ。We Love JapaneseSake!
Z世代も参戦!
国籍同様に、参加年代も多様なのが酒ぐらルネサンスの特徴だ。場内には西宮市にある「関西学院大学」もブースを出展。灘五郷内のメーカーとコラボした特製日本酒カクテルを提供していた。
異彩を放つラインナップに筆者も目を奪われ、提供品の中から一番人気という「酒モヒート」を注文させていただいた。こちらの商品は、惣花(日本盛)、黒松白鹿(辰馬本家酒造)、山田錦(大関)、金松(白鷹)4つから組み合わせたい銘柄を選ぶことができる。
一体どんな味かとまだ残暑が残る境内でぐびっと一飲み。
おおっ、これはすっきりとした味わい。ミントが彩る装いもだが、味についても瞬時に日本酒だと脳の理解が追い付かない。
日本酒にこんなアレンジ方法があるとは。これもまた「アッサンブラージュ」ではないだろうか?
若人たちの果敢なチャレンジにただただ関心する筆者に、たまたま横にいたご婦人も「あら、なーにそれ?」と興味津々だった。
「日本酒振興プロジェクト」と銘打った本ブースは、関学内のゼミとして参加しているそう。Sakeの可能性に触れられたのもエピソード。
サテライト会場も盛況!
西宮神社がメイン会場な酒ぐらルネサンスだが、実は“サブ”もいくつか存在している。期間内は出展している灘五郷の本社内にある直売店などで、サテライト会場として各々のブランドの酒をふるまっている。
今回筆者は、大関の魅barを訪問。会場内では「生原酒セット」が振る舞われた。
同会場では門をくぐると自転車が横付けされた酒樽がお出迎えしてくれた。
一見すると摩訶不思議な組み合わせだが、会場の道向かいには小学校があるなど、灘五郷の各メーカーは街の一部として組み込まれている。
ちなみにこの通りは「酒蔵通り」と呼ばれている。なお、言うまでもないことだが、飲酒した状態での自転車の運転はご法度だ。
蔵開きもおススメ!
あっという間にお開きとなってしまったが、灘五郷では節目節目に日本酒イベントを開催し、ファンとの交流を続けている。
毎年2月から3月にかけては、新酒を振る舞う蔵開きを実施。毎週末ごとに異なる酒造メーカーが主催となって開催される。
ここでの盛り上がりもまた激アツ。あなただけの「灘の生一本」を見つけてみてはいかがだろう?