イベントレポート

“東広島を、日本酒を、もっと面白く!”広島と全国各地のお酒の魅力に酔いしれる「2024 酒まつり」

2024年10月12日(土)と13日(日)、広島県東広島市西条で「2024 酒まつり」が開催された。毎年20万人以上が来場し、広島の日本酒はもちろん全国各地のお酒を楽しんでいる。今回で35回目の開催となり、ますますにぎわいをみせた会場の様子をレポートする。

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兵庫県の灘、京都府の伏見と並ぶ日本三大酒どころの一つである、広島県東広島市西条。JR西条駅から徒歩で数分の場所に、7つの蔵元が集まっている。

酒まつりは、毎年10月の3連休の土曜日と日曜日に西条のまち全体を会場にして行われる「お酒」をテーマにしたお祭りだ。今回のテーマは「H2O(Higashi Hiroshima を Omoshiroku)」。第35回を迎える酒まつりの節目と、東広島市の市制施行50周年。二つのメモリアルイヤーが重なった今回、酒まつりを支えてきた「おもしろい」という気持ちが生み出す力を改めて次につなげたいという思いが込められている。

催しが始まる10時ごろJR西条駅に到着すると、駅付近は多くの人でにぎわっていた。会場へと向かう道の両側では、沿道の店がドリンクや食べ物を販売している。屋台から漂ってくる香りと太鼓の響きに誘われるように、メイン会場の西条中央公園に向かった。

パフォーマンスとグルメを楽しむメイン会場

会場に入ると、六角形のやぐらとその前に置かれた杉玉「大酒林」が目に飛び込んでくる。初日の8時30分からは、JR西条駅の北側に位置する松尾神社で祭りの成功と地域の活性を願って神事が執り行われる。その後「大酒林」は担がれてまちを回り、この場所に鎮座して酒まつりを見守るのだ。酒まつりは神聖な「祀り」でもあることを実感した。

オープニングセレモニーでは、約20名の来賓に東広島市観光マスコットの「のん太」も加わり鏡開きが行われた。ステージでは、ダンスパフォーマンスや広島ゆかりのアーティストらによるライブも開催。ずらりと並ぶキッチンカーや屋台で提供されるグルメとともにパフォーマンスを楽しむ人々であふれていた。

酒蔵の個性や限定酒を満喫!酒蔵イベント

酒蔵通りに並ぶ各蔵元では、有料試飲やオリジナルグッズの販売などさまざまなイベントが行われていた。広島の人気ベーカリーのキッチンカーが出店していたり、酒蔵ツアーやコンサートが開かれたり。路地裏をのぞいてみると、かわいらしい枡を販売する店や落ち着いた雰囲気のカフェに出合えるのも楽しみの一つだ。

1912(大正元)年創業の[賀茂泉酒造]の前では、純米吟醸原酒「幻の酒壺」の量り売りに行列が。国登録有形文化財に指定された店舗兼母屋を通って敷地の奥に進むと、日本酒の試飲や食品の販売が行われていた。

5枚綴りのチケットを1000円で購入し、さっそく試飲コーナーへ。チケット1枚から試飲できる日本酒のラインアップは全9種類。酒まつり限定酒のラベルには「K2O(Kanpai Kamoizumi de Omoshiroku)」の文字があしらわれ、今年の酒まつりのテーマを思わせる遊び心が光っている。

12日(土)は見事な秋晴れで、グラスに並々と注がれた日本酒がきらきらと輝いていた。口に含むとと最初はまろやかな印象で、その後に心地よいキレを感じる。ふくらむ香りを楽しみながらもう一口を重ねると、段々と力強さを増してくるような一本だ。青空の下で日本酒を楽しめることも、酒まつりの魅力だろう。

熱々の焼き牡蠣や魚のすり身を揚げたがんす、広島県廿日市市の「みやじま達磨」の手打ちそばなど、広島ならではのグルメも充実。敷地内の酒泉館では、白菜やこんにゃく、鶏肉などを酒と塩こしょうのみで楽しむ美酒鍋も提供されていた。シンプルな味付けだからこそ素材の旨味を味わうことができる、東広島市の名物料理だ。

会場内では名物の「竹酒」が一際目を引いていた。約10メートルの竹に注がれた日本酒を、好みの形の竹のおちょこで飲む。竹筒の上部から次々と注がれていくお酒が下部に取り付けられた蛇口からリズミカルに提供されていく様子は、見ているだけでも楽しい。

833銘柄の日本酒が飲み放題!酒ひろば

メイン会場の隣の酒ひろばでは、2時間30分の入れ替え制で日本全国から集められた833銘柄の日本酒の試飲を楽しむことができた。入場料は当日券で3800円。時間内であれば何度でも試飲可能だ。オリジナルおちょこと酒のあてセット、和らぎ水と酒目録も付いている。蔵元からのコメントが掲載された酒目録には15ページにわたって日本酒のリストが掲載されており、ぱらぱらとめくるだけで圧倒されてしまう。

会場内には各地方ごとのテントがあり、どのブースにも行列ができていた。中には「甘めが好きなんですけど、おすすめはありますか?」とスタッフに相談する人の姿も。「これはどうでしょう?」と注いでもらったお酒を味わい「ばっちりです!」と笑顔を見せていた。

取材を終えるころ、酒目録の中から気になるものをいくつか試飲した。石川県の酒蔵[加越]が造る「加賀ノ月 満月」は、その名前にふさわしい優しい黄金色。口中でさらさらと流れるような、柔らかな口当たりの一杯だ。次はどのお酒にしようか。この会場でおちょこにひたひたにお酒が注がれる幸せを受け止めるには、枡が必要ではないか。キレのよい後味を堪能しながらそう考え始めた時点で、すっかり酒まつりの虜になっている。

日本酒を思い切り堪能する二日間

どの会場も日本酒を楽しむ人々であふれており、2日間とも朝から夕方まで熱気に包まれていた酒まつり。この酒どころには、こんなにも人を集める力がある。日本酒を縁に、また来年も多くの人がここに集まるのだろう。


ライター :時盛郁子
広島県出身/管理栄養士
ホテル勤務を経て、フリーライターに。好みの日本酒は、やや辛口でさらさらと飲める澄んだ味わいのもの。食べることと読み書きと、予定をたっぷり詰め込んだ旅が好き。

賀茂泉酒造

賀茂泉酒造

創業
1912 年
代表銘柄
賀茂泉
住所
広島県東広島市西条上市町2-4Googlemapで開く
TEL
082-423-2118
HP
https://www.kamoizumi.co.jp/
営業時間
10:00〜17:00
定休日
土・日曜、祝日休

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