世界遺産で造る“熟成酒”
[尾畑酒造/真野鶴]が取り組む「佐渡金山貯蔵古酒」への熱き想い
世界遺産登録された佐渡金山で[尾畑酒造]が取り組んでいる貯蔵古酒。金山の坑道での熟成というインパクトがあるが、実際に酒の熟成に非常に適した場所なのだという。今回はその取り組みと想いについて蔵元の尾畑留美子氏に話を聞いた。
2024年7月、ユネスコの世界遺産に登録された佐渡金山。[尾畑酒造]ではその坑道で30年前から熟成酒造りに取り組んでいる。酒造りに最適な環境で育む熟成酒にかける想いとは?
この方に話を聞きました
- 尾畑酒造 専務取締役 尾畑留美子さん
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プロフィール尾畑酒造の二女として生まれる。大学卒業後1995年より蔵を継ぎ、専務取締役として経営に携わる。2014年から佐渡の廃校を仕込み蔵として再生させた「学校蔵プロジェクト」をスタート。生物多様性を促進するローカル資源と太陽光パネルによる再生可能エネルギーによる酒造りを行っている。
佐渡金山は酒の熟成に最適な環境
[尾畑酒造]は1892年創業。酒造りのモットーとして、日本酒造りの三大要素である。米、水、人に加えて、生産地の佐渡という4つの宝を和して醸す「四宝和醸」を掲げて酒造りを行っている。佐渡産米を中心に使っており牡蠣殻農法で栽培した「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」である越淡麗、佐渡産の五百万石や山田錦などがメインだ。
尾畑さん「佐渡でしか出来ないお酒の一つが、佐渡金山での貯蔵古酒。30年前から佐渡金山の使われていない坑道で、熟成酒造りをしています。金山の中は年間を通して約10~11度に保たれ、更に光も入ってこないです。まさに酒の熟成に最適な環境です。また電気を使わず、“エコ”な佐渡島ならではの自然セラーになっています。世界的に高品質な水、クリアな水、佐渡金山など、佐渡島ならではの酒を生み出すことが出来ます。国内はもちろんですが、ユネスコ世界遺産登録を機に、海外の方にさらに知ってもらう機会が増えればと願っています。」
佐渡金山がユネスコ世界遺産登録に選ばれたのは2024年7月だが、佐渡金山と佐渡の酒造りは古くから密接な関係がある。江戸時代に佐渡金山で金が沢山取れたことにより、江戸から多くの人と技術が入ってきた(ゴールドラッシュ)。今は人口5万人を切っているが、当時は金山の周りだけで5万、島内では10万人以上が居たとも言われている。人口増加とともに、食べる為の米が必要になり開墾が広がった。佐渡島に棚田が沢山あるのはその名残。良い米があり、人も多かったから必然的に酒造りも盛んになり、江戸時代末期には約200を超える酒蔵があったという。
佐渡金山で熟成させたお酒は、杜氏や蔵人の技術に加え、時間という自然の力が育む唯一無二のお酒なのだ。
佐渡金山熟成古酒
尾畑さん「年間を通して温度が約10~11度。更に光も入ってこないという酒造りに最適な環境なので、良いお酒を造りやすく、大変ご好評を頂いています。そんな金山古酒から佐渡のお酒の魅力の発信にもつなげていけたらと思う。『古酒』と一言で言っても褐色になるまで寝かせたお酒もあればライトなタイプまで様々。弊社は純米大吟醸や大吟醸が中心で、重層的で複雑な香りが楽しめます。マリアージュは幅広く応用でき、例えば洋食で言うなら、重めの肉料理とも相性が良いと思います。
佐渡金山貯蔵古酒「真野鶴大吟醸BY2019」
佐渡金山坑道で熟成させた大吟醸の古酒。
リンゴ蜜や蜂蜜、シナモン、ナツメグなど熟成した果物と重層的なレイヤー感が味わえる限定酒。
分類 :大吟醸・アルコール度: 16%・日本酒度: -1~+1・原料米 麹米 : 山田錦・同 掛米:山田錦・精米歩合 :35%
佐渡金山貯蔵古酒「真野鶴大吟醸原酒BY2018」
佐渡金山坑道で熟成させた大吟醸原酒の古酒
リンゴ蜜、クロスグリやナツメグ、イチジクなどの熟成したフルーツの複雑なレイヤーとフレーバーが味わえる貴重な限定酒です。
分類 :大吟醸・アルコール度: 17%・日本酒度: -1~+1・原料米 麹米 : 山田錦・同 掛米:山田錦・精米歩合 :35%
―Sake World NFTではマイナス5度の氷温庫で熟成保管しているが尾畑さんはどう考えますか?
尾畑さん「温度が低いことで、変化の速度がゆっくりになります。そのため、蔵元として飲んでほしい味わいのタイミングを長く保つことが出来るのが魅力ですね。」
―尾畑酒造のお酒をSake World NFTで保管した場合どのような味わいになると思いますか?
尾畑さん「氷温庫で保管するということで、生まれたままのお酒に近い状態に保てるのかなと。時間の力で味わいが変化する魅力もある一方で、フレッシュな状態をずっと保てるというのも大きな魅力。両方を試したりも出来ますし、ワイン愛好家も含めて、ぜひ多くの人に試して頂きたいです。」
日本酒に国境は必要なし!世界中と繋がってお酒の美味しさを広めよう!
―今後目指していることは?
尾畑さん「佐渡金山がユネスコ世界文化遺産に登録されたので、国内外から注目度が高まっています。お酒の味わいは勿論、佐渡金山というフックで佐渡の歴史や文化も知ってもらいたい。佐渡は小さい島と思われていますが、自然・文化・歴史に多様性があり、日本の縮図と言われる島。佐渡のことを知って飲んで頂ければ、さらに美味しさも増すと思います。また、そんな島の魅力を伝えるお酒をこれからも造っていきたいです。」
―世界に向けても更に販路を広げる?
尾畑さん「そもそも佐渡は離島なので、本土も海外もどちらも海外(笑)。お酒は国境を超えて色々な国の人と繋がれるのが面白いですね。世界にダイレクトに扉ができて、それが増えていくのは素敵なご縁。当社では現在15か国に輸出をしていますが、世界のいろんな国にご縁ができて、それが増えていくのは素敵なこと。最近は、海外でも『純米酒を燗にしてみよう』など色々な楽しみ方やお酒の文化をしりたいという人が増えている。今後もそうやって味わいと共に酒の文化、ひいては日本ならではの魅力が広がっていくのではないでしょうか。」
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♯新潟
ライター 秦野理恵
海外に日本酒をもっと広めたい”野望を持つ、日本酒をこよなく愛する🍶PRお姉さん
Singapore 在住歴9年のバイリンガルアナウンサーで日本酒の海外向けPRも行っている。
酒エンタメ情報や海外事情などをはじめ、お酒の面白さを幅広くお届けしている。
特技:少林寺拳法、英会話、ドイツ語(少々)
好きなタイプ:生酛系、古酒
尾畑酒造株式会社
- 創業
- 1892年
- 代表銘柄
- 真野鶴
- 住所
- 新潟県佐渡市真野新町449Googlemapで開く
- TEL
- 0259-55-3171
- 営業時間
- 9:00~16:00(酒造SHOP)
- 定休日
- 年中無休(酒造SHOP)