イベントレポート

醸造所9蔵が集結!クラフトサケの祭典「猩猩宴2024inYOKOHAMA」をレポート

2024年10月5日(土)、6日(日)の2日間、クラフトサケの醸造所9蔵が全国から集う「猩猩宴2024inYOKOHAMA」が横浜駅西口直結のニュウマン横浜で開催された。5日の様子や出店したクラフトサケ醸造所について詳しくレポートする。

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日本酒の製造技術をベースとした自由で多様なお酒

本イベントの主催であるクラフトサケブリュワリー協会の定義によると「クラフトサケ」とは日本酒の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた新しいジャンルのお酒だ。お酒と酒粕を分ける絞りの工程をしないどぶろくもまたクラフトサケのひとつとされる。

お米や米麹などを原料にしつつ、フルーツやハーブの副原料も取り入れることの多いクラフトサケ。日本酒の固定概念に縛られない自由さや味の豊富さ、飲みやすさなどから女性や海外からの人気も高まっている。

そんなクラフトサケの醸造所を全国から集めたイベントが「猩猩宴」。今回に限らず、東京や秋田などでもたびたび開催されており、今回の横浜ニュウマンは昨年に続いて2回目。会場となったニュウマン横浜の6Fにあるニュウマンガーデンは、あいにくの雨にも関わらず多くの人が詰めかけ熱気を帯びていた。

感度の高い女性が多く集まるニュウマン横浜での2年連続開催の意味

会場「800°DEGREES CRAFT BREW STAND」を運営する[株式会社STABLES]の兼政公一さんによると、クラフトサケの面白さをもっと伝えたい思いからイベント開催に協力。ニュウマン横浜という土地柄、感度の高い女性へのアプローチできると思ったと語る。前回のイベントのときも大きく盛り上がったために今回2回目の開催となった。

「昨今は低アルコールなどお酒の多様化の流れがある上に、最近の若い世代ではお酒を飲まない男性が多い一方で女性は日本酒も好んで飲まれている印象です。今回も去年以上に賑わっていて横浜の駅ビルという感度の高い女性が集まる場所とクラフトサケはとても相性がいいと感じており、来年もぜひ開催したいと考えています」(兼政さん)

またこの日はニュウマン横浜内の企画「クラフトサケ9蔵を愉しむツアー」も開催されており、企画に応募した女性たちが各酒蔵からの看板商品の紹介やこだわりについて真摯に話を聞く姿が見られた。同ツアーは募集するや否やすぐに定員に達したそうで、クラフトサケの注目度の高さもうかがえる企画となったという。ちなみにツアーの参加者はイベントのチケットやクラフトサケのお酒を購入していたそうだ。

都心に住む感度の高い人や若い女性ほど好反応!

今回はクラフトサケブリュワリー協会に所属する9蔵がすべて集結したイベント。本イベントの主催であるクラフトサケブリュワリー協会副代表の[haccoba -Craft Sake Brewery-(ハッコウバ)]の佐藤太亮さんによると、この日は各蔵ともに新しいクラフトサケファンに来てもらうための看板酒から、すでにクラフトサケを知っている人に向けた攻めたお酒まで取り揃えて気合いを入れたという。

過去には秋田の男鹿駅周辺でも開催した「猩猩宴」。今回は横浜ニュウマンという首都圏の大きなターミナル駅の駅ビルでの開催となったため、クラフトサケの知名度を高める意義は大きい。「クラフトサケは全人口の1%も知らないかもしれない存在ですが、3年前くらいから徐々に認知度も高まり、蔵の数も増えてはきました。よりもう一回りジャンルとしての人気や文化としての広がりのために、クラフトサケのファンも酒蔵のファンも両方増やしていきたいです」と佐藤さんは話す。

最近は新規で蔵を立ち上げたり老舗酒蔵が参入したりとクラフトサケを巡る動きが活発化している。

「僕たちはクラフトビール好きやナチュラルワイン好きを振り向かせたい意識がありますが、各蔵のブランディングやアプローチの仕方も違うのがクラフトサケの面白いところです。クラフトサケというジャンルに関しては製造方法やハーブ、スパイスなどの原材料の側面からも海外の方の理解も早いので、輸出の可能性もかなり高いと感じています。クラフトサケは今まで日本酒を飲んでこなかった人がクラフトサケを入口として日本酒を飲んでくれるようになり、日本酒業界全体の盛り上がりに繋がるのが一番嬉しいですね」(佐藤さん)

注目のクラフトサケ3選

今回参加した9つの醸造所の中から注目のクラフトサケをピックアップする。

ハッピー太郎醸造所(滋賀県長浜市)
「うきうきホップ」
原材料:米麹、ホップ
精米歩合:90%
アルコール分:7%

▲「ハッピー太郎醸造所」池島 幸太郎さん

「甘みが出る米麹とクエン酸が出る麹を組み合わせて、ホップの香りも楽しめるホップどぶろくです。これらを発酵させて調和すると日本酒の酵母からの香りとはまったく違うグレープフルーツのような爽やかで柑橘系の香りになり、どぶろくのイメージを一新してくれます。現代の食卓にあっても違和感のない味を目指しており、これは乳製品やお肉料理とも合います。一方でお刺身と醤油なら日本酒と合わせ、カルパッチョとグリーンソースならクラフトサケなど、ペアリングや飲み方も日本酒と役割を分けて味わってもらえるとクラフトサケがもっと楽しくなると思います」

LAGOON BREWERY(ラグーンブリュワリー)(新潟県新潟市)
「翔空 SAKEマルゲリータ Hazy」
原材料:米、米麹、トマト、バジル
精米歩合:70%
アルコール分:13.5%

「トマトとバジルを米とともに醸したクラフトサケです。ピザ・マルゲリータのような味わいですが、米の旨味に加えてトマトの酸味と旨味が重なって上品な美味しさが楽しめると思います。『翔空 HOP SAKE ほっぺ』というクラフトサケも人気で、ホップをもろみの中で醸すので、柑橘類を想起させるフレッシュな香りと瑞々しさ、ほろ苦さと爽快さを楽しめるお酒になっています」

稲とアガベ(秋田県男鹿市)
「交酒 花風」
原材料:米、米麹、ホップ
精米歩合:90%
アルコール分:14%

▲「稲とアガベ」の齋藤翔太さん

「今年リリースしたばかりの商品で、ホップ由来のグレープフルーツやライチの風味が楽しめるクラフトサケです。澱の中にホップの美味しい成分が含まれており、ホップ由来の様々な味わいを感じることができます。クラフトサケは小さな醸造所が手作りしていることが多いのでまだまだ価格帯的に高めになってしまいます。でもこのお酒は飲食店で皆様に楽しんでもらうために製造期間を短くするなどして従来よりお手頃価格を実現できています」

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無限の可能性を感じたクラフトサケの世界

「稲とアガベ」の齋藤翔太さんにも話を聞くと、今回のイベントについて大きな手ごたえを感じているという。

「クラフトサケを知っている人はもちろん、知らなかった人もリアクションがいいですね。特に感度の高い若い女性が特に多く詰めかけてくれている。クラフトサケは様々な副原料を使うことができるので地方との相性もいいので、東京や横浜など都心に住んでいる方ほど地方の魅力を感じられるお酒とも言えるかもしれません」と語ってくれた。

敷居が高かったり中高年の男性から人気が高かったり、はたまたそれなりにお酒を嗜んできた上級者が飲んでいたり。そんな“日本酒“の一般的なイメージとは別軸で大きな広がりの可能性を感じさせてくれるクラフトサケ。フルーツ、ハーブ、スパイスなど女性が好む味わいとの相性もよく、クラフトサケから酒蔵や日本酒の魅力を知っていく若い世代や女性もこれから増えていく予感を感じさせてくれた。歴史と伝統がある酒蔵がクラフトサケ事業に参入したり新しいチャレンジをする酒蔵が誕生したりと、これからもクラフトサケの動きは大いに注目する価値がありそうだ。

■参加蔵一覧(順不同)

稲とアガベ(秋田県男鹿市)、haccoba -Craft Sake Brewery-(福島県南相馬市)、LIBROM Craft Sake Brewery(福岡県福岡市)、LAGOON BREWERY(新潟県新潟市)、ハッピー太郎醸造所(滋賀県長浜市)、木花之醸造所(東京都台東区)、ぷくぷく醸造(福島県南相馬市)、平六醸造(岩手県紫波町)、足立農醸(大阪府高槻市)


ライター:エタノール純子
さまざまなお酒を飲み歩き、30歳を過ぎて日本酒に行きつく
最近はスパークリング日本酒にハマっている

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