日本酒とお店

大阪・塚本[酒神の宴]
2024 Mr SAKE 準グランプリの店主が伝える日本酒の魅力

JR大阪駅から1駅隣の塚本駅より徒歩3分。都会の喧騒から少し離れた、下町風情溢れるエリアに[酒神の宴(しゅしんのうたげ)]は店を構える。店主は唎酒師、焼酎唎酒師、ワインソムリエと数々の資格を保有する上に、2024年Mr SAKEにおいて準グランプリの受賞歴を持つ。日本酒のプロフェッショナルとして日々訪れる人たちへ日本酒の魅力を伝えているのだ。

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[酒神の宴]は2024年6月20日にオープンした居酒屋。当時、店主の島田さんは25歳。日本酒の魅力に惹かれ、自身の店舗を通じてその素晴らしさを伝える想いを取材した。

この方に話を聞きました

酒神の宴 代表 島田昇忠(しまだのりただ)さん
プロフィール
1998年大阪府枚方市生まれ。16歳から飲食業の世界に飛び込み、数々の店舗で修行を積む傍ら酒類に関する資格を取得。2024年6月に自身の店舗となる[酒神の宴]で独立する。SSI研究室専属テイスターとして日本酒コンテストの審査員としても活躍している。お手頃価格で美味しい日本酒と料理が楽しめる

お手頃価格で美味しい日本酒と料理が楽しめる

定番から季節の銘柄まで、常に数十種類の日本酒がリーズナブルな価格で楽しめる。その時々のラインナップを3種自由に選べる飲み比べ(900円)は、訪れた人の多くが頼む人気メニューだ。
2024年6月のオープンからわずか数ヶ月という期間であるが、すでに多くの人が足を運ぶ人気店に。SNSを通じて若年日本酒ファンが訪れることも少なくないという。お酒に合う美味しい料理も豊富に揃えられており、居酒屋としての使い勝手も抜群。

店主の島田さんは日本酒、ワインに関する資格を保有する酒類のプロフェッショナル。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2024」にて審査員を務めるなど、日本酒に関わる活動を精力的に行う。美味しい料理、日本酒、そして店主との会話が楽しいアットホームな雰囲気が魅力の店舗である。

日本酒の神様が宴をするお店

ー[酒神の宴]を開店するまでの経緯を教えてください。

島田さん「16歳の時に飲食業界に入り、10年目にようやく自分のお店を持てたんです。最初は大阪市内の居酒屋からスタートし、その後はラーメン屋などの飲食店で勤務していました。18歳から今のお店を開くまでの6年間、昼は和食のお店、夜は鉄板焼屋と並行しながら働いていたんです」

ー色々な業態で料理の腕を磨いていったんですね。

島田さん「和食のお店では出勤時間が10時なら、2時間前に行って魚のおろし方を勉強させてもいました。調理出身ということもあって、美味しい料理とお酒を楽しんでもらいたいと思っています」

ー[酒神の宴]という名称にはどういった想いが込められているのでしょうか?

島田さん「今でも日本酒造りの前には神社で祈願を行うように、日本酒には色々な神様が関わっています。そういった気持ちで造られた日本酒には魂と神様のパワーが入っていると思うんですよ。日本酒の神様たちがお店に集まって、宴をしているというイメージで名前を付けました」
資格取得をきっかけに日本酒の世界へ

ー日本酒を好きになったきっかけは?

島田さん「資格取得のために通った講座を通して、日本酒の美味しさに目覚めたのがきっかけです。21歳の時に『日本酒ソムリエ(唎酒師)』というキーワードが目に入ったんです。自分の店を持つことを考えた時、お酒の知識も必要だと思っていましたし『日本酒ソムリエ』という響きがかっこよくて(笑)それから日本酒の魅力を伝えるようなお店にしたいと思い、上位資格の取得を目指すようになりました。焼酎唎酒師、酒匠(※1)も取得し、24歳の時にSSI研究室専属テイスター(※2)までたどり着いたんです」

ー同年代の方たちはどういった反応だったのでしょうか?

島田さん「『何を目指しているの?』とはよく言われていましたね。日本酒の資格以外にもワインソムリエ、SAKE DIPLOMA、野菜ソムリエ、調理師、食生活アドバイザーなども並行して取得していました。飲食で独立することを考えた時、美味しい料理を作る能力とお酒を勧める知識は大事だと思っていたので」

ー資格は飲食を楽しんでもらうための手段ですね。Mr SAKEの選考会に参加したこともこういった活動の一つになるのでしょうか?

島田さん「自分の発信に説得力を持たせて、より多くの人に日本酒を広める活動を行う上でMr SAKEの選考会に参加することは重要だと思いました。何かしらの影響力がないと、たくさんの人に自分の発信を届けることは難しいので。初参加だったのですが順調に審査も進み、準グランプリを受賞できました。グランプリを取りたい気持ちもありますが、お店もオープンしたので次回以降はどうするかまだ分かりませんね」

※1:「唎酒師」の上位資格
※2:専門性の高いトレーニングを積み、その能力を認められた専門家

幅広いラインナップが揃う日本酒メニュー

常に数十種類の日本酒が揃う中、定番となる銘柄からおすすめを3種類教えてもらった。それぞれタイプの異なる銘柄だが、日本酒好きから初心者まで楽しめるラインナップになっている。

千代むすび酒造(鳥取)千代むすび 純米酒

島田さん「初めてテイスティングした時に感動した1本です。表記は純米酒ですが、純米吟醸も名乗れるスペック。口に含んだ時には旨味が強いのに、後味が非常にスッキリとしています。濃いお酒を苦手に感じる方でも軽やかに飲んでもらえるはず。ワイングラスでの飲用にぴったりの銘柄です」

大七酒造(福島) 大七 純米 生もと

島田さん「速醸系酒母が主流の現在において、生酛を醸し続けるというこだわりに惹かれます。昔ながらの造りでしか出せない味わいを大事にし、伝統を守り続けるという想いが詰まった銘柄ですね。扁平精米(※3)を採用することで無駄を省き、環境への配慮なども実現しています。味わいも生酛でありながらも酸がまろやかで飲みやすい。食中酒として最高の役割を果たしてくれます」

※3:米を丸く削るのではなく、どの部分も同じ厚さに削り取る方法。米を無駄にすることなく雑味を取り除くことができる。

小西酒造(兵庫) 白雪 江戸元禄の酒熟成古酒

島田さん「初めて熟成酒を飲んだ時、香りと味わいに衝撃を受けました。正直苦手だと思ったのですが、どんどん癖になっていって(笑)その時に出会った銘柄がこの白雪です。熟成酒を初めて試す方には甘口タイプをデザートのように飲むことをおすすめしています。この熟成古酒は小西酒造の蔵の中から出てきた江戸時代のレシピを再現したもの。こしあんを使った和菓子と合わせるとマリアージュを感じられますよ」

日本酒が進むおすすめ料理

黒毛和牛 すじ煮込み(649円)

黒毛和牛のすじ肉を贅沢に使用した煮込み料理。牛肉ならではの甘さが存分に味わえる。

島田さん「コクのある料理なので千代むすびの旨味と合わせて楽しんでほしいですね。濃い料理、濃いお酒だとクドくなってしまいますが、千代むすびのスッキリ感がいいバランスを演出してくれます」

本当のチキン南蛮(925円)ハーフサイズ(495円)

チキン南蛮の発祥である宮崎県では衣を使わずに調理し、南蛮酢につけて食べる。本場と同じ調理法で作った「本当の」チキン南蛮だ。

島田さん「チキン南蛮でつける南蛮酢の酸っぱさと、大七が持つ生酛由来の酸味がぴったりとマッチします。ぜひ試してみてください」

いろいろな切り口で日本酒を広めていく

ー今後の展望について教えてください。

島田さん「これからを担う若い世代に対して、日本酒の魅力を伝えていきたいですね。そのために今も日本酒をワイングラスで提供するなど、色々な楽しみ方を提案しているところです。お店も2、3店舗と広げながら、デザート系やカフェ業態などで日本酒を使うといった展開もしてみたい。いろいろな切り口で日本酒を広めていければと思います」

[酒神の宴]は温かいおもてなしと、日本酒に対する深い愛情が感じられるお店だ。島田さんの人柄が織りなすこの空間は、この先多くの日本酒ファンを生み出すことになるだろう。まだオープンして3カ月と目標に向けての一歩をスタートしたばかり。未来に向けたこの先の取り組みを応援したい。


ライター :新井勇貴
滋賀県出身/酒匠・唎酒師・焼酎唎酒師・SAKE DIPLOMA・SAKE検定講師
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターに転身。好みの日本酒は米の旨味が味わえるふくよかなタイプ。趣味は飲み歩き、料理、旅行など

酒神の宴

酒神の宴

住所
大阪府大阪市淀川区塚本4-4-15Googlemapで開く
TEL
080-5723-3982
HP
https://www.instagram.com/shushinnoutage_0619/
営業時間
17:00 - 24:00
定休日
木曜日

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