イベントレポート

[ザ・リッツ・カールトン京都] 会席 水暉×「獺祭」の旭酒造 京料理と世界を翔ける酒!珠玉のペアリングを体験!

[ザ・リッツ・カールトン・京都/会席 水暉]と、[旭酒造/獺祭旭]による夢のペアリングディナーが2024年8月23日に開催された。世界が注目する獺祭と、京料理の粋を集める会席コースとの斬新なペアリングを体感する機会を得た。その様子をレポートする。

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[ザ・リッツ・カールトン・京都/会席 水暉]×「獺祭/旭酒造]による夢のペアリングディナー。世界が注目する獺祭と、京料理の粋を集める会席コースとの斬新なペアリング体感をレポート。

世界の酒と超高級ホテル会席、夢の競演

▲旭酒造会長・桜井博志氏

旭酒造会長の桜井博志氏は、逆境の下にあった旭酒造を合理的経営手法で立て直し、日本有数の酒蔵として成長させた立役者だ。社長退任後、ニューヨーク州で旭酒造の米国拠点「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」を指揮し、米国で日本酒を製造する新たな挑戦を行っている。

一方、2024年2月7日に開業10周年を迎えた「ザ・リッツ・カールトン京都」は数々のユニークなイベント企画を打ち出している。この中で、「水暉」が力を入れるのが、日本酒の酒蔵とタッグを組んだペアリングイベントだ。今回、京料理の本場で繰り出される和食の粋を極めた料理と、珠玉のラインナップを提げて現れた「世界の獺祭」とのペアリングイベントが実現した。

献立のお品書きには、「水暉」副料理長の林教志氏の手描きのデジタルイラストが添えられ、イベントを盛り上げる。瓶一本描くのになんと1日かかったという力作だ。

▲左:「ザ・リッツ・カールトン京都 水暉」料理長の三浦雅彦氏 右:旭酒造株式会社会長の桜井博志氏
桜井博志会長は、2023年9月にニューヨーク州ハイドパークに「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」をオープン。すでにアメリカだけで7500石の製造石高があるというから驚きだ。世界に認められた酒と、京都の料理人との出会い。胸が大いに躍る。

処暑の京都の食材と「獺祭」の出会い

・先付

桜井会長の乾杯の音頭と共に、「獺祭 純米大吟醸45 にごりスパークリング」でイベントが開始する。先付は車海老、雲丹と夏野菜の蓮の葉盛りだ。白ずいき、枝豆、黄色ズッキーニと車海老に雲丹の甘みを加え、美味出汁ジュレと柚子でまとめる。

杏仁豆腐と洋梨、軽い柑橘の風味をもつ、瓶内二次発酵のスパークリングだ。ジュレの旨味をまとった雲丹を口に入れた瞬間、雲丹の甘みが前面に立ち、白ずいきの優しい食感と、米の粒子由来のふんわりとした口当たりが追いかける。素晴らしい食事のスタートだ。

・中皿
甘鯛の塩焼きに黒七味の風味を纏った大黒本しめじ、平茸、舞茸のスープ掛けを添えた一品。
これに、旭酒造の誇る最高峰の酒「獺祭 磨き その先へ」を合わせていく。

「磨き その先へ」の精米歩合は、おおまかに16〜18%程度だというが、「米の出来具合によって削れるところまで削る」のがコンセプトなのだという。和梨と綿菓子のニュアンスをベースに、若干苺やラズベリーなどのベリー系のニュアンス、柑橘の皮の軽い香り。ボディーは軽めで、単体で飲むと旨味はそこまで強く出てこないが、酒とキノコ、出汁、甘鯛の塩焼きを口に入れた瞬間、大黒本しめじの香り、出汁の旨味が、酒の旨味と余韻を増幅させる。そこに、焼き葱の香ばしさと、黒七味のニュアンスが加わる。ペアリングのあまりの絶妙さに、「その先へ」が進みすぎてしまった。

・造り
造りはあこう、関あじ、トロの3種の香味野菜添え。
これに合わせるのが、「純米大吟醸 磨き二割三分 獺祭 美酔」。アルコール度数10.8%という低アルコール日本酒だ。

「美酔」の名は、中国・明代の著作家、洪自誠の「菜根譚」にある、「花は半開を看、酒は微酔に飲む」という言葉からきている。
香りも口当たりもさらっとしているが、口当たりの割に余韻が長いのが印象的だ。香味野菜、本わさびを口に含んで飲むと、薬味の香りを一身に背負って酒の印象が激変する。低アルコール酒は甘口めで、酸を強めにして口当たりの物足りなさを補うものが多いが、それでは刺身とあわせると生臭みが強く出てしまう。酸の印象は低いにもかかわらず、生臭みを出さない素晴らしい設計の酒だ。

・焼八寸
夏の終わりだがまだ鱧が美味い。これを、寿司にする。シャリには、なんと「その先へ」に使われる山田錦を使う。

特別に山田錦の酒米で作ったシャリも提供された。

こちらは走りの松茸を焼いたもの。季節を先取りする幸せを噛み締めつつ、まな鰹の西京焼きをいただく。

これに、蒸し鮑と汲み上げ湯葉の肝和え、岩もずくの酢の物、蛸の梅肉和えを添える。
合わせるのは、「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」と、米国ニューヨーク州ハイドパークで醸された 「DASSAI BLUE Type 23」だ。「ハイドパークの水は日本で言うと灘と同じぐらいの硬水です。アメリカ硬度でいうと140ぐらい」と桜井会長が教えてくれた。

それぞれペアリングして驚いた。口当たりが硬質な「DASSAI BLUE Type 23」は、鮑の肝和えや、鰹の香ばしさという主張のある味わいに寄り添いやすい。一方、松茸の香りや、もずくの食感、蛸の梅肉和えは、「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」に断然軍配が上がる。日本酒もアメリカで醸されると主張が強い「SAKE」になるという新たな気づきだ。

・強肴
クライマックスは、和牛の朴葉焼き くるみ味噌に、賀茂茄子、赤万願寺唐辛子、ヤングコーン、伏見唐辛子を添えた強肴に、「獺祭 未来へ 農家と共に」を合わせていく。

「獺祭 未来へ 農家と共に」は、等級検査で等外米となった契約農家の山田錦を、最高級の希少なお酒にしてしまおう、という逆転の発想から生まれた。等外米をなんと8%まで磨く。
一口め、太い旨味の芯が貫き、軽めのナッツと白胡椒、実山椒のニュアンスが加わる。軽いスパイス感とナッツ感があるこの酒に、朴葉焼きにした和牛とくるみ味噌を合わせた三浦料理長の慧眼に脱帽する。

・食事
最後の食事は、山田錦を釜炊きにした白ごはんだ。酒米は食米としてあまり美味しいとは言えないイメージがあるが、いい意味で酒米と思えない米の甘やかさと旨味。素晴らしい〆だ。
これに合わせるのが「DASSAI BLUE Type 23」。「ご飯だけで何倍でもお酒が飲めそう!」と思わせる奥深い味わいだった。

・デザート
デザートは、米粉と酒粕のフィナンシェ、酒粕のアイスクリーム、甘酒のブランマンジェを山田錦の赤糠を使用したチュイルで巻いたものに、獺祭で漬けた梅酒のゼリーを添えていただく。
これに合わせるのが、乾杯でも登場した「獺祭 純米大吟醸 45 にごりスパークリング」と、「獺祭 梅酒 磨き二割三分仕込み」だ。さまざまなレイヤーの山田錦が多層的に登場するデザートとスパークリング、梅酒のペアリングを堪能した。

「ザ・リッツ・カールトン京都」と旭酒造、未来へ

旭酒造は、世界中の高級レストランやホテルとのコラボレーションを通じて日本酒文化を発信している。海外産SAKE「DASSAI BLUE」や、等外米を利用した「未来へ」に見るように、「日本酒の巨人」のビジョンはどこまでも深い。
一方、ザ・リッツ・カールトン京都では、6月には伏見の酒蔵2社とのペアリングディナーが行われ、今後も有名酒蔵とのコラボイベントが予定されている。これらのペアリングイベントは今後も一層注目を集めるだろう。この取り組みからは、目を離してはいけない、そんな気がする。

ライター:山口吾往子(あゆこ)
酒ジャーナリスト。全国通訳案内士、国際唎酒師、日本酒学講師、WSET Sake Educator資格保持。2019年から大阪心斎橋でWSET Sake講座を英語で担当。日英で日本酒記事を執筆している。2023年WSET Spirits Level 3取得、スピリッツ関係執筆も。

ザ・リッツ・カールトン京都 

ザ・リッツ・カールトン京都 

住所
京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔​Googlemapで開く
TEL
075-746-5522 (レストラン予約)
HP
https://www.ritzcarlton.com/ja/hotels/ukyrz-the-ritz-carlton-kyoto/overview/
営業時間
11:30~14:00 17:00~20:00
定休日
不定休

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