熟成酒

栃木県[島崎酒造]の
「どうくつ酒蔵」に潜入!
洞窟熟成への取り組みと想いを聞く!

栃木県[島崎酒造]は、洞窟内で日本酒を長期熟成させる国内屈指の酒蔵だ。豊かな自然の中にある天然のセラーで、時を待って眠る酒。代表取締役・島崎健一さんにこの洞窟熟成への取り組みを伺った。

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近年、洋酒のように日本酒にも「熟成」の価値が見出されている。その中で、栃木県那須烏山市の[島崎酒造]は熟成酒に定評があり、天然のセラーとも言える洞窟で日本酒を長期熟成させる貴重な酒蔵である。熟成への取り組みや洞窟熟成について、代表取締役の島崎健一さんに伺った。

ルーツを忘れぬ酒造りと、熟成の出発点

この方に話を聞きました

株式会社島崎酒造代表取締役・島崎健一さん
プロフィール
東京農業大学醸造学科出身。卒後新潟県の酒蔵に勤めたのち実家である[島崎酒造]へ戻る。平成11年より洞窟熟成酒に着手し、平成12年に代表取締役に就任した。趣味はランニングと釣り。多忙ながら、朝や週末の時間を利用しているそう。

[島崎酒造]の主軸のひとつは、相撲好きだった二代目蔵元・島崎熊吉氏が命名した主力銘柄「東力士」のレギュラー酒(普通酒)だという。農業が盛んだった地域柄、力仕事のあとに体が欲するのは塩分のしっかりとした食事。それに負けない甘みと旨みを持ったレギュラー酒は、地元の人々に愛された。時の移り変わりで流行は変化し、多分に漏れず[島崎酒造]も潮流に合わせた新たな酒を生んでいるが、ルーツであるこのレギュラー酒は、長年飲み続けてくれる人たちを思い「昔どおりの味で」という縦軸を貫き地域の味を守っている。[島崎酒造]の「個性」と言える酒である。

同時に、現在精力的に取り組むのが熟成酒だ。昭和45年から、出品酒クラスの吟醸酒を試験的に貯蔵。当初はタンクで常温保存し「数年後には貯蔵していることも忘れていて、偶々仕込みタンクが足りなくなった際に思い出したようで」と島崎さんは笑い話として語ってくれたが、その酒を8年後に初お披露目したところ大好評。これが[島崎酒造]の熟成のスタートである。昭和50年代半ばには商品化して一般販売。セラー室も完備して常温熟成からのセラー管理という熟成スタイルを確立させてきた。

「どうくつ酒蔵」で、時を待ち眠る熟成酒

そんな[島崎酒造]の熟成法を大きく転換させたのが、酒蔵近くにある洞窟を利用して平成11年から始めた「洞窟熟成」だ。この洞窟は、第二次大戦中に戦車製造用の軍事工場として建造していた場所で、途中で終戦となり使われずに跡地となっていたもの。ここで酒を熟成させる、全国でも珍しい取り組みだ。

豊かな自然の中に佇む洞窟の中は、日光の差し込まない漆黒の空間。夏は15℃・冬は5℃程度に保たれる。軍事用途だったため、外気を取り込み空気を循環させる内部構造で、冷蔵庫のように完全な一定温度ではない。このほんの少しの温度変化で瓶内の酒も緩やかに揺らぎ、よりよい熟成が進む。それぞれの温度帯で起こる変化が都度生まれ、酒に複雑さが宿るのだ。機械には出せない天然のセラーの力である。洞窟熟成を始める前は、常温である程度しっかりと熟成を進めたあとで冷蔵管理をしていたが、現在は洞窟の温度によって、よりきれいにじっくりと熟成を進めるスタイルにシフトしているとのこと。いかにも「古酒」という酒ではなく「慣れない人にも試しやすい酒で熟成のよさを伝えられたら」という想いもあるそうだ。

また洞窟では見学可能な開放日を設け、購入した大吟醸酒を最長20年間洞窟貯蔵してもらえる「オーナーズボトル」など、体験やストーリーを楽しめるシステムもあり、熟成文化の楽しさ・おいしさを知ってもらうための提案もおこなっている。何といっても、ほの暗い洞窟で目覚める時を待ち眠る熟成酒は、厳かで神秘的。一見の価値ありだ。

SakeworldNFTに登場する熟成酒

東力士 どうくつ瓶囲 やわ口
原料米:あさひの夢
精米歩合:70%
日本酒度:-8
酸度:1.4
アルコール度数:13%
「東力士どうくつ瓶囲」のやわ口は山廃造りの普通酒で、アルコール度数は13度と控えめだ。火入れも小ロットでおこない、可能な限り酒質をよい状態で保ったうえで、一定期間洞窟で酒を整える。

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東力士 どうくつ瓶囲特別純米 旨辛口
原料米:あさひの夢 他
精米歩合:60%
日本酒度:+8
酸度:1.5
アルコール度数:14%
同じく「どうくつ瓶囲」の特別純米は、そのシーズンの特別純米酒をベースに、熟成の山廃と速醸をブレンドされた種酒をさらにブレンドし、それを洞窟で熟成させたものだという。

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熟露枯 山廃純米原酒
原料米:国産米
精米歩合:65%
日本酒度:+1.5
酸度:1.8
アルコール度数:17%
洞窟熟成のメインブランドとなるのが「熟露枯」。山廃純米原酒は、複雑な味わいと落ち着きを持つ酒。冷と燗で違った表情を見せてくれる。

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熟露枯 純米吟醸 秘蔵5年
原料米:国産米
精米歩合:60%
アルコール度数:15%
純米吟醸秘蔵5年は、今年4月からの新商品。これまで5年・10年・20年といった長期熟成酒は大吟醸で揃えられていたが、純米吟醸を洞窟で囲っていたものがちょうど5年経ったことで発売の運びとなった。すっきりとなめらかで、温度を上げるとふくらみが生まれる。

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熟露枯 大吟醸 秘蔵10年
原料米:山田錦
精米歩合:40%
アルコール度数:17~18%
大吟醸の秘蔵10年は琥珀色の輝きと、蜂蜜のようなまろやかな熟成香。

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熟露枯 大吟醸 秘蔵20年
原料米:山田錦
精米歩合:40%
アルコール度数:17~18%
秘蔵20年はより味わいの深みとテクスチャーのなめらかさが増している。

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「熟露枯」は評価も高く、以前のペースの量で熟成させていると生産が追いつかなくなりつつあるそうで、現在未来に目覚める酒のために貯蔵を増やしているそうだ。

これらの酒をSakeworldNFTでは‐5℃のセラーで氷温管理することになる。[島崎酒造]の洞窟内では季節による多少の温度変化が生じるのに対し、SakeworldNFTは一定した超低温の貯蔵。年数にもよるが、SakeworldNFTのセラーで貯蔵した場合「低温により熟成自体には時間がかかりますが、その分きれいでエレガントになると思います」と島崎さんは予想する。ごく緩やかに熟成が進むことで、変化させたくない部分はそのままに、上品にまとまるだろうとのこと。熟成初心者にも、よりトライしやすい酒となりそうだ。

SakeworldNFTへ「熟成の概念を広げてほしい」

SakeworldNFTへの期待として「酒蔵も一生懸命熟成酒を普及させていこうとしています。蔵によってさまざまな熟成法もある。その中で、SakeworldNFTが熟成という概念と良さを広めてくれたら、と思います。それで『酒を熟成させる』ということの価値が上がり、また、酒蔵それぞれの得意な熟成法の価値が上がっていったらいいですね」と語った島崎さん。また「いずれSakeworldNFTでの熟成が高まったら」と洞窟熟成との飲み比べの希望も寄せていた。

技術のミックスで新たな挑戦へ

[島崎酒造]の今後を伺ったところ、興味深い話がいくつも出てきた。まずは、低アルコール日本酒の熟成。アルコールを抑えるのは現在のトレンドだが、甘味酸味を出したフレッシュなものが多い。そこで、低アルコール酒に熟成の技術を利用して深みやまろやかさという別の魅力を加えることで、薄さを感じさせない酒にすることを試みているそう。

また、ルーツであるレギュラー酒を洞窟で熟成させたり、特定名称酒にレギュラー酒の要素を取り入れてみたりと、蔵の個性のミックスにもチャレンジしているらしい。

そして一番驚いたのはボタニカル系の熟成酒、というもの。熟成酒にボタニカルを浸漬・抽出させるとのことだ。クラフトサケでもなく、クラフトスピリッツのような蒸留酒でもない、何とも実験的な試み。これらが店頭に並ぶ日が来るのが待たれる。

創業からの伝統と、熟成という日本酒の新しい概念づくり、またそれを組み合わせハイブリッドにするアイデア。[島崎酒造]は今最も「面白い」酒蔵と言っても過言ではないかもしれない。

ライター :髙橋亜理香
東京在住/日本酒・日本語ライター、日本語教師、日本酒テイスター
日本語と日本酒の「二本(日本)柱」で活動するライター兼教師。好きな銘柄は「やまとしずく」で、秋田県への愛が強め。
酒類以外の趣味は、ファッションと香水。保有資格:SAKE DIPLOMA・日本酒学講師・唎酒師・日本語教育能力検定試験

株式会社 島崎酒造

株式会社 島崎酒造

創業
1849年
代表銘柄
東力士
住所
〒321-0621 栃木県那須烏山市中央1-11-18Googlemapで開く
TEL
0287-83-1221
HP
https://azumarikishi.co.jp/
営業時間
9:00〜17:00
定休日
1月1日

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