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日本一の酒どころ
“灘五郷”の情報発信基地「灘五郷酒所」の魅力を体感

兵庫県“灘五郷”の酒蔵全26蔵の日本酒と料理が楽しめる「灘五郷酒所」。今回は灘五郷酒所の魅力を体感すると共に 仕掛け人でもある坂野雅さんにインタビュー。

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灘五郷は、兵庫県の灘にある5つの酒造地の総称。日本で日本酒生産量が最も多い地域であり、西郷、御影郷、魚崎郷(以上神戸市)、西宮郷、今津郷(以上西宮市)を指す。
「灘五郷酒所」は阪神本線・御影駅から徒歩8分。灘五郷の一角、剣菱酒造の酒蔵を改装し2022年4月にオープン。灘五郷にある26蔵すべてのお酒と料理とのペアリングが楽しめる施設だ。

1.灘五郷酒所に潜入

さすが酒蔵を改装しただけあり壮大な外観が広がる。店頭には灘五郷を代表する銘柄の酒樽がずらり。中には世界最大級という全長約50mのコの字型カウンターが存在感抜群。
「ふるまい酒飲みたいかー」という大きなかけ声に誘われるように店内へ。

この方に話を聞きました

株式会社 ARIGATO-CHAN 代表取締役 坂野雅さん
プロフィール
1976年 兵庫県神戸市生まれ。
博報堂に入社、2009年関西支社に転勤になったのが転機。
初めて地元を観光の視点で見つめ直す。現在は灘五郷酒所や神戸ポートタワーなど神戸のPRに努める。

-ふるまい酒のかけ声が聞こえてきましたが?

坂野さん「入店されたらまず、ふるまい酒からスタートします。知らない人同士が繋がる一期一会の機会。お酒を通じて“縁”を酌み交わす、縁を愉しみましょう。皆でお酒を飲むと“輪”が広がり気持ちがひとつになるんです」

-改めて灘五郷酒所とは?

坂野さん「コンセプトは“酒神社”です。全長50mのカウンターは本殿に繋がる参道をイメージしています。お酒は神様の力、自然の力を借りて造るので、お酒を通じて日本酒の文化を体験してもらいたいという想いがあります」

店内を見渡すと、入口にはしめ縄、提灯のようなライト、八百方の神様が描かれた全26蔵のフラッグ。そして店舗の一番奥には、日本酒のタンクの奥にみかがみ(神様の部屋)が配置されている。
ふるまい酒を飲んだからか、不定期に変化するタンクの照明や店内に響き渡るテクノの音楽なのか、心がワクワクしてくるのが体感できる。

2.灘の日本酒と料理のペアリング

料理と日本酒のペアリングに関しては発酵酒料理研究家の中野佳子さんが考案している。

-ペアリングのテーマを教えてください。

中野さん「店のスタイルは灘五郷26蔵の日本酒と“旬、地元、相性、発酵”をテーマにした料理のペアリングです。季節の食材や発酵を意識して料理を考案し、楽しむ日本酒をセレクトしています。そしてこの地域は江戸時代から世界中の多様な食文化が入っていたことから、灘のお酒はどんな食事にも楽しくすることができます。辛口の男酒と言われており、お酒単体で味わうのと食事と一緒に味わうは全く違いますよ」

カウンターの目の前では新幹線のワゴン販売のようにおすすめの料理とそれに合う日本酒をワゴンで提供していく。

今回注文したのは『おすすめの灘五郷酒所ペアリングセット(チケット15枚)』。
季節で変わる小皿3種類と、灘五郷(西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷)それぞれのおすすめの日本酒5種類がセットになっている。
※チケットは、初回チケット15枚つづり3,000円と、追加の5枚つづり1,000円の2種類。
アラカルトの料理とお酒は単品でも注文可能。

■日本酒

・御影郷「酒草子(サケノソウシ) -秋は夕暮れ-あきはゆうぐれ2023Ver./安福又四郎商店」
季節限定のお酒、時間を経つ事に味が変わる。
・魚崎郷「純米酒こしひかり 神戸米/櫻正宗]
濃醇でありながらすっきりとした辛口の味わいは食材を引き立てる。
・西宮郷「灘一 上撰/松竹梅酒造」
すっきとした辛口のお酒。どの料理にも合う。
・今津郷「扇正宗 純米酒/今津酒造」
宮水で仕込む、辛口と言われる男酒の中でも甘口のタイプ。
・西郷「金盃 上撰/金盃酒造」
複雑な味わいで宇宙の味と表現される。この中で一番インパクトのあるペアリング。
一度宇宙に行って、食事を通して地球に帰ってくるイメージ

■料理

・もちもち生麩の胡麻香る酒餡掛け
・さつまいものシナモンバターソテー
・酒粕を練り込んだクリームチーズ

灘のお酒は港町でさまざまな食文化多様性に合う。
クリームチーズは数種類の酒粕を練り込んであり、中にアーモンドとオレンジピールが入っている。

中野さん「西宮郷と御影郷でも味が違うんです。日本酒は水が大切。灘のお酒は食事をより楽しむためにあるので、食事の中にある旨味や甘味をお酒によってグッと引き立てる。そして目の前のライブ感、楽しいをどう体験してもらえるかどうかを常に考えています。」

“旬、地元、相性、発酵”だけではない、日本酒を超えた壮大なコンセプトが体験できる。

3.灘と人とのペアリング

お腹も満足したところで改めて坂野さんに尋ねてみた。

-坂野さんにとって灘五郷とは?

坂野さん「まず僕は灘に生まれ育ったが、灘の事はなにひとつ知らなかった。博報堂時代に関西支社に異動になったときに灘が魅力的な町だと気づきました。ある時、広島の西条酒まつりに行ったときに現地の方に、灘は日本で一番お酒を造っているのだからもっと盛り上げなあかんと言われたのが灘に関わるきっかかけです。とにかく風土が素晴らしい。六甲山から湧き出る水や山田錦など上質な酒米、六甲おろしの風、全ての風土が揃って灘の酒ができる。日本一の酒造りが行われていることを発信しないといけないと思ったんです。そんな時、500年の歴史がある剣菱さんが空いている蔵を使ってくれと。剣菱さんによると創業の地、伊丹から灘に移り変わってきた時に灘の酒蔵の皆様に、温かく迎え入れて貰った。その時の恩義があり何か返したいと。さまざまな人の想いが繋がり想像してなかった景色になっています。酒造りの話しやお酒の話しここから新たな物語が生まれたら嬉しいです。」

人が集い、灘と酒と食とのペアリングが始まる。想いを語りながら笑顔の坂野さんの後ろにはまた神様が見え隠れする。ふるまい酒からペアリング、体験を通して空間が笑顔になる。笑う門には福来るとはそのようなことなのかもしれない。

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灘五郷酒所

灘五郷酒所

住所
神戸市東灘区御影本町3-11-2Googlemapで開く
TEL
080-7945-8291
HP
https://nadagogo.com/
営業時間
金・土・日・祝の12:00~21:00(日・祝は~20:00)
定休日
月火水木

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