イベントレポート

「TOYOSU SAKE TERRACE」で輝く“今、チャレンジする9蔵”の日本酒

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東京豊洲市場の目の前に位置する「ミチノテラス豊洲2階」にて2023年10月28日に日本酒イベント「TOYOSU SAKE TERRACE」が開催された。

初代Miss SAKEとして日本酒業界のアンバサダーを務める森田真衣さんが運営する日本酒イベントで“常に新しいことにチャレンジし続ける9酒蔵”が集結。
穏やかな秋晴れの中、祝日の昼間に豊洲の開放的なテラスで日本酒やキッチンカーフードが堪能できる。
どの日本酒もキラリと光る!その“秘密”を探しにSake World編集部が潜入取材。

1.「SAKE TERRACE」とは

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森田真衣さん
プロフィール
埼玉県出身。株式会社Fam Lab.代表取締役。初代Miss SAKEとしてミラノ万博はじめ、各省庁イベント、蔵元イベントなどに出演。日本文化を伝える架け橋として日本酒、観光、地方創生の取り組みに邁進中。

「もっと自由に日本酒を楽しんでほしい」そんな想いから、日本酒の多様性を表現し提供していくプロジェクト「SAKE TERRACE」は立ち上がった。
たくさんの光が集まる心地良い空間の“TERRACE”と、日本酒や日本酒にまつわる人や地域を“テラス(照らす)”という想いを名前に込めているという。

今回森田さんはSAKE TERRACE代表という立場から、日本酒を親しんでいる方はもちろん、まだ日本酒に触れたことのない人たちへ「飲むきっかけをつくってほしい」と日本酒業界の最前線を走る話題の若手蔵元など新しいことにチャレンジしている酒蔵をセレクト。

本日の開催場所「豊洲」は市場が移転したこともあり新たな文化を育んでいく“場所”
これからの日本酒を牽引していく酒蔵の日本酒とも相性抜群だ。

2.TOYOSU SAKE TERRACEに潜入

豊洲に到着すると10月末にしては、やや暑く感じるほどの秋晴が広がっていた。

市場の目の前にある「ミチノテラス豊洲2階」には9蔵の酒蔵と共に、日本酒に合う料理を提供してくれるキッチンカーも登場。

▲出店酒蔵の各銘柄。イベント試飲後購入もできる。

料金システムは¥2,000(日本酒チケット3枚+酒器1つ)
追加:¥2,000(日本酒チケット4枚)酒器のみ:¥500。
事前はもちろん、当日券も対応しており観光の方の利用も見かけられた。

3.出店9蔵の日本酒を紹介

①茨城県つくば市/浦里酒造店

筑波山を北東に臨むつくば市吉沼の地で自然の恵みと南部杜氏の熟練した技が醸し出す芳醇なお酒を1年1年、大切に育てている。「浦里」は6代目蔵元 浦里知可良さんが醸す新ブランド。
“小川酵母を極める酒造り”を醸造理念とし、茨城県が誇る吟醸酵母であり自身の名前「知可良」のルーツでもある小川酵母の酒造りを極めている。

・「浦里 純米酒 」はほのかな吟醸香、青メロンのような甘味とキレが抜群。これからの秋冬にぴったりな定番酒だ。
・「吟醸あまざけ 桜翔」は東京農業大学との産学官連携で造ったお酒。阿見町産のミルキークイーンを、プリンセス・ミチコから分離したバラ酵母を使用。南国フルーツを彷彿とさせる香り高く華やか・フレッシュ&フルーティーな味わい。
・「霧筑波 まるでふくれみかん」米と水でつくった福来みかん味の日本酒。
お酒が苦手な方にもぴったり。

6代目蔵元・浦里知可良さんは「日本酒を知らない方に知ってもらうきっかけになれば」と伝統と革新の新しい酒造りに自信を持つ。

②埼玉県幸手市/石井酒造株式会社

石井酒造の酒造りは「飲む人にとってどのような存在になれるか」を考えるところから始まる。どんなシーンで、どんな感情に寄り添うか、その為に求められる酒質はどう在るべきかを逆算して設計しており、飲んだ後の表情までを想像しながら「1人でも多くの人の心を“豊かに明るく“したいと」取り組んでいる。

・豊明 一期一会 G yeast
華やかで深い香り。甘旨口でボリュームのある味わい
・豊明 純米原酒 ひやおろし
米の旨味と甘味をぎゅっと凝縮させた、豊潤で旨口なお酒と合わせてみたい
・豊明純米吟醸
IWCゴールドメダル受賞。美しくエレガント。おだやかな香りが、食中酒としてもおすすめ。

③埼玉県上尾市/北西酒造株式会社

120年以上の歴史を持つ老舗の酒造。メイン銘柄は創業当初から受け継がれる銘柄「文楽」。
果実を思わせる様な華やかな香り、お米由来の甘味、ほのかな酸味が特徴だ。
また5代目蔵元・北西隆一郎さんが5年の歳月をかけて開発した「彩來(SARA)」のブランドを展開しており、アメリカやヨーロッパなど海外20か国以上で親しまれている。

▲彩來 純米吟醸 無濾過生原酒

彩來は“酸味・甘味・香り”がテーマ。
マスカットのようなフルーティーな香りに果実のみずみずしさ、無濾過生原酒ならではのシュワっとしたガス感が広がる。

杜氏の村上大介さんは「特にライト層をきっかけに飲んで欲しい」と想いを込める。

④石川県白山市/吉田酒造店


石川県霊峰白山の麓、手取川扇状地で150年以上酒造りを続けている。
代表銘柄は「手取川」「吉田蔵u」。7代目蔵元・吉田泰之さんが率いる蔵では個性豊な蔵人たちが”和釀良酒”の心を響かせながら酒造りをしている。白山からの百年水、石の多い大地で育った米、代々受け継がれてきた金沢酵母、能登杜氏から受け継いだ山廃造り、この4つ要素を大切にしながら、美味しく楽しいお酒を探求している。

・吉田蔵u 貴醸酒
モダン山廃のお酒で仕込んだ貴醸酒。発酵由来のガス感と柑橘類のようなフレッシュな酸味、可愛らしい甘味が合わさり、瑞々しく爽やかなお酒に仕上がっている。
・手取川 Sparkling SLASH
石川県の新しい酒米「百万石乃白」で醸したスパークリング日本酒。
弾ける瑞々しさ、梨やパインのような果実味が楽しめる。モコモコラベルも可愛い。

製造部の小西谷さんは「山廃造りというナチュラルな製法の魅力を全力で伝いたい」と力強い。

⑤愛知県岡崎市/丸石醸造

元禄三年(1960年)に愛知県岡崎にて日本酒造りを開始。以来333年の永きに渡り、日本酒を造り続けている。「二兎追うものしか二兎を得ず」のコンセプトの基、「味」と「香」、「酸」と「旨」、「重」と「軽」、「甘」と「辛」、「複雑」と「綺麗」など二律背反する2つの事柄を最高のバランスになるよう追い求めている。

・純米 二兎 サテン
愛知県岡崎市が復刻させた幻のお米「萬歳」70%を使用し、「軽」「酸」「甘」「香」を意識して丁寧に仕上げたアルコール13%の低アル原酒。すっきりとしたライトな飲み口から程よい酸をまとったソフトな甘みが感じられ、コクのある旨みと含み香がバランスよく広がる。
・二兎 純米吟醸 出羽燦々 五十五
出羽燦々の華やかさと濃醇さをグッと引き出し、アクセントとなるビターなキレがエレガントな余韻を演出。
・純米大吟醸 備前雄町四十八 333周年記念ラベル
レインボーカラーの限定ラベル。酸味の中に感じる苦味と旨味、雄町らしいしっかりしたコクが感じられる。

⑥長野県諏訪市/宮坂醸造

優良清酒酵母として現在でも全国の酒蔵で使われている「七号酵母」の発祥蔵。
本日は「顧客の食卓を和やかにする上質な食中酒」という真澄のブランドコンセプトを明確にした「こだわりの真澄シリーズ」から黒、白、茅色の3本。
近年は「原点回帰」をテーマに「協会七号」をルーツに持つ七号系自社株酵母を用いて新たな真澄を創造している。

▲社長室長・宮坂勝彦さん

やはりこの季節は味が乗っている「ひやおろし」。軽やかな甘味と凛とした酸味が舌を包み込むように広がる。燗酒にして飲みたいところ。

「日本酒の入口をつくりたい」と宮坂さん。
今の季節おすすめのひやおろしはもちろん、入口にぴったりな軽口の「白」、すっきりとした「黒」、それぞれの旨み、酸味を感じてもらいながら食中酒として味わってほしい。

⑦滋賀県長浜市/ハッピー太郎醸造所

酒蔵修行12年ののち2017年米麹・味噌・鮒寿司屋として起業。
「どぶろくの警戒心を解きたい」と2022年醸造免許取得し新しいどぶろくを醸している。
ぶどうの皮の渋みまで感じることができる「ハニカム葡萄」、茶のお菓子が好きで考案した緑茶の仕込み水を使った「政所の茶縁」、ミントの力で目が覚める「赤丸薄荷」など米以外の素材で造り上げる。

▲ハッピー太郎こと池島幸太郎さん。

日本酒の修行で培ったクオリティと味噌屋としての発酵愛を掛け合わせ、「新しい飲み物」を産み出し続ける。「味噌屋」の米麹を使いながらも洗練された美しい味わいは多くの人を魅了する

▲参加者の東京都在住25歳会社員の女性。
「めちゃくちゃ美味しい!いい意味で思っていたのと違う」と目を輝かせていた。

13時30分頃には早々に売切れとどぶろくの人気はさすがだ。

⑧奈良県奈良市/倉本酒造株式会社

日本清酒発祥の地・奈良。大和高原、標高約500mの厳冬の地・都祁(つげ)にて地の利を活かした酒造りをしている。代々大切に手入れしてきた裏山の地層からゆっくりと濾過された甘みのあるやわらかな山水は唯一無二。

日本酒の新たなスタンダードを表現した2018年スタートの”KURAMOTO”シリーズ
伝統を守りつつ固定概念を破るまさに新時代のSAKEを醸している。

・KURAMOTO Ym64
30BYから新たに取り組む”bitラベル”シリーズ。
あえて特定名称は明確に示さず、8bit(1bite)で数字(精米歩合)を視覚的に表現(2進数をイメージ)したラベルを採用している。
奈良県産の山田錦を使用し、7号酵母で醸す。
ほのかな甘やかさに、ライチやマスカット的な果実感。スマートなジューシーさのある、飲み心地よい味わい。

▲代表取締役・醸造責任者 倉本隆司さん

・KURAMOTO SE
固定概念や過去にとらわれず、温故知新で醸すお酒です。
ライチやマスカット、グレープフルーツが融合したかのような「4MMP」と呼ばれるアロマ成分の香り。爽やかな酸味と甘さが広がりながらも後味はスッキリ、キレが感じられる。

「日本酒は、もっと自由になれる」と倉本さん。日々五感を研ぎ澄ませ、真っ直ぐに酒と向き合っている。

⑨福島県南相馬市/haccoba -craft sake brewery-

一時人口がゼロになった福島県の小高という町で、2021年2月に誕生した酒蔵。「酒づくりをもっと自由に」という想いのもと、かつてのどぶろく文化を現代的に表現した、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行う。

・はなうたポップス
東北に伝わる幻のどぶろく製法“花酛”とビールの製法ドライホップを掛け合わせ、お米のクリアな甘みとホップの爽やかな香りを表現。
・YES&NO
「桃」をテーマにしたお酒。桃の葉や実、そして隠し味でイチジクの葉も一緒に発酵させている。
・サニーデイ・レモネード
味わいは甘酸っぱいレモネードをイメージ。原料にはONE-INCHより提供されたカンナビジオールを配合。

事業を通して、自律的な地域文化と自由な酒づくりの文化を取り戻すことを、目指している。

4.イベントを体感して

SAKE TERRACE代表の森田さんや参加酒蔵さんに共通していた「日本酒を知ってもらうきっかけに」という想い。どうすれば日本酒を知ってもらえるかと考えたときに各々が“チャレンジ”する酒造りや、“気軽にイベントで楽しんでもらいたい”という考え等。
それぞれが繋がった「TOYOSU SAKE TERRACE」では日本酒好きの老若男女、日本酒を知りたいという若い世代、豊洲で日本酒に出会った人々が笑顔で顔を赤らめる。

“昼どきのお洒落なテラス”ではさまざまな想いが込められた日本酒が輝いて見えた。
それは太陽の光だけではなさそうだ。

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