蒼天伝 蔵の華 純米大吟醸
男山本店 | 宮城県
男山本店
宮城が全国に誇る日本有数の港町、気仙沼。太平洋沿岸に位置し、古くから豊かな自然と四季折々に新鮮な魚介が水揚げされてきたこの地で[男山本店]は1912年に生まれた。目指すのは海の幸をさらに美味しく楽しめるお酒だ。
世界三大漁場でもある三陸沖に面し、美味しい海産物の宝庫である気仙沼。この地では、漁場ならではの食文化が発展し、食と密接につながる日本酒も重宝されてきた。[男山本店]は、この地で100年以上にわたり酒造りを営んでいる。
1932年に竣工した木筋コンクリート造りの3階建て本社屋は、2003年に国の登録有形文化財に指定され、気仙沼を代表するシンボル的な酒蔵として地元に愛されてきた。しかし、東日本大震災で本社屋は全壊し、貯蔵庫なども失われた。幸いなことで、高台にあった酒蔵が被災を逃れて、翌日から操業が再開できたという。明治三陸地震津波を経験した現当主の曽祖父である初代社長が、酒蔵を高台に建てたことが功を奏した。
そんな男山本店が大事にしてきたのは、魚に合う味へのこだわりと、地元で懸命に米作りを行う農家と手と手を取り合って行う酒造りだ。1997年、宮城県初の酒造好適米「蔵の華」を使い、この地でしか作れない酒を醸している。
「気仙沼らしい地酒が造りたい」と2002年に立ち上げたのが代表銘柄の「蒼天伝」。その名は「気仙沼の蒼天のように澄んださわやかな味わい」を目指して付けられた。
数年間の試行錯誤を経て、味の輪郭が定まったという「蒼天伝」は、岩手県との県境に位置し、気仙沼市内で最も水がきれいな廿一地区で栽培された「蔵の華」を使用し、魚料理と合うすっきりとした酒質で、キレのいい後味を追求している。
もう一つの代表銘柄「気仙沼男山」は創業者である菅原昭治が、京都伏見の石清水八幡宮(男山八幡宮)に製造免許をもらう大願成就の御礼祈願の際に、八幡宮宮司から拝受したもの。純米酒や吟醸酒など、飲む人の趣向や飲み方に応じて幅広い楽しみ方ができ、男山本店の歴史を感じられる銘柄だ。
震災後も契約農家による「蔵の華」の作付けも継続するなど、地元と密着した酒造りを続ける[男山本店]。2022年には初の女性杜氏が誕生した。伝統を守りつつも、新たな着眼点でより男山本店らしい酒造りのため日々進化している。
2023年には創業110周年を記念して、坑道熟成酒「男山本店 純米吟醸 鹿折金山貯蔵酒」が発売された。奥州藤原氏の都・平泉の黄金文化を支えた日本遺産「みちのくGOLD浪漫」の構成文化財「鹿折金山」の坑道で1年間熟成させた熟成酒だ。
日本酒や日本文化の素晴らしさを気仙沼から世界へ。気仙沼の自然の恵みと調和してきたからこそ、継承できる歴史や伝統を、男山本店はこれからも未来に繋げていく。