酒屋に聞く

【広島・酒商山田】
創業93年目の酒屋が挑戦!
日本酒×日本ワインが融合
新感覚熟成酒「FUSION」

広島・宇品に本店を構える[酒商山田]。日本の酒を取り扱うことに特化し、取り扱いアイテムは6000を超えている。今回は日本酒と日本ワインを融合させたオリジナルの日本酒シリーズ「FUSION」について開発者である、平田智久さんに話を聞いてみた。

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[酒商山田]が日本の酒蔵と日本のワイナリーに注目し、新たな付加価値を付けて生み出した新感覚の日本酒「FUSION」。すでに市場に出回っている日本酒を、ワイナリーから取り寄せたワイン樽で熟成させたものだ。FUSIONシリーズの発起人である平田さんに話を聞いてみた。

この方に話を聞きました

酒商山田 平田智久(ひらたともひさ)さん
プロフィール
広島県広島市出身。大学卒業後、酒問屋、酒販店などに務め、長きに渡り酒業界に携わる。2011年に広島に帰郷、酒商山田に入社。現在は新規事業マネージャーを務め、数々の新商品やサービスをリリースする。

地元の酒もレアな日本酒も見つかる頼れる酒屋

1931年に広島県・宇品に創業。広島駅から徒歩3分の場所にあり観光客もアクセスしやすい「エディオン蔦屋家電店」、気になる酒を気軽に角打で試せる「八丁堀店」に加え、2024年10月には福山駅前にも新店舗をオープン。東京・池袋駅にある「西武池袋店」を合わせて、全7店舗を構える。

日本の酒を扱うことにこだわり、日本酒、本格焼酎、日本ワイン、ジャパニーズウィスキー、クラフトビールなど、取り扱う商品は6,000アイテムを超える。地元の酒はもちろん、酒商山田限定酒なども揃う。珍しい商品もラインナップしているので、頼れる存在だ。

日本酒と日本ワインの価値を高め合いたい

―日本酒と日本ワインを融合させたFUSIONが誕生したきっかけを教えてください。

平田さん「すでに、ワイン樽で熟成した日本酒は数件の蔵元で作られていて、商品化もされています。ですが、どこのワイナリーの樽を使っているものかわからないものがほとんどです。製造元を明らかにして販売することで、日本酒はもちろん、酒蔵やワイナリーにとっても新たな付加価値が付けられるのではと考えました」

―実際の反響はいかがですか?

平田さん「酒蔵のファン、ワイナリーのファン、双方から高評価を得ています。日本酒をあまり飲まない方や、逆にワインをあまり飲まない方に飲んでいただくきっかけにもなっています。また、コース料理の一部として起用されることが多く、レストランの方々から好評です」

どのFUSIONに出会えるかはタイミング次第

―一度にどのくらいの量が作れますか?

平田さん「ワイン樽一つが220ℓ前後の容量です。ですので、720mlの瓶で300本前後。熟成が長くなるほど容量が減るので、寝かせれば寝かせるほど瓶詰めできる本数は減ってしまいます。出荷するタイミングは決まってないので、どのFUSIONが販売されているかは、私どもでも、その時になってみないとわかりませんね。その時の出会いを楽しんでほしいです」

華鳩×三次ワイナリー FUSION2023 “Smooth” 720ml (はなはと) 2,420円

広島県「三次ワイナリー」でメルローを熟成させていた赤ワイン樽に、広島県「榎酒造」の日本酒「華鳩」を入れて1,060日間熟成させたもの。オーク樽由来の複雑味と、まろやかさを兼ね備えた味わい。

一期一会の味わいが生まれる

―現在、どのくらいの酒蔵とワイナリーが参画されていますか?

平田さん「30の酒蔵と9のワイナリーが参画してくれています。これまでにリリースしたFUSIONシリーズは数百種類以上、年間で40種類以上をリリースしています。樽の中に入れる日本酒の種類、樽の材料、ワイナリーで使用していた期間、最後に使用していたワインの種類、熟成する期間によって変わります。二度と同じものは作れない、一期一会の味が生まれます」

―とても魅力的ですね。味はどのようにイメージして決めていますか?

平田さん「FUSIONらしさは、“華やかなワイン感を出したライトなもの”と“長期熟成させて樽の香りやタンニンの渋みを効かせたヘヴィーなもの”の二つに分けて考えています。同じ酒蔵とワイナリーでも、仕込むタイミングや熟成する期間で味が変わるので、サンプルを送ってもらい酒蔵と相談しながらリリースのタイミングを測っています」

―酒蔵と連携して細かな調整をされているんですね。ほかに、苦労したことはありますか?

平田さん「熟成する際に使用するワイン樽があまり手に入らないことです。各ワイナリーによって考え方は異なりますが、ワイン樽は10年以上繰り返し使用するところがほとんどなんです。そのため、参画している酒蔵に比べて、ワイナリーが少ないのが現状です」

日本酒とワインユーザーの架け橋になりたい

―今後、挑戦したいことはありますか?

平田さん「日本には1,000を超える酒蔵と、400を超えるワイナリーがあります。FUSIONを通じて、酒蔵とワイナリーのユーザーを繋ぐ架け橋であり続けたいと思っています。美味しい日本酒と美味しいワイナリーのワイン樽を合わせても、毎回良いものができるとは限りません。失敗を恐れずに、新たな価値を生むものづくりに積極的に取り組み続けたいですね」

味わいはもちろん、店頭でも、二度と同じ味には出会えないかもしれない。一期一会を楽しむFUSION。それは逆に考えると、毎回新しい選択を与えてくれて、自ずと挑戦できるきっかけになっているということだ。新しい出会いを探しに、酒商山田を訪れたい。


ライター小川茜
広島県福山市在住
福山の離島と自宅を往復する二拠点ライター。
日本酒は、どぶろくとにごり酒に惹かれがち。
旅の目的は、飲むこと、食べること、出会うこと。

 

酒商山田

酒商山田

住所
広島県広島市南区宇品海岸2丁目10番7号Googlemapで開く
TEL
082-251-1013
HP
https://sake-japan.jp/
営業時間
10:00〜19:00
定休日
日曜日/祝日(GW・盆・正月)

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