地域の酒

海外SAKE事情 アメリカ・ラスベガス編

日本の國酒「日本酒」は海外ではどのように取り扱われているのか。Sake World海外特派員が「JapaneseSake事情」を報告する。今回はアメリカ・ラスベガス在住ライターによる現地最新レポート。

海外SAKE事情アメリカ・ラスベガス編。
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自由の国・アメリカ合衆国において日本酒はどう受け入れられているのだろうか?本稿では「幸運の町」ラスベガスに在住のライター・石川葉子氏が最新事情をレポート。
和食の枠を超え、現地の食文化に溶け込みつつある日本酒のいまを伝える。

ラスベガスってどんな街?

アメリカ西部のネバダ州に位置するラスベガスは、カリフォルニア州のロサンゼルスから、飛行機で1時間ほどで到着する。世界有数のギャンブルの街として、カジノを連想する方も多いだろう。
ラスベガス・ストリップ(大通り)に立ち並ぶ巨大カジノホテルは、ネオンを輝かせて一日中活気に満ちているが、この街の魅力はカジノだけではない。

付近にモハーベ砂漠がある同地は、「グランドサークル(南西部5州の国立公園・モニュメントなどが点在するエリア)」への玄関口としても知られ、周辺にはアメリカならではの壮大な自然景観を楽しめるスポットが数多く存在する。ネオンの煌めきと広大な自然の両方を満喫できるユニークな街、それがラスベガスだ。
地元住民は州外からの移住者も多く、新しい体験や文化を受け入れる柔軟な土壌を生み出しているのも特徴。街全体が未知のものに対してオープンな雰囲気を醸し出している。

煌びやかなカジノリゾート。

アメリカとお酒

アメリカの酒事情は広大な土地もあって地域によって大きく異なる。
全土で広く親しまれているのは、ビールやハードセルツァー、ワイン、カクテルなどが挙げられる。その中でアメリカが日本酒の輸出数量世界第1位※であることは、日本酒市場の目覚ましい成長をはっきりと示している。
※日本酒造組合中央会2024.2.8付けプレスリリースによる

日本酒人気はラスベガスにも確実に波及しており、2024年9月の「LV Japan Fair(ラスベガスジャパンフェア)」で開催された試飲イベントでは、多くの来場者がさまざまな銘柄の飲み比べを楽しんでいた。高まる関心をあらためて実感した。

日本向けイベント「LV Japan Fair」では日本酒も出展。

ラスベガスSAKE事情

日本酒を買うなら日系マーケットへ

日本酒の人気はたしかに広がりを見せているものの、ラスベガスにおいて日本酒を豊富に取り揃える小売店はまだまだ少数派だ。
スーパーマーケットの酒コーナーやリカーストア(酒屋)では、ビール、ワイン、ウイスキーなどあらゆるアルコール飲料で埋め尽くされているが、その中で日本酒の占める割合は極めて小さい。
筆者が頻繁に利用するスーパーマーケットを例に挙げると、ワインは200種類以上に及ぶのに対し、日本酒はわずか3-4銘柄。ワイン棚の片隅にひっそりと佇んでいる状態だ。

アメリカのスーパーマーケットの酒売り場。

日本酒はわずか3~4銘柄が陳列。

一方で、日系マーケットや酒専門のディスカウントストアでは、少しずつだが取り扱い銘柄や種類が増えてきている。これらの店舗では、「くろさわ」「菊水」「酔鯨」「出羽桜」「久保田」「獺祭」など、日本でもおなじみの銘柄が並び選択の幅が広がる。

日系マーケットは所狭しと「JapaneseSake」が。

ディスカウントストアにも多くの日本酒の姿が。

ジャンルを越えた料理と日本酒のマリアージュ

飲食店における日本酒の存在感は、小売店とは様相が異なる。
かつては和食・寿司店が中心で限られた銘柄のみ提供されていたが、近年ではアジア料理やフュージョン(多国籍・無国籍)料理店、ラーメン屋にとんかつ屋など、業態の垣根を越えて日本酒の進出が著しい。バラエティに富んだ銘柄が次々とラインナップされるようになっている。

外食店では業態問わず豊富なバリエーションの日本酒が展開。

典型的な居酒屋のドリンクメニューでは、ビール、ワイン、ハイボール、チューハイ、ウイスキーなどの蒸留酒やソジュ(韓国焼酎)に加えて、日本酒の銘柄が多く構成されている。
フュージョン料理店などでは、カクテルやワイン、ビールに加え、日本酒がメニューに並ぶことも増えてきた。大吟醸酒や吟醸酒が「プレミアム酒」としてカテゴライズされ、「酔鯨」「出羽桜」「八海山」「獺祭」などの銘柄が、720mlボトルで50ドルから150ドル(日本円で約7000〜21,000円)前後の価格帯で提供されていることが多い。

さらに、“おまかせ”スタイルや懐石レストランなど、日本から直送される新鮮な魚を売りにするような高級店舗では、200ドル(日本円で約28,000円)以上の日本酒が用意されていることも珍しくない。

高級店では数万円もするプレミアム守の姿も。

ここラスベガスでも、日本酒は和食の枠を超え、さまざまジャンルの料理と合わせられるようになり、提供される銘柄も多様化している。食への探求心が旺盛な人たちの間で、日本酒への関心と理解が深まっていることを感じ、日本酒がラスベガスの食シーンに欠かせない存在になりつつあると確信している。

ライター 石川葉子
フリーランスライター/Japanese Sake Adviser (SSI)/WSETLevel1/東京出身/アメリカ・ラスベガス在住。
この地でおいしいお酒に出会ってから日本酒に目覚める。最近は飲むはもちろん、自宅でのSake造りも楽しんでいます。
SNS:Instagram @lvsakegirl note @lvsakegirl

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