本物の味を提供!
ビオワインや日本酒を豊富に揃う[前田豊三郎商店]の取り組みに迫る。
京都の食文化を発信する食品館[京都八百一本館]2階で、ビオワインと日本酒ほかを取り扱う[前田豊三郎商店]。生産者の想いを伝える考えについてインタビューした。
京都烏丸御池駅より徒歩3分。京都の食文化を発信する食品館[京都八百一本館]2階で、ビオワインと日本酒などを取り扱う[前田豊三郎商店]。全国の小さな酒蔵の思いを伝え、お酒に真摯に取り組む姿勢に迫る。
この方に話を聞きました
- 前田豊三郎商店マネージャー常森繁吉さん
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プロフィール日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、SAKE DIPLOMAの資格を持つ。様々なレストランでの経験を経て、ディオニー株式会社にてブランディンググループリーダーを務め、2013年の「前田豊三郎商店」の立ち上げから携わる。いつもにこやかでお酒のことならいくらでも語れるけれど、「実は自分は人見知りで…」という意外な一面も。
INDEX
1 .店名の由来は大正初期の創業者から
経営の母体となる[ディオニー株式会社]は大正初期の1913年に京都市中京区で醤油卸として創業し、現在はビオワインの輸入、地酒・焼酎に特化した卸売会社だ。[前田豊三郎商店]という印象に残る店名は、初代の名前にちなんだものだそう。
―ビオワインも日本酒も豊富に揃っていますね!特に日本酒はどのようなものを扱っておられますか?
常森さん「蔵元さんから直送していただくものが多いです。小さな蔵元さんと交渉してその土地に行かないと飲めない日本酒など、当社だけの特別販売のお酒もちょこちょこあります。ある銘柄などは元々火入れのお酒なんですが、先にお願いして生酒で出荷してもらい、同じお酒を生酒と火入れの両方で楽しめるようにすることもあります」
―日本酒の種類はどれくらいありますか?
「約50蔵、100種類以上のお酒を揃えています。実は定番品は少なくて、季節ものがどんどん売り切れ次第で入れ替わります。来るたびに違うお酒が並んでいるとお客様に喜んでいただければと思っています」
2.生産者の顔を見て買い付けるビオワイン
扱うワインはほとんどがビオワイン。ビオワインとはオーガニックのブドウの使用のみならず、様々なルールに則った製法で作られたものだ。
―こちらのビオワインはお値段も意外なほど手頃に感じるのですが、生産者からの直輸入になるのですか?
常森さん「そうですね、メールだけのやりとりではなくバイヤーが直接現地を訪ね、生産者とちゃんとコミュニケーションをとって、お顔を見て買い付けています。生産者の思いを語れるというのは、ワインでも日本酒でも大事にしています。いいおっちゃんもいれば若い作り手もおり、これから応援していきたいという思いがあります」
―品質の管理にはとても気を配っておられますね!
常森さん「陳列ケースはワインセラーと同じ状態になるような温度設定にしています。さらに地下に大きな冷蔵庫があり、1本1500円のワインからすべて冷蔵管理です。日本酒の生酒も到着したらすぐに冷蔵庫ですね」
3. きちんと語れるようにすべての日本酒を試飲
―日本酒の種類について、なにか傾向はありますか?
常森さん「純米系の日本酒が多いです。ワインがナチュラルばかりだし、日本酒もなるべく土を痛めないように環境に配慮したお米作りから語れる、なんか頑固親父みたいな蔵元さんがいいですね。あまり一般の酒販店で扱えないお酒がある、そんな魅力のある店舗にしていきたいです」
―お酒選びのアドバイスはしていただけますか?
常森さん「ただ並んでいるものを売るのではなく、対面販売を心がけています。お客様がいらしたら『いらっしゃいませ』はもちろんなんですが、もっとアットホームに『こんにちは』から始めようと。まずはお声がけをして、お話をしながら要望を伺うようにしています。そのためにも一つひとつのお酒について語れるよう、スタッフを含めほぼ全種類を試飲しています、なかなか難しいんですけど」
4.常森さんおすすめの日本酒銘柄4本
(右より)耕地、純米吟醸 生原酒、720ml 1980円
山名酒造株式会社(兵庫県丹波市)、アルコール度数16度、精米歩合60%
丹波市氷上町の農家「宮垣農産」が栽培する有機JAS認定の五百万石を使用。草木を思わせる凛とした口中香とふくよかな味わい。
常森さん「弊社とコラボして、特別に無農薬有機米で作っていただきました。山名酒造さんのファンはすごく多くて、みなさんどこで買えるか探しておられますが、当店では常設で置いております」
敷嶋、特別純米 無濾過生原酒、720ml 1916円
伊東株式会社(愛知県半田市)、アルコール度数18度、精米歩合60%
常森さん「江戸時代から続く有名な酒蔵だったのですが、お爺ちゃんの代で廃業してしまい、そのお孫さんが3年ほど前にクラウドファンディングを使って復活をさせました。その返礼品の一本がこのお酒です。愛知の方ではこの敷島が入ると飲食店が満席になるくらい人気があるレアなお酒だそうです。特別にうちの店舗だけで販売の了承を得ることができました。うちの会社のスタッフと社長さんが知人というつながりもあり、応援をしています。
味わいは山田錦の甘さ、丸み、まろやかさがあり、食中酒として楽しんでいただけます。無濾過生原酒の強さがありつつ上品で、海老や蟹料理が恋しくなるようなお酒です」
木村式 奇跡のお酒、純米吟醸、720ml 2035円
菊池酒造株式会社(岡山県倉敷市)、アルコール度数15.5度、精米歩合55%
「奇跡のりんご」で知られる木村式自然栽培で収穫した岡山県の特産米・雄町を使用。
常森さん「雄町米の持つ米の美味しさ、甘みと旨みがじわっと広がります。辛口なんですがちょっと甘みを感じ、口に含んだ時のふわりとした香りがとても魅力的な一本です。美味しい雄町米のお酒を探していたんですが、やっと岡山産で自然栽培のお酒に出合えました」
WAKAZE THE CLASSIC 2nd、純米酒、720ml 3300円
販売者:株式会社WAKAZE(東京都世田谷区三軒茶屋)、製造所:株式会社小嶋総本店(山形県米沢市)、アルコール度数13度、精米歩合90%
常森さん「こちらは『日本酒を世界酒にしよう』というすごいコンセプトを持ったところ。精米90%でほとんど磨いていないのに、こんなにきれいなお酒になるのが不思議です。13%とちょっと低アルコールなのも、最近の傾向にぴったり。味わいは丸みがあり、ほんのり桃のような香りが楽しめて、様々なシーンに合わせていただけます」
5.小さくても良い酒蔵のファンを作りたい
店の隅には4席のバーカウンターが併設され、お猪口でおすすめ日本酒三種の飲み比べができるセットや各種のビオワインをキッシュなどの軽いフードと一緒に味わえる。その時季のおすすめがラインナップされており、お酒選びの参考になりそうだ。
陳列を見回しても大手の有名銘柄はなく、京都を除けば地方の小さくても良いお酒を作っている蔵元の日本酒がほとんど。常森さん自身もなるべく蔵を訪ねて話を聞き、仕込み水を飲ませてもらったり、その土地に行かないとわからない発見も多いという。
「地方のいい蔵元さんを応援したいと思っています。メールのやり取りをする時も、一番最後の文面のところに『御社のファン作りがんばります』っていうのを、いつも入れているんです」
かなりの日本酒好きでも、これまで知らなかった銘柄との出合いがきっとあるはず。頼もしい存在の常森さんとの会話を楽しみながら、お気に入りの一本を見つけてほしい。
ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。
前田豊三郎商店
- 住所
- 京都府京都市中京区三文字町220 京都八百一本館2FGooglemapで開く
- TEL
- 075-223-3567
- 営業時間
- shop10:00~21:00、 bar月〜金曜14:00~20:00、土・日曜、祝日12:00~20:30
- 定休日
- 無休