上げてから冷ます熱燗の極意を、名店[通しあげ そば鶴]三兄妹に聞く!
そば屋でアテと酒を楽しむ、いわゆる“蕎麦前(そばまえ)”。今回は熱燗で一献が楽しめるそばの名店をご紹介。
INDEX
そば屋でアテと酒を楽しむ“蕎麦前”とは
その始まりは江戸時代といわれている。庶民の食べ物として親しまれてきたそば。
当時は注文があってからそばを打っていたので、飲みつつ待ち時間を過ごし、〆にそばを食べるというのが粋な大人の楽しみ方だったんだとか。“蕎麦前”と呼ばれ、通に親しまれる文化になったそう。
酒好きも集う京都・一乗寺の名店
1973年に京都・一乗寺に店を構え、2023年に創業50年を迎えた[通しあげ そば鶴]。著名人もしばしば訪れる名店だ。
先代のご両親から三兄妹が引き継ぎ、そばを目当てにはもちろん、多彩な酒肴と日本酒を楽しみに、家族連れから旅行者まで老若男女で日夜にぎわう。
日本酒はメニュー以外に隠し酒を含めて約50種ほどが揃い、おすすめを聞くとおもしろいお酒に出合えそうだ。
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- 左から石田重人さん、眞咲子さん、英雄さん
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プロフィール仲良く店を切り盛りするのは、そばとお酒担当の長男・重人さん(推し日本酒は杉錦)、料理担当・次男英雄さん(十旭日わんにゃん純米酒)とサービスと手作りプリン担当・妹の眞咲子さん(大號令)
店主さんに聞く燗酒の魅力
普段でも大の日本酒党、なにより燗酒という長男の重人さん。
「料理がすすむのはやっぱり燗酒。お銚子で差しつ差されつの雰囲気が好きなのと、飲んでいて体にやさしい感じがします。割り水をして燗をつけることもあり、それでも味崩れしないお酒がいいですね」
上げてから冷ます熱燗の極意。おすすめ日本酒5選
一般に50℃を熱燗、60℃は飛び切り燗と呼ぶが、[通しあげ そば鶴]の燗酒はそれ以上の熱め。
ぬる燗の場合も熱くしてから冷ます。「いったん温度を上げて、お酒を開かせるんです」と重人さん。ある時、残って燗冷ましになったお酒を飲んでみたら、美味しさが増していたことに驚いた。その体験から研究を重ねて行き着いた手法だ。
■杉錦 特別純米酒 生酛仕込み 1合900円
杉井酒造(静岡県)、アルコール度数15度以上16度未満、精米歩合60%
生酛、山廃仕込みを大切にする酒蔵。滋賀県産山田錦を全量使用し、きょうかい701号酵母で醸した、生酛仕込みによる濃醇な旨味のある純米酒。
重人さん「乳酸感があって、めちゃくちゃやさしい味。やわらかで甘味があり、燗にするとふっくらしてくる。62〜63℃がベスト」
■天穏 無窮天穏 水母(くらげ) そやし水もと純米吟醸 1合1000円
板倉酒造(島根県)、アルコール度数14度、精米歩合60%
水を乳酸醗酵させたそやし水で酒母を作る自然醸造と山陰吟醸を掛け合わせた、難度の高い手法で作られる限定酒。
重人さん「アルコール度数は低めで、揚げ物でも出汁でもなんでも合います。常温もいけるが、燗酒なら65℃以下、お銚子に入れて少し温度が下がったくらいで」
■十旭日 わんにゃん純米酒 1合850円
旭日酒造(島根県)、アルコール度数15度、精米歩合70%
犬のように素直でいろいろな料理と合う酒と、猫のように遊びのある酒をバランスよくブレンド。
重人さん「もともと好きな酒蔵です。うちは猫を飼っていて、売上げの一部が保護猫、保護犬活動に寄付されます」
■独楽蔵 TAHITO 生酛純米酒 1合1000円
株式会社杜の蔵(福岡県)、アルコール度数15度、精米歩合65%
契約栽培で農薬を使わず育てられた山田錦100%使用。2019年醸造の4年熟成。蔵の進む道を照らす「手火(たひ)」にとの思いを込めたネーミング。
重人さん「軽く熟成して色付いている。酸のキレがある辛口の食中酒で、油の多い料理でも酸が切ってくれる。65℃の燗がおすすめ」
■辯天娘 青ラベル 1合700円
太田酒造場(鳥取県)、アルコール度数15度以上16度未満、精米歩合70%
すべての酒を木槽で袋搾りする酒蔵。醸造アルコール無添加で、地元鳥取県若桜町産の酒造好適米を使用している。
重人さん「辯天娘のレギュラー酒です。70℃までがっつり上げて、上げきった後の燗冷ましがバツグンに良かった。どんな食事にも合います」
居酒屋顔負けの肴の数々、締めは自慢のそばを
自慢のそばは、毎朝そば粉を挽いて打ちたて茹でたて。茨城、長野産のそば粉をブレンド、季節によって配合を変える。飲み干したくなる出汁は利尻昆布と4種の節を贅沢に使用。
一品は30種以上あってそば前の範疇に留まらず、先代からの名物の蛸のサラダやお造りなど、居酒屋さながらの充実ぶり。
にしんそば 1500円
京都の定番といえばにしんそば。自家製のにしんの棒煮はほろほろっと柔らか。にしんの甘辛さがかけ出汁に溶け込んだ風味は格別
葱の天ぷら 750円
酒肴では一番人気の名物料理。太めの白ネギの天ぷらで外はサクッ、中からトロッと甘いネギが飛び出す。50年継ぎ足し続けた甘辛い天丼のタレがまた熱燗にぴったり
地どり山椒焼 1700円
そば屋の酒肴の定番。ほどよい歯応えの京地鶏と九条ネギ(冬場)を自家製の山椒醤油で甘辛く仕上げた逸品、これがあればいくらでもお酒が飲める
蕎麦前と熱燗の愉しみに目覚めるかも!
まず感じたのは三兄妹の活気と雰囲気の良さ。そのうえ味は確かで日本酒が充実しているとあれば、通いたくなるのは当たり前。これまで知らなかった熱燗の愉しみに目覚めるきっかけになるかも。できれば予約をおすすめしたい。
なお、2023年12月20日(水)まで年越しそばの予約を受付中!インスタからウェブにリンクしているので、そこから注文を。発送または店舗受け取りが選べる。
Instagram /@sobatsuru
Sakeが飲める・買える店一覧はこちらから
https://sakeworld.jp/place/
通しあげそば鶴
- 住所
- 京都府京都市左京区高野玉岡町74Googlemapで開く
- TEL
- 075-721-2488
- 営業時間
- 11:30〜15:00、17:30〜22:00
土・日曜、祝日11:30〜21:00
- 定休日
- 月曜、第2火曜休(12月29日休)