【今さら聞けない教えて!?シリーズ20】生・生貯蔵・生詰め、様々な「生」について
生・生貯蔵・生詰め、生にも色々あるけれど… あれも生? これも生? 何が違うの? どう違うの? 今回のテーマは、頭に “ 生 ” がつくお酒。
歴史・方法・菌、三話に渡り “ 火入れ ” と呼ばれる加熱処理についてお話いたしました。
しかし、全てのお酒が加熱処理を施されるわけではありません。
生野菜、生魚、生肉…… 世の中で “ 生 ” という言葉がつくものは非加熱のものばかりのように思いますが、日本酒はどうでしょうか。
前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ19】火入れ 其の三 ~火落ち~
この方が解説します

- 杜氏屋主人・プロデューサー中野恵利さん
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プロフィール1995年、大阪・天神橋筋に日本酒バー「Janapese Refined Sake Bar 杜氏屋」を開店。日本酒評論家、セミナー講師、作詞家としてさまざまな分野で活躍。
● 生酒
上槽から出荷までのあいだに、一度も加熱処理をしなかったものを生酒と言います。
火入れと呼ばれる加熱処理は、酵母や酵素などの微生物を死活させるために行う作業です。これを行わないということは、微生物は酒の中で生き続けているということです。瓶詰めされてなお生気を留めた微生物たちは、味蕾の上を跳ね回り、生酒の特徴とも言える新鮮な味わいを演出します。
同一の意味だと誤解されることのある “ 原酒 “ は、上槽後、アルコール度数や香味の調整のために行う割水(水を加える)という作業をしなかったものを言います。
したがって、一度も加熱処理をせず、割水もしていないお酒は、生酒であり原酒であることから “ 生原酒 ” と呼ばれ、加熱処理はしたけれど割水はしていないお酒は “ 原酒 ” と呼ばれます。
● 生貯蔵酒
上槽後、濾過した後に加熱処理をせず貯蔵し、瓶詰め前に加熱処理を行うお酒は、生酒の状態で貯蔵することから “ 生貯蔵酒 ” と言います。
生のまま貯蔵するということは、たとえ短期間であっても生のまま熟成させるということ。個人的な見解ではありますが、これは難易度の高い過程であると考えます。生貯蔵酒の評論に “ 生酒のようなフレッシュ感がある ” という言葉が多く見られますが、それを得るためにどんな貯蔵環境であるべきなのか、豊富な経験と緻密なデータ分析があったことは想像に難くありません。
● 生詰め酒
上槽後、濾過した後に加熱処理をしてタンク貯蔵し、瓶詰め前に加熱処理を行わないお酒は “ 生詰め酒 ” と呼ばれます。
先に挙げた “ 生貯蔵酒 “ と逆のパターンです。
● ひやおろし
ここで、生詰め酒を語るうえで欠くことが出来ない “ ひやおろし “ についてお話しいたします。
“ ひやおろし “ の “ おろし ” は、卸しのことで、商品を卸す、すなわち出荷するということになります。語源として謎がつきまとうのは “ ひや ” の部分です。
“ ひや ” は、瓶詰め前の加熱処理を施さない半分生の状態と捉えることがほとんどですが、 “ ひやおろし ” という言葉が使われるようになった江戸時代の温度に対する概念を考察してみましょう。人為的に温めたもの以外を “ ひや ” と表していたこの時代、 “ ひや ” は常温を意味していました。火入れ(加熱処理)によって温められたお酒が、再び “ ひや ” (常温)になって卸されると理解することが出来ます。
冬から春にかけて仕込まれたお酒に加熱処理を施し、貯蔵(熟成)し、夏を越させ、少しずつ気温が下がり、蔵内の気温と外気温が同じくらいになった秋の日に、加熱処理を行わず瓶詰めし、出荷する、これが本来の “ ひやおろし ” でした。
しかし、いつの間にか蔵内の気温と外気温という部分が薄れ、まだ残暑を見舞い合う時期に “ ひやおろし ” と冠して出荷されることも珍しくなくなりました。それでもやっぱり、 “ ひやおろし ” という言葉に、秋の匂いを感じる方、たくさんいらっしゃるように思います。
加熱処理の方法が瓶燗のみである酒蔵では、濾過後の加熱処理を瓶詰めした状態で行っているため、生詰めという部分が希薄になり、 “ 秋あがり ” と冠していることが多いです。
● 回数とタイミング
生酒、生貯蔵酒、生詰め酒。生にも色々あるけれど、これらは、火入れと呼ばれる加熱処理の回数と、どこでそれを行うかというタイミングが違うということです。
前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ19】火入れ 其の三 ~火落ち~



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