酒蔵に聞く

京都伏見、松山酒造の新たな挑戦!2023年新章、真夏の酒造りに密着

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大正12(1923)年創業。月桂冠株式会社のグループ会社で、2021年から生産を休止するが、2022年にベテランの酒造技能者高垣幸男さんを杜氏に迎え、高品質酒を少量製造するスタイルに転換。新たな日本酒のブランド「 十石じっこく 」を発売。初年度の造りは50石(一升瓶で約5000本)の予定が、たちまち在庫が尽きるほど好評。取材時は真夏の蔵で仕込みの最中。
松山酒造の新たな挑戦!2023年新章、真夏の酒造りに迫る。

1.百年の歴史を刻む老舗蔵、松山酒造の復活

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杜氏・高垣幸男さん
プロフィール
1966年生まれ。松山酒造株式会社製造部長・杜氏。経営学修士。一級酒造技能士。京都大学農学部農芸化学科卒業後、1991年月桂冠株式会社に入社。高級酒作りを担い、全国新酒鑑評会「金賞」を8回受賞。2019年には京都市伝統産業「未来の名匠」に認定される。

「この醸造場なら小回りが利き、京都にこだわった酒を造ることができる」と考え年間約5000石を生産していた明治期建造の酒蔵を一部改装し、ステンレスの麹室や冷却装置付きタンク4基など最新の設備をととのえた。京都産の酒米「祝」や 麹菌、京都市産業技術研究所が開発した「京都酵母」を使い、今年1月から仕込みを始めた。2023年3月にリリースした新ブランド「十石」は「やわらかな口当たりとふくらみのある味わい」でどんな料理にも合う純米吟醸酒に仕上がった。

2.真夏の酒造り/経験と技術を生かしつつ、新しい試みを楽しむ

取材に訪れたのは7月下旬、この日の京都の最高気温は38.8℃を記録した。じっとしていても汗が流れてくるほどの暑さの中、高垣さんはあがったばかりの蒸米を放冷のため手でほぐしていく。もうもうと立ち上る湯気と熱気。手の熱さは、炊きたてのごはんでおにぎりを作るような感じだろうか。生米で200kgという大量の蒸米を二人だけで処理しなければならない、時間との勝負だ。

「夏の仕込みは初めて。寒造りとは途中に違いが出てくるけれど、収束させて最後は同じに仕上げます。もし味の違いがあっても酒屋さんとフェイストゥフェイスで説明できるから、それも話題の一つになる」。販売主任の酒井さんと二人で酒販店を営業に回り、店主と話をする機会ができたのは新鮮な体験だったそう。「ユーザーからダイレクトに意見をもらうのは、これまで30年間なかったこと。とても勉強になりました」。

月桂冠にいた頃は酒造りに専念できたが、ここでは掃除、後片付けも自分でやらなければならない。こんなに仕事が多いとは思わなかったというけれど、苦労と感じるのはそれくらい。蔵の規模が小さくなった分、やりたいことができる。「同じ酵母、同じ米、同じ水を使ってもタンク一本一本が違い、微生物をうまく手なづける必要がある。酒造りはマニュアル化されてきているが、外れた時にどうするか。まだまだ人間の経験とカンに頼る部分があります」。夏の仕込みは高垣さんのデータには入っていないが、それも新しい経験とおもしろく感じているそうだ。

3.京都にこだわった新ブランド、十石(じっこく)

米は京都産「祝」、京都の種もやし(麹菌)、地方独立行政法人京都市産業技術研究所が開発した「京都酵母」、敷地内にある井戸から汲み上げる「伏水」。テロワールを意識してすべて京都産にこだわった純米吟醸酒が『十石』。伏見の河川を行き交った十石舟をイメージし、小さな舟が大海へ漕ぎ出すように、一からのスタートを経てやがて大成していきたいという思いが酒銘に込められている。

十石 純米吟醸 祝 720ml 1815円、1800ml 3650円
京都産米「祝」のやわらかな旨みとほどよい果実香が楽しめる。甘・辛・酸のバランスがとれた飲み飽きしない味わいの食中酒。

4.今後の作りたいお酒

現在「十石」は祝の純米吟醸のみだが、この味が固まってベース作りができたら、シリーズを拡充したり、遊び心のある限定品などを増やしていきたいという。もともと大の日本酒好きで自身もヘビーユーザーという高垣さん。「自分が飲みたい酒を造って、美味しいと飲んでもらえたらうれしいです」。
「十石」は京都では20軒ほどの特約酒販店で販売中。
松山酒造でも直接購入できる(月〜金曜/9:00〜15:00)

松山酒造

松山酒造

創業
1923
代表銘柄
十石
住所
京都市伏見区東堺町472Googlemapで開く
TEL
075-601-2528
HP
https://www.matsuyamasake-kyoto.com/
定休日
日曜日

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