酒蔵に聞く

世界を魅了する熟成古酒
【白木恒助商店「達磨正宗」】
蔵に眠る最古「53年モノ」の日本酒が登場

岐阜市門屋門に酒蔵を構える天保6年創業の老舗酒蔵【合資会社白木恒助商店】 昭和40年代から日本酒の長期熟成に取り組む、古酒のパイオニア的存在だ。今回は七代目蔵元・白木滋里さんに熟成酒の魅力をインタビュー。

  • この記事をシェアする

熟成古酒と言えば必ず名前が挙がる【白木恒助商店】
昭和46年より熟成古酒に取り組むなど、熟成古酒先駆け的存在。
なんと蔵に眠る最古の日本酒、昭和46年「53年モノ」がSake world NFTに登場する。

長良川をさかのぼり、武儀川との合流点の近くに田園に囲まれて蔵がある。
予定の時間より少し早く着くと、七代目蔵元・白木滋里さんと六代目・白木善次さんが温かく迎え入れてくれた。
取材は3月初旬。翌日が甑倒し(こしきだおし)で酒造りが終了するというタイミングの中、気さくに熟成古酒に関して答えていただいた。

この記事の紹介者はこちら

合資会社 白木恒助商店 七代目蔵元・代表社員 白木滋里さん
プロフィール
3姉妹の次女。岐阜大学教育学部を卒業後、お酒が好きだったという事もあり蔵を継ぐことを決意。国税庁醸造試験所や東京農業大学の醸造科学科などで学び、夫で杜氏でもある白木寿さんと二人三脚で古酒に取り組む。趣味は剣道、ラブラドールと遊ぶこと。

まず熟成古酒とは?
【長期熟成酒研究会】が設定している定義で、「3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」とされている。熟成古酒は少なくとも三年以上熟成された清酒ということになる。

1.古酒で勝負する

―昭和46年から熟成古酒に取り組まれていますがきっかけは何ですか?

白木さん「昭和30年代、東京オリンピックでTVが普及し大手企業のCMが流れ出すと徐々に売上が下がり始めたんです。その中で他社との差別化を検討していた時、たまたま蔵の片隅で眠っていたお酒が黄色く色づいていることに気付きました。それが凄く美味しくなっていた!調べてみると日本酒の歴史、文化として鎌倉時代から江戸時代まで古酒があったと分かり、そこから古酒を再現しよう取り組み始めたのがきっかけです」

―古酒を造るのには何年も何十年も時間がかかりますよね?

白木さん「最初は吟醸や甘口の純米のお酒を造っては熟成するという実験の繰り返し。手探りの中で十数年、試行錯誤を重ねながら今に至ります」

―白木恒助商店さんの古酒の特徴は?

白木さん「一番古いお酒は最大53年モノ。基本的に、鎌倉から江戸時代まであった日本酒の古酒を復活させようとしてきた。精米具合や最初に造るお酒の資質で全く変わってくる。熟成方法は常温なのでキレイなお酒は変わらない、しっかりした味わいの濃いお酒はどんどん変わっていく。その違いを楽しめるのが面白いです。」

―そんな中、誕生した達磨正宗というお酒とは?

白木さん「1891年に濃尾地震で蔵が倒壊し、七転び八起きというだるまにあやかって銘柄を付け直しました。」

仕込みに使うのは武儀川の伏流水は軟水。コクがあり口当たりまろやかなのが特徴だ。
またお米は古くから親しまれている「日本晴」を使用し、古酒の旨みを引き立たせている。

熟成しているタンクにはその年の出来事や特徴も表記されている。
10年~20年タンクで、20年以降は一升瓶に詰めコンテナで更に熟成を重ねていく。
一升瓶が並ぶコンテナには約6万本が保管されている。夏は武儀川の伏流水で冷やし温度を下げているのだそう。

壁面にずらりと並ぶビンテージの古酒は圧巻だ。
定番の3年熟成や5年熟成の飲み比べや、赤ちゃんの時に仕込んだお酒を、二十歳になった時に出荷する「未来へ」など時を刻む商品もラインナップしている。

2. 昭和46年「53年モノ」の古酒がSakeWorld NFTで購入できる

―昭和46年「53年モノ」の古酒の特徴は?

白木さん「吟醸酒なんですけど、すごく芯がしっかりしていて美味しいお酒。キレイすぎて面白くないかなぁと思っていたところ封を開けたら意外と面白い味になっていました。甘くてしっかりした味わいになっている」

近年SNSでもアピールしておりYouTubeでは6代目であり滋里さんの父親でもある白木善次さんも発信をしている。

善次さん「やや甘口かなという、ふくよかで心に気持ちを安らげるような香り、味に関してはよくぞよくぞ50年長生きして、これほどしっかりとした資質を保ってきたか!というイメージ。一言でいえばお見事。」と自信がみなぎる。

現在200㎖と500㎖は販売しているが一升瓶としては自社HPとSakeWorld NFTのみ購入できる。
蔵から現れた瓶の姿は今でも脳裏に刻まれている。剥がれたラベルが時を重ねた時代を表す。

白木さん「まろやかで熟した果実の様な味わい、口に入れると舌にまろやかさが広がる、しっかり芯のある熟成古酒に成長しております。蔵にある一番古いお酒の味わいと50年を超える“時”を、じっくり楽しんで頂ければ幸いです。」

商品名/達磨正宗 昭和四十六年醸造酒
酒蔵名または蔵元名/白木恒助商店(三重県伊賀市)
原材料名/米、米こうじ、醸造アルコール
原料米/五百万石
精米歩合/50%
特定名称・分類/吟醸酒
アルコール分/16.4%
価格/1,800ml 55万0000円

蔵で一番古い「53年モノ」の日本酒の価値が今後どうなるのか計り知れない。
想像するだけで夢が膨らむ。

3 .白木さんにとって熟成酒とは

―白木さんにとって熟成酒とは?
白木さん「私自身、昭和46年の年が近いので一緒に育ってきた兄弟のような親しみがあります。近くにあり過ぎて考えたことがないですね(笑)」

―今後の展望などはありますか?

「熟成酒は日本よりも海外に向いていると思う。より多くの海外の方に岐阜に来てもらいたい。古酒を使ったリキュールも考えていて、山椒のリキュールを炭酸水に割って飲むと凄く美味しいんです。SNSもやっているので日本酒の楽しさを発信していきたい。古酒や熟成酒の価値を高めていきたい。そして若い世代の人にも蔵に来てもらいたいですね」

まだまだ熟成古酒の魅力を伝える旅は続きそうだ。

合資会社白木恒助商店

合資会社白木恒助商店

創業
1835年
代表銘柄
達磨正宗 淡墨桜
住所
岐阜県岐阜市門屋門61Googlemapで開く
TEL
058-229-1008
HP
https://www.daruma-masamune.co.jp/
営業時間
9:30~16:30
定休日
日曜、祝日休

特集記事

1 10
FEATURE
Discover Sake

日本酒を探す

注目の記事

Sake World NFT