佐渡金山貯蔵古酒 真野鶴大吟醸BY2019
尾畑酒造 | 新潟県
尾畑酒造株式会社
佐渡島の清らかな水と良質な米、杜氏の技に島の風土ー“四宝和醸”を受け継ぐ「真野鶴」。朱鷺の舞う島の環境保全に想いを込めた酒造りが、この地で育まれている。
1892年、新潟県佐渡島・真野の地に江戸時代から続く銘醸蔵を受け継ぎ創業した[尾畑酒造]は、130年以上にわたり島の恵みを活かした酒造りを続けてきた。
その根本に流れる“四宝和醸(しほうわじょう)”は、「米」「水」「人」という酒造りの三要素に、豊かな土地「佐渡」を加えた4つの宝の調和を意味する。
「日本の縮図」と称される佐渡島は、歴史と自然・文化の多様性に加え、海流の恩恵により夏は涼しく、酒造りの季節である冬も厳しい寒さはなく昼夜の寒暖差も小さいという、理想的な醸造環境に恵まれている。
蔵のある真野町は島内でも水量・水質の高さで知られており、[尾畑酒造]では、仕込み水に地下70メートルから汲み上げた水を使用。島の南北に連なる二つの山脈からの雪解け水は、長い年月をかけて自然にろ過され清冽な軟水となり、「真野鶴」の淡麗でやわらかな酒質を生み出す。
米は、佐渡産の「五百万石」や新潟限定栽培の「越淡麗」、佐渡島の「山田錦」といった、厳選された酒造好適米を用いている。
新潟県内でも有数の稲作地である佐渡島は、国際保護鳥・朱鷺の生息地としての顔も持つ。広大な水田は朱鷺の生存に重要な役割を果たしており、佐渡市では餌となる生物を育む環境を守るため、「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」制度を設けて、農薬や化学肥料を減らした米作りを進めている。
こうした環境保全の取り組みの輪に加わり、[尾畑酒造]も酒造りを通じて自然との調和を追求している。その代表的な例が、佐渡相田ライスファーミングとの提携だ。同ファームでは、水田に引く用水を牡蠣殻に通すことで微生物の力を引き出す「牡蠣殻農法」により、減農薬栽培を実践。この手法で栽培され、「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」の認証を受けた酒米「越淡麗」を100%使用した「真野鶴 純米吟醸 朱鷺と暮らす」を商品化し、環境に配慮した酒造りへの取り組みを形にしている。
2014年、[尾畑酒造]は島の廃校を再生した酒蔵「学校蔵」を開設。2つ目となるこの蔵は、当初リキュール製造からスタートし、2019年に内閣府の清酒特区第一号の認定を受けて日本酒製造蔵となった。以来、「酒造り」「共生」「交流」「学び」の4つを柱に、夏季の酒造りを行いながら、“サステナブル・ブルワリー”として進化を続けている。
特徴的なのは、資源・エネルギー・人の循環を重視した運営だ。原料は生物多様性に配慮した佐渡産の酒米を使用、酒粕や麹といった副産物は施設内のカフェで活用する。エネルギーは太陽光パネルによる再生可能エネルギーを導入。東京大学未来ビジョン研究センターとの共同研究も進行中で、今後はさらにエコシステムを進化させ、ゼロカーボンブルワリーを目指すという。
さらに「学校蔵」では、長期滞在型の「酒造り体験プログラム」や、ワークショップ「学校蔵の特別授業」を開催。国内外からの参加者が集う学びの場として、新たなコミュニティが年々広がりを見せている。
130年の歴史を大切に受け継ぎながらも、環境保全と酒造りの新たな可能性に取り組む[尾畑酒造]。佐渡の未来を見据えた挑戦は、まだ始まったばかりだ。