熟成酒

パソナグループが日本初、古酒専門の共同蔵置場を開設 『古昔の美酒 古酒蔵プロジェクト』の仕掛け人にインタビュー!

株式会社パソナグループが全国10酒蔵と共同で共同蔵置場「日本の古酒蔵」を2023年11月30日に開設。古酒の共同蔵置事業や新たな商品開発、販路開拓支援等を通じて、全国の酒蔵の経営課題を解決し、古酒文化を世界へ発信する『古昔(いにしえ)の美酒 古酒蔵(こしゅくら)プロジェクト』の概要に迫る。

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パソナグループは、淡路島をはじめ東北や京丹後など全国で自治体や地元企業、地域と連携しながら、“人材誘致”により『地方創生』という社会の問題にチャレンジしている。
淡路島では2008年から農業の活性化・独立就農を目指すチャレンジファームを皮切りに、文化、芸術、健康、食、教育など、人が集まる夢のある産業を創っている。

そんなパソナグループが淡路島と同じ兵庫県の加古川市に全国10酒蔵と共同で会社を設立し、共同倉置場「日本の古酒蔵」を開設したというニュースが届いた。近年、古酒や熟成酒を目にする機会が断然に増えている。中でも「古酒自体を盛り上げていく」とその先端を行くのがパソナグループのスタートアップ企業である株式会社匠創生だ。今回、古昔の美酒 古酒蔵プロジェクトの仕掛け人、株式会社匠創生 代表取締役社長 安村亮彦さんに話を聞いた。

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株式会社匠創生 代表取締役社長 安村亮彦さん
プロフィール
1979年 神奈川県生まれ。2005年に株式会社パソナキャレント(現株式会社パソナ)に入社。企業の採用支援やキャリアカウンセリングに従事。
2017年「株式会社匠創生」を設立し代表取締役に就任。

1.~酒蔵の経営課題を解決し、古酒文化を世界へ発信~

―なぜ古酒に注目されているのでしょうか?

安村「2020年に古酒のマーケット創造、古酒文化の継承を目的に長期熟成酒に特化したプレミアムブランド“古昔の美酒(いにしえのびしゅ)”を立ち上げました。同じお酒でも、ウィスキーやワインには「ヴィンテージや熟成」という概念があります。海外では古酒のコンテストも多く開催されており、日本でも同じような可能性があると、確信しています。日本酒や焼酎など日本ならではのお酒の古酒の美味しさや飲み方を確立したいと思っています。」

―そこから今回の共同蔵置場に繋がるまでは?

安村「さまざまな酒蔵さんを訪問する中で、中小酒蔵は慢性的な人手不足に直面しており、少量販売が中心となる古酒の充填や出荷に伴う作業、長期間にわたる保管コストなどの負担から、古酒市場の拡大がなかなか進まない現状にあります。そこでパソナグループは、古酒を保有する全国の酒蔵の経営課題を解決することで、古酒の市場を拡大し、古酒文化の継承に繋げることを目的に、この趣旨に賛同をいただいた10酒蔵と共に新会社を設立しました。」

2.共同蔵置場の概要に迫る

―共同蔵置場の概要について教えてください

安村「まず地域の酒蔵が共同蔵置場を持つというのは昔からありました。今回、日本全国の酒蔵の共同蔵置場、そして古酒専門というのが日本初になります。パソナと同じ兵庫県で加古川の酒蔵、岡田本家さんの蔵の一部を借りて、北は岩手から南は沖縄まで10蔵と共同出資という形で共同蔵置場の運営会社を設立しました。蔵置場では古酒の保管やブレンド調合、瓶詰めにラベル貼り、出荷までの一連の作業を全て行います。新商品の開発も積極的に行っていき、まずは飲んで美味しい、熟成酒を知ってもらう実績を作りたいと考えています」

広々とした蔵は明治や大正時代の面影が残る雰囲気だ。「蔵の屋根や土壁の修繕など全てDIYで取り組んでいます。私も瓶詰めやラベル貼りもしていますよ」と笑顔で話す安村さんの気合も入る。
日本全国43の酒蔵と契約しており、日本酒、焼酎、泡盛など最低10年以上、最長41年の古酒が約60銘柄保管されている。(※2023年11月時点)

▲岩手県/喜久盛酒造の古酒。東日本大震災や自然災害による蔵の崩壊からも奇跡的に免れてきた1997年の古酒。
今は共同蔵置場にて保管されている。

安村「元々は各酒蔵にて瓶詰め、ラベル貼りをしていた商品を、栃木の契約倉庫に納品してもらい保管をしていたが、今は加古川に一点集中しています。匠創生が古酒事業を通じて蓄積してきたノウハウを基に新たな商品開発を行うほか、酒類蔵置場設置許可の取得によりデューティーフリー(免税)での販売も可能となり、フランスやシンガポールをはじめとする海外への販路拡大を図ってまいります。」

※酒類蔵置場設置許可は酒類を保管・瓶詰するために必要な許可で、古酒のみを扱う酒類蔵置場の許可は日本で初めてとなる。ズラリと並ぶタンクは1本200ℓ、輸送タンクは1000ℓ入り、各酒蔵から送られてくる日本酒を各タンクに入れて貯蔵している。
酒蔵からは1000ℓ単位で商品が送られてきており、調合や出荷など日々業務にあたる。4年目の今年は古酒だけで1億円売上があるという。2025年には10倍の規模を目指し、当然海外も視野にいれている。その時には熟成酒市場も大きく広がっているだろう。

3.熟成酒を楽しむ

よくある日本酒のフレーバーホイールによると約半分は新酒、約半分は熟成酒で構成されている。
つまり熟成酒を楽しまないと日本酒の半分を楽しめていないことに。熟成酒の香りの良さに海外市場は気付いてきている。

▲新商品INISHIE 匠シリーズ

―商品の概要を教えてください。

安村「10年~40年もの間から長期熟成た希少なヴィンテージ日本酒です。その贅沢な飲み比べセットを地域別、本数別、シーン別にご用意しています。よく出る価格帯は180ml 3本セットで1万前後や1本5,000円のものが多いですね。新商品の匠シリーズのデザインはより海外の方に目を向けてデザインしています。京都の西陣帯をモチーフにして知的障害のあるアーティストに書いてもらっています。帯やラベルはお祝いの時に飲まれる水引をイメージしており、あわじ結びは淡路島発祥の事業という事で表現しています。」

熟成の香りを持つ「古昔の美酒1997上撰喜久盛」と、バランスの良い甘みを持つ「古昔の美酒2007 山陰東郷」をベースに、蔵を越えた複数銘柄の古酒を独自に配合した3種類のオリジナルブレンド古酒だ。

【INISHIE 匠 龍力ブレンド -Doux-】
~“甘み”をコンセプトにデザインしたブレンド~
数多くのコンクールで金賞を獲得した「2010龍力」をブレンドした”甘み”を活かした設計。まるでデザートワインを思わせる濃醇で深い味わいが楽しめる。

【INISHIE 匠 幻の瀧ブレンド -Acide-】
~“酸味”をコンセプトにデザインしたブレンド~
白ワインのような「2009幻の瀧」をブレンドすることにより、3つのヴィンテージ日本酒が奏でる華やかで繊細な香りとフルーティーで爽やかな味わい。しっかりとした酸味が、料理とのペアリングに寄り添い、新しい日本酒の世界への扉が開かれる。

【INISHIE 匠 梅錦ブレンド -Maturation-】
~“熟成感”をコンセプトにデザインしたブレンド~
熟成感をしっかり感じる「1993梅錦」を加えることで甘みと酸そして旨味、さらに渋みやほのかな苦味もあり、複雑でバランスの良い味わいは唯一無二。熟成香が加わることでより芳醇でより華やかに広がる香りが愉しめる。

内容量:200ml/本
価格:5,000円 (税込)/本
2本セット 9,000円(税込)、3本セット 12,000円(税込)
購入:https://oldvintage.jp/collections/inishie-takumi-vintage-sake-premium-blend

4. 匠創生が目指す未来

安村「熟成期間10年以上の良質な古酒を揃え、一つのブランドで商品展開をしているのは全国的に見ても珍しい取り組みです。私たちは、日本の酒蔵を救うために“日本のお酒の価値そのものを上げていかなければならない”と使命感を持って挑戦しています。日本が誇る日本酒、焼酎、泡盛、梅酒の古酒を日本だけではなく、世界へ広げていくためにも、まだまだ歩みを止めるわけにはいきません。パソナグループは、古酒の製造や流通における課題を解決する日本初となる仕組みを構築し、中小酒蔵の経営を支援すると共に、古酒の生産量と市場の拡大に貢献し、日本が長い歴史の中で育んできた古酒文化の継承に寄与してまいります。」

「ここがゴールじゃない」と安村さん。
熟成酒の先端を進むパソナグループの取り組みはまだまだ始まったばかりだ。

■古酒専門の共同蔵置場「古昔の美酒 古酒蔵プロジェクト」
所在地 兵庫県加古川市野口町良野1021
共同出資 株式会社古酒の舎、岡田本家(兵庫県・盛典)、本田商店(兵庫県・龍力)、稲見酒造(兵庫県・葵鶴)、岩瀬酒造(千葉県・岩の井)、松藤(沖縄県・松藤)、喜久盛酒造(岩手県・喜久盛)、皇国晴酒造(富山県・幻の瀧)、梅錦山川(愛媛県・梅錦)、川尻酒造場(岐阜県・天恩)、会津酒造(福島県・里の泉)
https://oldvintage.jp/

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