五橋 大吟醸原酒
酒井酒造株式会社 | 山口県
酒井酒造株式会社
木造の五連アーチが美しく、日本三名橋の一つとして知られる名勝、錦帯橋(きんたいきょう)。橋は山口県岩国の清流・錦川に架かっている。周辺の山々から湧き出る豊かな水脈が集まる錦川、その三角州に蔵を構えるのが酒井酒造だ。酒井酒造の敷地内には三つの井戸がある。深井戸から汲み上げるのは錦川の伏流軟水。軟水で酒を仕込むと発酵がじわじわとゆるやかに進むと言われ、優良な酵母を育てることや、発酵中の温度管理の徹底などが欠かせない。そしてそれを遂行するには熟練した技術が必要だ。杜氏は山口県の旧大津郡を拠点とする大津杜氏から技を受け継いだ者が務め、蔵人たちもすべて山口県出身者で固めて、その技を守っている。1947(昭和22)年、全国新酒鑑評会で酒井酒造の代表銘柄である「五橋」が全国1位を獲得。当時は硬水仕込みの蔵も多かった日本酒業界へ「超軟水でも良い酒が造れること」を示し、軟水仕込み特有のやわらかな口当たりと香り高い「五橋」の名は全国へ広まった。
酒井酒造の酒造りのこだわりは水だけではない。米は全て山口県産の酒米を使用する。先代の蔵元・酒井佑さんは「酒屋が米知らずではいけない」と1996(平成8)年に近隣の研究熱心な農家と契約栽培を開始。さらに副杜氏の実家が農家だったことから、田んぼを借りて自社でも酒米造りに挑んだ。次第に作付面積が増えてゆき、2017(平成29)年には農業法人「五橋農纏(ごきょうのうてん)」を立ち上げ、現在では5ヘクタールの田んぼでこだわりの米作りを行っている。地元の風土が育んだ水、米、技術(人)を存分に用いて、山口が誇る地酒を醸す蔵である。