[京都/LINNÉ]
革新酒「800 蕎麦」がSake World NFTで販売開始!
日本酒は「米の酒」という固定観念が根強い。しかし、LINNÉ代表・今井翔也さんが手がける「800 蕎麦」は、米ではなく蕎麦麹を用いた革新的な一本だ。伝統的な酒造技術を受け継ぎながらも、素材の可能性を広げ、食文化そのものを新しい視点で再構築する挑戦。その背景と未来への思いを取材した。
酒税法上、日本酒は「米、米麹及び水を原料として発酵させてこしたもの」「米、水及び清酒粕、米麹その他の政令で定める物品を原料とし、発酵させてこしたもの」などと定義されている。そのため、我々は日本酒=米の酒と考えが凝り固まり、その枠から抜け出せていないかもしれない。
今回、Sake World NFTに出品している「800 蕎麦」はこうした固定概念を覆す革新的な酒である。2000年以上も続く稲作を基盤とした日本酒の概念、そして酒造技術を再構築し、未来へつなぐ酒造りを考える今井さんに本商品の魅力を取材した。
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この方に話を聞きました

- LINNÉ代表、醸造家 今井翔也さん
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プロフィール東京大学農学部卒。オイシックス入社後、2015年より新政酒造・桝田酒造店・阿部酒造・聖酒造での酒蔵修行期間と並行して、2016年WAKAZEを共同創業。2024年に独立しLINNÉを創業する。実家は1841年創業の群馬・聖酒造。
食文化の多様性を広げることを理念にする
―LINNÉの取り組みについて教えてください。
今井さん(以下略)「LINNÉは『麹の未知の可能性を解放したい』という想いから、2024年に京都府京都市で創業しました。この名称は博物学者のカール・フォン・リンネに由来しており、多種多様な素材や日本ならではの概念にインスピレーションを受けながら、食文化の多様性を広げることを理念としています」
LINNÉは2012年に新設された「自己商標酒類卸売業免許(他社設備で製造したお酒を自社ブランドとして販売できる)」制度を活用し、固定の蔵を持たない「ファントムブリュワリー」として活動してきた。今回、Sake World NFTに出品される「800 蕎麦」は新潟県の阿部酒造で醸造されたものとなる。
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♯京都♯クラフトサケ
寿命を超えた時間軸で酒を造る
―800について教えてください。
「800(ヤオ)は、既存の日本酒の原料である米麹とは異なる麹を使用して、複数の植物由来原料を組み合わせた『クロスボタニカル』を醸造の軸としています。名称は物事の数が多いことを意味する『八百』に由来しており、『寿命を超えた時間軸のものづくり』の実現を目指しています」
―今回出品される800 蕎麦の特徴は?
「800 蕎麦は、従来の米麹ではなく蕎麦を原料にした蕎麦麹を使用したお酒です。掛米には60%程度まで精米した雄町を使用しており、熟成や燗酒といったシーンにも対応できるスローな酒質を目指しています。今の日本酒やクラフトサケシーンではフレッシュなものが多いですが、世界への流通で製品の温度管理を徹底することになるとどこかで無理が生じてしまう。白ワインのようにゆったりと熟成を楽しみ、冷暗所での常温保管で問題ないキャラクターと、雄町という米の世界観がマッチしていると思い掛米に採用しました」

―製造上の苦労は?
「蕎麦は粒が小さく粘り気があるのですが、この性質は高精米してデンプンが剥き出しになったお米と似ています。そのため、この商品には日本酒の吟醸造りで培ってきた技術が応用されています。蕎麦麹という全く新しい素材ではありますが、このお酒の根底には長年続いてきた米の技術が生きています」
―製麹時の温度管理や時間は?
「素材によっては変化させる必要があるかもしれませんが、蕎麦麹の場合は吟醸造りの技術をそのまま応用していますので、基本的には米と同じです」
―米以外の原料を使う理由は?
「米がなければ酒蔵は廃業するしかないという切迫した状況を支え、一時的にも中長期的にも備えの技術として対応できるようにしたいと考えています。こうした守りの姿勢と同時に、麹を造る技術さえあれば『米のない地域』でもお酒が造れるという攻めの姿勢も持っています。WAKAZE FRANCEで酒を造っている時は、たまたま現地の米があったので米を選択しましたが、今フランスで同じように酒を醸すとなれば蕎麦を原料に選ぶと思います。蕎麦はガレットという郷土料理に代表されるように米よりも身近な存在であり、乾燥にも強いので水のない地域でも酒が造れることになるんです。
これまでの清酒は水墨画の世界に例えられてきました。筆使い、影の濃淡で表現してきましたが、クラフトサケの登場によって酒造りは『色彩』を獲得したんです。しかし、使用している『筆』は同じなので、LINNÉでは筆の数を増やす=麹の数を増やそうと思っているんです。
また、800は宮大工から強いインスピレーションを受けています。宮大工は大工道具のノミとカンナの数がとても多いんです。わたしは醸造家にとっての『麹』は料理人にとっての包丁であり、かつての侍にとっての刀に相当すると考えています。宮大工さんのノミとカンナもそれに相当するのじゃないかと感じ、800のデザインは京都の宮大工さんに描いてもらっているんです」

Sake World NFTで購入できる
―Sake World NFT出品への経緯は?
「早い段階からお話はいただいていたのですが、LINNÉの準備段階であり、まだお酒のラインナップの半分も出来上がっていない状態でした。そこから少しずつ準備を進め、落ち着いてきたタイミングでの出品になります」
―長期低温保存について期待すること
「ワインのように、ゆっくりと熟成で価値をのせる世界観が日本酒にはまだまだ足りていないと感じています。長期間の低温保存という領域、そしてそれを前提にしたマーケットをNFTという新技術を合わせて挑戦している姿勢に共感しています」
未開拓領域に挑戦したい

―今後使用する素材の予定は?
―「日本酒の精米技術が0%まで行き着いたことで、玄米以下の大きさはすでに歴史が経験しています。そのため、蕎麦のように小さい素材に関してはこれまでの技術を応用できる。今後は、芋や栗など米よりも大きな素材を使用した未開拓領域の麹にも挑戦したいですね」
―動物性原料も対象になる?
「なります。乳製品はお酒になっている事例もありますし、ミードの原料の蜂蜜は厳密に言えば昆虫素材です。過去に三軒茶屋でも挑戦したのですが、鰹節などの出汁を使用したお酒もありますね。さらに突き詰めると、『酒』を人間が造った素材と捉え直すと、貴醸酒やアルコール添加といった技術もそういった立ち位置になるのかもしれません」
私たちが当然のように抱く「酒=米」という固定観念。その枠を超え、さまざまな素材を取り込もうとする挑戦は、酒造技術の革新にとどまらず、食文化全体を新しい視点から照らし、未来へと醸していく試みでもある。
長い年月をかけて日本人が磨き続けた日本酒は時代の変化、技術革新とともにその姿を変え続けてきた。その歩みとLINNÉの挑戦が重なり、新たな歴史の1ページを彩ることは、未来へとつながる確かな一歩となるだろう。
ライター:新井勇貴
滋賀県出身・京都市在住
酒の文化と物語を伝えるフリーライター。大学卒業後に京都市内の酒屋へ就職し、食品メーカーでの営業を経て独立。日本の酒を基本テーマに、造り手の想いや一杯の酒の背景にある物語を伝えます。
J.S.A. SAKE DIPLOMA・ワインエキスパート/SSI認定 酒匠・日本酒学講師

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