全国339蔵1149銘柄の銘酒が大阪に集結!「國酒フェア2025」現地レポート
2025年6月14日(土)・15日(日)の2日間、日本酒と本格焼酎・泡盛の魅力を体感できる「國酒フェア」が、大阪・ATCホール(アジア太平洋トレードセンター)にて開催された。 國酒という括りで行われるイベントとしては世界最大級の規模を誇り、大阪・関西万博の開催とも重なった今年は、全国から多くのファンが集い、会場は熱気に包まれた。

2024年、「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、これまで東京と福岡で別々に開催されてきた「日本酒フェア」と「本格焼酎・泡盛フェア」が、初めて合同で開催された。
会場は、「Expo 2025 大阪・関西万博」の開催にあわせ、大阪・ATCホールへと移された。全国各地の日本酒を試飲・購入できるだけでなく、各酒造組合に所属する蔵人との交流や、國酒に関する文化・伝統技術を学べるエリアも設けられ、日本の「國酒(日本酒・本格焼酎・泡盛)」の世界にどっぷり浸かれる2日間となった。
本記事では6月14日(土)に行われた、第二部の日本酒ブースの様子をお伝えする。
339蔵1,149銘柄が集結した 圧巻のブース群
日本酒ブースには全国45都道府県から、339の日本酒蔵が集結。総数1,149銘柄もの日本酒が試飲提供。各県ブースは大勢の来場者の熱気に包まれた。
各県にはそれぞれの特色を表した「見出し」が付けられており、一目でその地域が醸す日本酒の魅力が伝わってくる。
来場者からは「各県の蔵人との会話が弾み、すごく楽しく飲めた」との声も聞かれた。全国各地に点在する日本酒が一堂に会する本イベントの貴重さを感じさせられた。
各地の特色と奥深さが感じられる展示
会場内には各県酒造組合や各種協会など全51ブースがズラッと並ぶ。目当てのブースへ足早に進む方や、入口近くから一つずつ話を聞く方など様々。

▲齊藤酒造株式会社 13代目社長 齊藤 洸さん
「一般社団法人awa酒協会」では、シャンパンと同じ瓶内二次発酵製法によって製造されたスパークリング日本酒が各種提供されていた。
斎藤さんは「弊社は辛口のスパークリングを展開しています。コロナ禍中の3年前位にawa酒をリリースしましたので、まだ市場に広げている段階となっています」と話す。

▲愛媛・石鎚酒造株式会社 製造部 越智萌々星さん
衣装や装飾をピンクで統一し、ひときわ目を引くブースを展開していた「愛媛県酒造組合」。県産オリジナル酵母である「愛媛さくらひめシリーズ」にちなんだものであるとは、石鎚酒造の越智さん。
越智さん「『えひめ香る地酒プロジェクト』は2022年10月にスタートしました。『さくらひめ』から分離された4タイプの花酵母があって、それぞれで香味特徴も異なります。このピンク色のデザインはさくらひめの花びらをイメージしているんです」

▲鳥取・中川酒造株式会社 杜氏見習い 中川雄翔さん
6月の会場内において、燗酒を提供されていたのは鳥取県酒造組合。燗酒といえば、冬場のイメージが強いが、エアコンが良く効いた初夏の室内でも体に染み渡るような旨さを感じた。
中川さん「鳥取は冬は厳しい寒さとなります。また、松葉蟹に代表されるような旨味たっぷりの魚介が豊富に穫れる。そうした食材にも味負けしないコクのあるお酒がたくさん揃っています」

▲滋賀県酒造組合 会長 兼 松瀬酒造 代表取締役 松瀬忠幸さん
毎年10月に県内全酒蔵のブレンド酒をリリースする滋賀県酒造組合。地元関西での開催ということもあり、多くの来場者が詰めかけていた。
松瀬さん「現在、食用米の価格が高騰していることから、厳しい状態に直面しています。買う米が少ない上に、高くなっている。日本酒業界全体が大変な状態になっています」
「GI滋賀」は、滋賀県産の米を使用することが認定条件の一つとなっている。歴史的に優れた米を育んできた地域であっても、近年の原料米価格の高騰や供給不足の影響は避けられない。

▲栃木・株式会社白相酒造 白相友梨さん
栃木県は関東で最も多くの酒米を栽培しており、その他の農産物の生産も盛んな地域。
地元産の原材料にこだわり、いちごやアベリアといった花酵母を使用した日本酒、焼酎を製造する白相酒造の白相さんは、県内の日本酒の特徴について「個性豊かな日本酒が揃っている」と話す。
他にも関西ではあまり出回っていない銘柄も多く、各ブースは来場者と蔵人の会話で常時盛り上がった。全国各地の日本酒を一同に飲み比べられる点は、「日本酒フェア」ならではの魅力だといえるだろう。
日本酒文化の幅を感じられるセミナーも同時開催
各県酒造組合のブースが熱気を帯びる傍ら、特設ブースでは「日本酒セミナー」と「伝統的酒造りミニセミナー」も全8回開催された。
「日本酒の歴史」「ペアリング」「酒蔵ツーリズム」「未来へ向けた取り組み」など内容は多岐。
14日は、「ペアリング」では、大阪府内の日本酒と各種チーズの組み合わせをテーマにした「チーズと日本酒のペアリング」を開催。
「日本酒の歴史」では、兵庫県西宮市にある酒どころ[灘]と、江戸の樽廻船の史料を専門家が紐解いて紹介する「下り酒出発の地 大阪と西宮」が開催。多くの来場者が耳を傾け、日本酒文化の奥深さに触れていた。
日本酒を知る入口の狙いもあり、「初めての日本酒体験コーナー」も展開。日本酒の香味を「フルーティ」「軽快でなめらか」「コクのある」「熟成酒」の4分類に分け、それぞれの違いを確かめられる試飲が提供された。
「酒ハイ」という、日本酒と炭酸水をかけ合わせた飲み方提案も。近年の低アルコール化を意識した爽快感のある飲み方として、飲み手に浸透することが期待してのものだろう。
「日本酒蔵ツーリズム推進協議会」ブースでは、Sake Worldが展開するオリジナルブレンド日本酒づくり体験施設『My Sake World』と酒蔵ブランドオーナーサービス『酒蔵投資』のリーフレットも掲示。日本酒のさらなる可能性を広げ、未来へつなぐための取り組みとして来場者へアピールしていた。
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國酒であり続けるために
「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録を契機に、大阪で初開催された「國酒フェア2025」は、全国の蔵人と来場者が直接交流し、伝統と革新を体感できる場となった。地域の風土に根ざした酒の味わいや、酒蔵が持つストーリーに触れられるだけでなく、日本酒初心者や海外来場者にも配慮された展示も印象的だった。
世界的な低アルコール需要に対しても、炭酸水で割る「酒ハイボール」といった新提案で紹介するなど、日本酒の進化と多様性を実感できる場になったといえるだろう。
一方で、原料米価格の高騰や供給の不安定化も、複数の蔵人から喫緊の課題として語られており、日本酒文化を次世代につなぐためには、今後の取り組みも欠かせない。
時代の需要に応えながら、変化を恐れず歩み続ける日本酒。その奥深さと、持続可能な酒造りへと広がる可能性を示した2日間となった。
ライター:新井勇貴
日本酒学講師・酒匠・SAKE DIPLOMA・ワインエキスパート
お酒好きが高じて大学卒業後は京都市内の酒屋へ就職。その後、食品メーカー営業を経てフリーライターに転身しました。専門ジャンルは伝統料理と酒。記事を通して日本酒の魅力を広められるように精進してまいります。