【愛知県/金銀花酒造】姉妹二人三脚で酒造り!女性目線での日本酒造りの取り組みを聞く!
徳川家康が関が原の戦いの前に参拝したと伝わる、石刀神社の参道に蔵を構える金銀花酒造。創業は享保年間(1730年頃)と古く、長年に渡り地元の人達に愛され続けてきた。現在では姉妹が蔵元と蔵人を担当し、女性の感性を活かした酒造りと商品展開を行っている。
愛知県一宮市にある酒見神社は酒造りの神様を祀る神社であり、一説によると清酒発祥の地とされている。金銀花酒造は一宮市に唯一残る酒蔵として、現在は女性目線を大切にした酒造りを行っている。姉妹二人三脚で進める酒造りの理念、今後の展望について取材した。
この方に話を聞きました
- 金銀花酒造株式会社 佐藤博子さん
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プロフィール主に営業を担当。唎酒師で日本酒学講師でもありイベントも開催している。家族そろって矢沢永吉の熱烈なファンでもある
姉妹二人三脚での酒造りとPR活動
創業は享保年間と300年近い歴史を持つ金銀花酒造。「金銀花」という名称は古くから招福・健康の幸禄として「金、銀、花」と詠われたことに由来。愛知県北部の犬山から流れる木曽川の伏流水から生み出される銘酒は地元の人々からの支持されるだけではなく、地元神社のお神酒、神事にも使用されてきた。
現在、蔵元は姉の佐藤博子さん、蔵人を妹の厚子さんが担当し、姉妹二人三脚での酒造りを行っている。
「私よりも妹の方がしっかりしている部分があるので、色々なアイデアを思いついた時にも慎重に進めてくれています。そういった意味ではいいコンビなのかもしれません」と博子さん。
役割はそれぞれの性格に合わせて自然に分かれ、姉妹の協力により個々の強みが活かされている。この体制が、金銀花酒造ならではの商品展開に繋がっているのだ。
女性目線の酒造り、想いについて
酒造りの現場、営業ともに女性が中心になっていることから、金銀花酒造では「女性に喜んでもらえる日本酒造り」を大切にしている。女性の飲み手を入口にしつつ、全国の日本酒ファン、そして世界へと広がることを目標にしているのだ。
「従来の日本酒業界はどうしても男性が多い傾向にあったと思います。女性でも楽しく飲んでもらえるために、イベントなどを交えながら訴求することを大切にしてきました。近年では若い女性が日本酒を口にする機会も増えています。そのような方にも気軽に飲んでもらえるために、すっきりした大吟醸を中心にラインナップを揃えているんです」と博子さん。
金銀花酒造では日本酒の間口を広げるために、様々なイベント展開を積極的に行っている。蔵では酒米2種類をブレンドし、酵母を加えて実際にお酒を造る「日本酒造り」体験を実施。さらに、美肌効果の高い日本酒を混ぜ込んだ「石鹸作り体験」なども提供している。
また、SNSを通じたトークライブへの参加や、海外へ向けたメタバース展示会への出展などその活動内容は多岐にわたる。
「一概には言えないかもしれませんが、イベント好きな女性って少なくないと思いますので。実際に酒造りを行っているのも女性ですし、楽しみながら飲んでもらえれば嬉しいなという考えが大きいです」
金銀花酒造の看板商品である「上撰」と「大吟醸」を合わせた縁結びセットなど、日本酒の間口を広げる商品展開も積極的に行っているのだ。
アニメキャラクターを使用した海外展開も
金銀花酒造では、女性目線での日本酒PRのために、金銀花酒造の公式キャラクターとなる「Cana」を使用したラベルも展開している。
「コロナ前にアメリカに行く機会がありまして、海外でのアニメイベントの盛り上がりを知りました。日本でもアニメファンは多いですし、新しい目線で認知度向上を目指して取り組んでいます」
「Canaラベル」と「Daiginjoラベル」は現在、海外向けの流通に限定して生産されている。他の銘柄も海外展開されているが、これらのラベルはその斬新さから人気も高いという。
「今後『Daiginjoラベル』は熟成で出していこうかと考えています。特別感を出すため、現在は海外に限定した流通になっていますが、国内でも需要があれば検討していこうと思っています」と今後の計画について明るく話した。
Sake World NFTに登場する日本酒の紹介
現在、SakeWolrdNFTでは以下の銘柄がラインナップしている。
※2024年8月現在
●大吟醸 金銀花
山田錦、酒造好適米を50%まで磨き上げた贅沢な一本。ジューシーな果実を思わせる力強い吟醸香が楽しめる。ふっくらとした旨味はシャープな酸味でスパッと切れるため、どんな料理にもマッチする万能酒として活躍する。白ワインに近いテイストでも楽しめるため、女性にもおすすめ。ベテランソムリエにブラインドテイスティングで選ばれた自慢の逸品だ。
Sake World NFTへの出品を決めた理由について「NFTの活用やマイナス5度での熟成など、新しい取り組みを行っている点が魅力だと思いました。これまで通りの売り方では難しいこともあるかなと感じていたので」と話す博子さん。
熟成酒については、将来的に展開していこうという構想があると続ける。
「まだ試行錯誤しつつという状態ですが、需要のバランスを見ながら少しずつ出していければと思っています。マイナス5度という低温熟成はあまり経験がないので、どのように変化するのか興味深いですね」と今後の可能性に期待を寄せた。
これからの取り組みや展望について
これまで築100年を超える蔵で酒造りを行ってきたが、2022年に耐久性の問題から敷地内の新しい建物に蔵機能を移設。これからは旧蔵が建っていた敷地を活用したイベントを積極的に行おうと考えているという。
「キッチンカーを呼んだイベントなど、地元の方が楽しめるようなお祭りを中心に取り組んでいければと思います。また、これまで日本酒を飲んでいた年代の方が高齢になったり、ご病気になって飲めなくなったりといったことが多くなってきました。たくさんは飲まないといった女性など、新しいファンを生み出すためにも、色々な種類を少量で楽しめる展開などもできればいいかもしれません」
また、日本酒に関わることで日本文化を深く知ってもらうきっかけになれば嬉しいと続ける。
「私自身も日本酒を通して能などの伝統工芸に興味を持ちました。日本酒には日本に古くから続く伝統や文化を伝えていく役割があると思っています。少しでも日本酒に親近感を持ってもらうように、親しみやすいデザインや味わいを通じてアピールできればいいですね」
女性蔵元、蔵人と姉妹二人三脚で生み出される日本酒は、新しい価値と魅力を市場に提供し未来へ繋げていくはずだ。さらなる発展が期待される金銀花酒造の取り組みに注目したい。
ライター :新井勇貴
滋賀県出身/酒匠・唎酒師・焼酎唎酒師・SAKE DIPLOMA・SAKE検定講師
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターに転身。好みの日本酒は米の旨味が味わえるふくよかなタイプ。趣味は飲み歩き、料理、旅行など
金銀花酒造株式会社
- 創業
- 1716年
- 代表銘柄
- 金銀花
- 住所
- 愛知県一宮市今伊勢町馬寄字山之小路19Googlemapで開く
- TEL
- 0586-73-3282
- 営業時間
- 9:00〜18:00
- 定休日
- 不定休