【豆知識】日本酒が仕上げに「割水」をする理由とは? アルコール度数を調整する割水について知りたい!
日本酒の仕上げには、ろ過や火入れのほかに仕込み水を加える割水という工程があります。なぜ水で割る必要があるのでしょうか? 気になる「割水」について唎酒師の藤田えり子さんが解説します。
日本酒は仕上げに水を加える?
日本酒はアルコール発酵したもろみを搾って、できあがりではありません。瓶詰めの前にもまだまだ手間がかかるんです! 一般的な仕上げの工程としては、以前にこのコーナーで取り上げた固形物を取り除く「ろ過」、酵素の働きをとめる「火入れ」を経て、味わいやアルコール度数を調整するために仕込み水を加えています。これが「割水」や「加水調整」といわれる工程です。でも、どうしてせっかくできたお酒に水を加えて薄めてしまう必要があるのでしょう?
割水をしてアルコール度数を調整
ろ過も火入れも割水もしない特別な日本酒もあり、これを無ろ過生原酒といいます。原酒とは割水をしていないお酒を意味し、アルコール度数は18〜20%程度とかなり高め。原酒ならではの濃醇で力強い味わいが魅力ですが、通常の日本酒の場合は飲みやすい度数といわれる15〜16%に加水して調整しています。
「じゃあ最初から、これくらいの度数に合わせて醸造すればいいのでは?」と考えてしまいそうですが、それにはちゃんと理由があります。発酵しているもろみの中では、酵母がブドウ糖を分解してアルコールを作っていきますが、その反応の途中で不快な匂いの元となるアセトアルデヒドが生成されます。このタイミングで発酵をとめてしまうと匂いが残ったままのお酒になってしまうため、しっかりと発酵させる必要があるのです。

日本酒も低アルコール志向に
ですが、近年では発酵技術の革新が進み、アルコール度数12〜14%の原酒造りに挑戦する酒蔵が増えてきました。それには、この頃注目されている低アルコール志向の影響があるようです。
ビールは約5%、ハイボールは約8%、赤ワインの11〜15%や白ワイン9〜14%と比較しても日本酒のアルコール度数は高め。日本酒の味は好きだけどあまり飲めない、ちょっと重たく感じるという人にぴったりなのが低アルコール日本酒です。原酒で12〜14%に仕上げるほか、多めの割水で度数を調整する方法もありますが、軽くても飲みごたえのある味わいが楽しめるものがほとんどです。
自分好みに割水をしてみよう
手に入れた日本酒を飲んでみたらちょっと重たい、またはこの料理には軽めのお酒が合いそうだと感じたら、自分で割水するのもアリです。コツは味をみながら、少しずつ水を加えること。たった数滴の違いで水っぽくなってしまうこともあるので要注意です。焼酎のように前割りして一晩寝かせたり、割水燗にするのもおすすめ。特に原酒は割水をして、自分好みのオリジナルな味を追求するのもおもしろそうですね。

ライター・唎酒師 藤田えり子
大阪の日本酒専門店に世界を広げていただき、さまざまな日本酒や酒蔵に出合う。好きな日本酒は秋鹿、王祿ほか
お酒以外の趣味は鉱物集めとアゲハ蝶飼育。

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