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【今さら聞けない教えて!?シリーズ18】火入れ 其の二 ~方法~

お酒の加熱ってどうやってするの? ひとくちに火入れと言っても、その方法は様々です。 お湯に浸けたり、シャワーを浴びせたり、ヒーターで温めたり…… 今回のテーマは加熱方法です。

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酵母や酵素を失活させることによって、酒質の劣化を防ぎ、香味の安定を図り、長期保存を可能にする火入れという工程。前回はその歴史に触れました。今回は「方法」についてお話しいたします。

前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ17】火入れ 其の一 ~世界に先駆けた日本の低温加熱殺菌~

この方が解説します

杜氏屋主人・プロデューサー中野恵利さん
プロフィール
1995年、大阪・天神橋筋に日本酒バー「Janapese Refined Sake Bar 杜氏屋」を開店。日本酒評論家、セミナー講師、作詞家としてさまざまな分野で活躍。

●蛇管(じゃかん)

江戸時代の火入れ方法と言えば、内側を漆で塗った鉄の釜に酒を入れ、火にかけるというものでした。機械による火入れが行われるようになるのは明治も終わりに近づいた頃です。

明治44年3月10日発行の『醸造協會雑誌』に、“ 本清酒火入機械使用圖 (もとせいしゅひいれしようず)” として紹介されているものが、火入れ機械の初代機と考えられます。

この “ 火入機械 ” は、内部を錫引きした銅製の管が螺旋状なったもので、管に酒を通し、管ごと湯を張った釜の中に沈めることで加熱殺菌する仕組みでした。螺旋に組まれた管が蜷局(とぐろ)を巻いた蛇を思わせることから蛇菅と呼ばれるようになったのです。

蛇管による加熱殺菌は、管の素材を錫引きの銅からステンレスやアルミニウムに変えながら、湯を張る容器を釜、タンク、槽と選びながら、長いあいだ加熱殺菌の通例でした。

こうして加熱された酒はタンクに移され、タンクを冷却することで冷まされていたのですが、後に、加熱処理だけではなく、外側に冷水を通して冷却も出来るよう蛇菅を二重構造にした二重蛇菅(二重管式熱交換機)が登場します。

●瓶燗(びんかん)

濾過後、瓶詰めされたお酒を湯煎するのが瓶燗。商品として出荷する瓶にお酒を詰め、水を張った容器に入れ、水の温度を徐々に上げていき、お酒の温度が65度になるまで温めます。65度に達したお酒は冷水にとり急冷します。お燗を浸けるように湯に沈めるという方法ですが、あらかじめ湯を張るのではなく、水からスタートします。

瓶詰め後に行うことになるため、加熱殺菌は濾過後の1回のみとなり、瓶はプラスチック製通い箱(通称P箱。プラスチック搬送用箱とも言う。日本酒やビールの瓶を収納、運搬するための外装容器) に入れ、P箱ごと湯煎することがほとんどです。

●プレート式熱交換機(プレートヒーター)

伝熱管の代わりにプレートを熱交換エレメントとして使う “ プレート式熱交換機 ” は、 “ プレートヒーター ” とも呼ばれ、フレームと、流体が流れ込まないようにするプレート、流体を折り返すためのプレート、熱交換を行う伝熱プレートで構成され、各プレートの間が流体流路となる、シンプルな構造です。

プレートは、複雑なパターンにプレス成型された薄い金属で、その周囲をラバーガスケットでシールしています。伝熱プレートは、上下を反転させ、交互に重ね合わせて組み込み、この隙間に高温(湯、または蒸気)と低温(酒)の流体を流し、プレートを介して熱交換をさせるという仕組みです。

流体経路となるプレート間は数ミリ程度で、液量あたりの伝熱面積が大きいことから、効率の良い熱交換が実現しました。

●多管式熱交換機

多管式熱交換機は、小口径伝熱管をシェルと呼ばれる外套管に格納した、管状流路式の熱交換機で、複数の管を並列に通すことで均一な加熱を実現しています。特に、スタティックミキサー(駆動部がない、流体の持つエネルギーを利用して混合を行うミキサー)を内蔵したものは、常に攪拌しながら加熱殺菌を行うため、流体に熱を与えすぎることがなく、流路が狭いプレート式と違って濁り酒や甘酒なども詰まることがありません。

●パストライザー

瓶詰め後のお酒に高温水のシャワーを浴びせることで加熱殺菌を行う方法がパストライザーです。加熱後は冷水シャワーで急冷も出来ます。

加熱殺菌の工程も機械化が進んでいます。酵素や酵母の失活という目的は同じでも、その方法は様々です。同じ原理であっても製造メーカーごとにセールスポイントが違ったり、酒質や製造量によって選ぶ機械が違ったりするのは、機械化の常であると言えるでしょう。

前回:【今さら聞けない教えて!?シリーズ17】火入れ 其の一 ~世界に先駆けた日本の低温加熱殺菌~

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