イベントレポート

渋谷の真ん中でこたつ酒!? 菊水酒造「五郎八」が提案する新しい“ゴロゴロ”体験

師走の足音が聞こえ、寒さが肌を刺す12月中旬。若者の熱気と流行が渦巻く東京・渋谷に、突如として「実家」が出現したという噂を耳にした。 会場は平日にもかかわらず、若い人たちであふれていた渋谷モディ。そのど真ん中に、なんと「こたつ」が出現したというのだ。

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酒好きにとっては注目必至な企画の正体は、新潟県新発田市が誇る銘酒・菊水酒造が仕掛けたイベント「ゴロゴロ、ごろはち~こたつ酒場~」。秋冬限定のにごり酒「五郎八(ごろはち)」を、こたつに入ってぬくぬく、さらにお洒落なカクテルスタイルで楽しむという。
Sake Worldではイベントに先駆けて開催されたメディア向け体験会に潜入。「にごり酒×カクテル×こたつ」の魅惑的な体験を一足早く味わった。

カクテルという「入口」

1972年の発売以来、50年以上にわたって愛され続ける[五郎八]。新潟県産の米を100%使用し、その濃厚な味わいと、口の中で踊るような米の粒々感は、冬の到来を告げる風物詩として多くのファンを持つ。

菊水酒造マーケティンググループマネージャーの関根勇人さんによると、「今年は10月15日に出荷が始まりました。まさに今が“本番”の日本酒です」と語った。寒さが増すこの時期こそ、五郎八の真価が発揮される季節。

しかしながら、ただ旬を楽しめるだけでは終わらないのがこたつ酒場。
飲み方も、あえてストレートではなく「カクテル」という入口を用意。それを「こたつでゴロゴロしながら飲む」という最高のシチュエーションで提供している。そこには、「ロングセラーだからこそ、まだ飲んだことのない層にも気軽に楽しんでほしい」という想いが込められていた。

五郎八が「ボス」と呼ばれる理由

カクテルの試飲を前に、会場ではまず五郎八そのものについてのトークセッションが行われた。主役の素性を知ってから味わう一杯は、きっと格別なものになるはずだ。

次に登場したのは、菊水酒造で蔵人をつとめる渡邊啓介さん。五郎八は菊水酒造の季節商品の中でも「ボスのような力強い存在」だと語り始めた。仕込みのスケジュールに入ると、蔵人たちも「ああ、今年もこの季節が来たな」と身が引き締まるという。

五郎八が特筆すべきは、製造工程における徹底したこだわりだ。
通常、日本酒は濾過をしてクリアな状態にするが、にごり酒である五郎八は、もろみをそのまま活かすため濾過を行わない。そのため、異物が混入していないか、品質に問題がないかを確認するのは、すべて「人の目」なのだという。

「大きな容器にもろみを薄く、広く、ゆっくりと流す。その様子を、複数人の蔵人がつきっきりでチェックしています。すべてを目視で確認してから、瓶詰めしていくんです」

五郎八のアルコール度数は21度と、日本酒の中でも度数は高めだ。
それが単なる「強い酒」で終わらないのは、米由来のしっかりとした甘みとコク、そしてほのかな酸味が絶妙なバランスを保っているから。それは、蔵人の執念とも言える手作業と愛情によって守られていたのだ。

「今年も、無事に並んでよかった」と語る渡邊さんの言葉に、並々ならぬ「親心」を感じずにはいられない。

こたつと猫と五郎八と

イベント後半では、スペシャルゲストとして、登録者数100万人を超える「書く人YouTuber」酒村ゆっけ、さんが登場。

チャンネル内でも、豪快かつ幸せそうに酒を飲む姿を配信している彼女。この日は、こたつの雰囲気に合わせ、レトロさ漂う「はんてん」を羽織って現れた。

「私の家にもこたつがあって。猫さんが4匹いるので、一緒に寝転びながらお酒を楽しめたらいいなと思います」

ゆっけ、さんが語る[理想の冬]は、まさにコンセプトそのもの。こたつに入ると「時間がまったりと流れて抜け出せなくなる」という感覚は、多く方が共感できるのでは。

普段から様々なお酒を嗜むゆっけ、さんだが、にごり酒には「お店で料理に合わせて嗜む、特別なもの」という先入観があったという。しかし、今回のイベントでカクテルとして提供された五郎八を飲み、そのイメージは一変したそうだ。

「豆乳や牛乳で割ることで、デザートのように楽しめたのが驚きでした。これなら家でも簡単に作れて、親近感が湧きますね」

また、旅人でもある彼女は、五郎八の180mlアルミ缶にも注目。

「アルミ缶は割れにくいし軽いので、旅のお供にしやすい。今度札幌に行く予定があるので、五郎八といっしょに雪景色を楽しみたいです」

と、旅の相棒としてのポテンシャルにも太鼓判を押した。雪深い北国で、キンと冷えた空気の中で飲む濃厚なにごり酒。想像しただけで喉が鳴る。

意外な相性に驚き。個性豊かな4種のカクテルレビュー

トークセッションの後は、いよいよお待ちかねの試飲タイム。 会場で提供されたのは、以下の4種類のカクテル。

  • 雪うさぎ(牛乳割り):五郎八×牛乳(アイス)
  • 夕日の輝き(オレンジジュース割り):五郎八×オレンジジュース(アイス)
  • 琥珀ラテ(キャラメルラテ割り):五郎八×キャラメルラテ(ホット)
  • 翡翠ラテ(抹茶×牛乳割り):五郎八×抹茶ラテ(ホット)

カクテルを受け取り、こたつに入って早速味わってみた。
まずはホットの「琥珀ラテ」と「翡翠ラテ」。温められた五郎八はアルコール感がふわりと立ち、キャラメルや抹茶の香りと溶け合う。甘みが増し、体の中からポカポカと温まる感覚は、冬ならではの「大人のラテ」だ。

筆者が特に衝撃を受けたのは、「夕日の輝き(オレンジ割り)」。「にごり酒に柑橘?」という疑念が、一口で歓喜へと変わる逸品だ。 オレンジのフレッシュさで五郎八がより飲みやすくなり、さらに五郎八特有の粒々感がまるで果肉のようなアクセントが光る。
「21度あるから割り材に負けない」という蔵人の言葉通り、割ってもなお米の旨みは鮮明。日本酒初心者には飲みやすく、愛好家には「新しい表情」を見せる。飲みやすすぎて“危険”ですらあるが、ぜひ読者のみなさんにも体験してほしい一杯。

“通”な五郎八アレンジ

カクテル以外にも、登壇者の2人が個人的にハマっているという「通な楽しみ方」が紹介された。どれもコンビニで買えるもので試せるため、再現性が高い。

  1. 五郎八×ビール


蔵人・渡邊さんおすすめアレンジ。ビールを合わせることで、炭酸が濃厚な五郎八をシュワッと軽やかにし、キレを生むという。「ビールのアルコール度数は5%前後なので、21度の五郎八を割ることで全体の度数は下がり、飲みやすくなります。でも、五郎八ならではの味や食感はしっかり残るんです」。
実際に試してみると、五郎八のコクがビールの苦味をマイルドにし、リッチな発泡酒のような味わいになった。食中酒としても活躍しそうだ。

  1. 五郎八×バニラアイス


こちらは酒村ゆっけ、さんのおすすめ。バニラアイスに五郎八をかける「アフォガート風」アレンジ。
「アイスの優しい甘さと、五郎八の飲みごたえがマッチして、めちゃくちゃ美味しいんです。アイスは冷たいので、こたつと相性のいいアレンジだと思います」 。 五郎八の持つ米の粒感と麹の甘みがソースとなり、バニラアイスが特別な和スイーツへと進化。アルコールの熱とアイスの冷たさが口の中で溶け合う感覚は、まさに至福。

もっと「自由」に楽しんで

今回のイベントを通じて感じたのは、五郎八というお酒の「懐の深さ」。「にごり酒」「アルコール21度」というスペックだけを見ると、ともすれば「強くて重いお酒」と敬遠してしまう人もいるかもしれない。しかし実際は、その濃厚さと度数の高さゆえに、ジュースや牛乳、ビールといった割り材とも対等に渡り合い、新しい味を生み出すことができる。

「こたつ酒場」イベントは3日間限定だったが、疑似体験なら自宅で誰でも再現できる。 スーパーやコンビニで五郎八を見かけたら、ぜひオレンジジュースやアイスと一緒にカゴに入れてみてほしい。そして暖かい部屋で、自分だけの「ゴロゴロ、ごろはち」を楽しんでみてはいかがだろうか。

なお、菊水酒造では現在「#ゴロゴロごろはち」キャンペーンを実施中とのこと。ハッシュタグをつけて投稿すると、特製の「ごろはち抱きまくら」が当たるチャンスがある(2026年1月11日まで) 。

https://kikusui-sake.com/home/jp/lp/gorogorogorohachi/cp/

五郎八を飲んで、抱き枕を手に入れて、さらにゴロゴロする。そんな冬の過ごし方、控えめに言っても最高ではなかろうか。

ライター:仲奈々
関東在住のフリーライター。出張のときは、地元民が訪れる居酒屋で地元の方のお話を聞きながら、地酒を飲むのがマイルール。X:@nanapan0728

菊水酒造

創業
1881年
住所
新潟県新発田市島潟750Googlemapで開く
HP
https://kikusui-sake.com/home/jp/

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