イベントレポート

[ザ・リッツ・カールトン 京都]鮨 水暉×「田酒」
旨味を引き立てるペアリングを体感!

[ザ・リッツ・カールトン 京都/鮨 水暉]×「田酒/西田酒造店]によるペアリングディナーが2024年10月11日に開催された。全国の日本酒ファンから注目を集める青森の銘酒と鮨を中心にした一夜限りの特別な会の様子をレポートする。

田酒 アイキャッチ
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2024年2月7日に開業10周年を迎えた[ザ・リッツ・カールトン 京都]では、周年を記念した様々なイベントや企画を開催している。
今年に入り、[鮨 水暉]では全国各地の日本酒に合わせたペアリングディナーを3度実施しており、京都市内外から足を運ぶ参加者で賑わう。「日本酒×和食」という伝統的な組み合わせだが、ザ・リッツ・カールトンならではの空間とホスピタリティ、そしてワイングラスの提供などを通して日本酒に新たな価値を与えているのだ。

青森の銘酒[田酒]と[ザ・リッツ・カールトン 京都]の共演

(株)西田酒造店 取締役社長 西田司▲西田酒造店 取締役社長 西田司氏

[西田酒造店]は1878年(明治11年)、青森県青森市油川にて創業。2024年現在、青森県には14の酒蔵が存在する中、青森市内に残る酒蔵は西田酒造店のみとなっている。
近年、多くの日本酒ファンから注目を集めている人気銘柄「田酒」は1974年(昭和49年)にリリースされた。田酒とは「田んぼのお酒」を意味しており、その名の通り田んぼ由来の原料を一切使用しないというこだわりを持つ。米本来の旨味を重視した酒質であるため、料理との相性が非常に優れている。田酒と料理を組み合わせることで、それぞれの魅力を引き出した相乗効果を生み出すのだ。

田酒 酒瓶

旨味を大切にした「田酒」に対して[ザ・リッツ・カールトン 京都/鮨 水暉]は、日本酒ペアリングディナーにおいて初となる「鮨」を中心にした献立を用意。会席シェフの林氏がiPadで手書きしたという魚介類や秋の味覚などの挿絵からも、田酒の魅力を料理で引き立てようという気合を感じる。

メニュー

鮨は目の前で握り、そのまま提供されるため臨場感抜群だ。

鮨カウンター

▲当日の献立を考案した「鮨 水暉」料理長 合田 共宏氏

旬の素材を使い、昔ながらの「仕事」を施して作る伝統を重んじながら、現代の人々の味覚や趣向にあった鮨をご提供するよう心がけている。

▲イベント当日の献立

酒、料理の魅力を引き出すペアリングディナー

・乾杯酒 田酒 Micro bubble田酒 Micro bubble

ウェルカムドリンクと乾杯酒として提供された「田酒 Micro bubble」。クエン酸を生み出す白麹を使うことで、爽やかな酸味とフルーティーな香りを表現している。スパークリングの舌触りと相まって、軽やかに楽しめる一杯だ。

・酒肴:バチコ天ぷら 甘海老と白海老塩辛甘海老と白海老塩辛 バチコ天ぷら

献立はなまこの卵巣を干したバチコの天ぷらと塩辛からスタート。しっかりした味付けの料理と「田酒 Micro bubble」の軽やかさがマッチする。

・逸品:毛蟹の酢の物 キャビア毛蟹の酢の物 キャビア

毛蟹の酢の物の上へ、宮崎県産のキャビアを乗せた逸品。通常のキャビアよりも塩味を控えめにし、昆布の旨味を加えることで和食に寄り添った仕上がりになっている。

田酒 特別純米

合わせる銘柄は青森県産の酒米である華吹雪を55%精米した「田酒 特別純米」。純米吟醸クラスのスペックであるが、あえて香りを抑え、料理の邪魔をしない酒質を目指したことから特別純米を名乗っている。
お米由来の旨味が上品に広がった後、爽やかな酸味でスパッと切れる。キャビアの濃厚な味わい、蟹身と味噌の風味に抜群にマッチする。

・鮨:剣先イカ、白甘鯛、新サンマ剣先イカ

最初の鮨はイカと白身魚の3貫から。1貫ずつ目の前のカウンターから握りたてを提供してもらえる。

田酒 純米大吟醸二割三分

合わせる銘柄は兵庫県特A地区の山田錦を贅沢に磨いた「田酒 純米大吟醸二割三分」。
西田酒造店のフラッグシップとなる1本だ。
23%精米ということで軽やかな味わいを予想したが、1年間氷温熟成させているため優しく味が乗っている。鮨のネタ、シャリの旨味と同調することで1+1が2以上になる体験ができた。この味わいは刺し身ではなく、シャリがある鮨と合わせたからこそ生まれたのだと感じる。日本酒と白米、そして海の幸の調和だった。

・逸品:鰹 海苔醤油 ガーリックチップ 針野菜 辛子鰹 海苔醤油 ガーリックチップ 針野菜 辛子

鰹に海苔醤油、香味野菜、ガーリックチップと辛子を添えた一皿。秋のシーズンは「戻りがつお」と呼ばれ、脂が乗った濃厚な味わいが特徴となる。

田酒 秋田酒こまち

合わせる銘柄は「田酒 純米吟醸 秋田酒こまち」。秋田県産の酒米を50%まで磨いた一本だ。通常であれば純米大吟醸を名乗れるスペックであるが、[西田酒造店]において純米大吟醸は40%台まで磨いたものしか名乗らない決まりがあるという。
「50%という精米歩合はお米の美味しさが一番綺麗に出ると思っています。55%、60%ではお米の味が強く出る一方、綺麗さという点では少し難しくなる。50%は両方のバランスが優れた精米歩合なんです」と西田さんは説明する。
ふくよかさと上品さを兼ね備えており、料理と合わせても単体としても楽しめる優れた味わいだ。

・鮨:赤身、トロ、とろたく赤身

献立が進むにつれて、徐々に料理も味わい深くなってくる。赤身、トロ、とろたくと鮨の人気3種が提供される。

田酒 山廃純米 古城錦

料理に合わせて日本酒もボディのしっかりとした造りへ移り変わる。「田酒」が今年迎えた50周年を祝う「田酒 山廃純米 古城錦 〜田酒50周年記念酒〜」が注がれた。
古城錦は青森県初の県産米であり、かつては五百万石に匹敵する品質として期待を集めた。その後徐々に栽培数を減らしていったが、1991年(平成3年)に[西田酒造店]の手によって復活を遂げ現在に至る。「田酒」の50周年を祝うにふさわしい酒米といえるだろう。
白神山地から採取された乳酸菌を添加することで、山廃でありながらも軽やかな口当たりを表現。一方で、後味には山廃らしい力強い酸味、コクが感じられる。鮨の脂身が持つ旨味を膨らませながらも、シャープに流してくれる素晴らしい味覚体験となった。

・鮨:車海老、のど黒、鯖松前鯖松前

海老の中でも旨味の強い車海老、脂の乗ったのど黒、鯖松前と続く。お酒は「田酒 山廃純米 古城錦~50周年記念酒~」が人肌程度に優しく温められて提供された。

田酒 山廃純米吟醸

こちらは「田酒 山廃純米吟醸」50周年記念酒同様、白神山地の乳酸菌を添加して醸造されている。通常の山廃造りは空気中に浮遊する天然の乳酸菌を獲得するなど、多様な微生物の働きによって複雑な味わいが生まれることに対し、西田さんは「乳酸菌を添加することで、自然かつ綺麗な乳酸を表現できる」と説明する。
比較的濃い味わいになる山廃造りに対して苦手意識を持っている人に飲んでほしい一本だと感じた。田酒らしい米の旨味、軽やかだがしっかりした酸がどんな料理にも寄り添ってくれるだろう。

・逸品:クエと松茸の温物クエと松茸の温物

幻の魚とも称されるクエと、秋を代表する食材松茸を合わせた温物。合わせるお酒は「善知鳥(うとう) 大吟醸  山田錦40」だ。

善知鳥▲善知鳥 大吟醸(写真左)

西田酒造店では純米にこだわる「田酒」に対して、吟醸酒クラスの「喜久泉(きくいずみ)」がある。「田酒」のリリース以前から地元で愛される銘柄であり、その中でも特別優れた大吟醸酒だけに「善知鳥」の名が付けられる。
「醸造アルコール添加にも良い面があるため、全量純米に振り切った造りはしていません。長年地元で流通してきた『喜久泉』に対して、より優れた大吟醸を訴求するために『善知鳥』ブランドを展開しているんです」と西田さん。
大吟醸は華やかな香りを表現しやすい上に、出来上がったお酒の味わいにキレを与える。軽快さと華やかさを兼ね備えた香味はどんな料理にもマッチするだろう。

・デザート:季節のフルーツ季節のフルーツ

素材の良さをそのまま味わう秋の果実に合わせる銘柄は「田酒 貴醸酒」だ。

田酒 貴醸酒

貴醸酒とは三段仕込みの最後、仕込み水ではなく日本酒を使用して醸されたお酒を指す。出来上がったお酒に糖分が残るため、甘みが強く残る点が特徴である。
濃厚なデザート酒とジューシーな果実の味わいは、ここまでの献立を〆る存在としてこれ以上ないものとなった。

日本酒と和食の可能性を感じる至福の時間

田酒ボトル

周囲の方と会話を交わす中で、「田酒だから参加した」といった意見があった。「ザ・リッツ・カールトン 京都」という京都の中心でありながらも、本州最北端である青森県の酒蔵へ注目が集まっている。
同時に「日本酒と鮨のペアリング」に注目して参加した方もおり、今回のイベント全体に対する事前の期待感も感じられた。
「田酒」と和食、そして鮨の組み合わせは想像していた以上で、お互いが響き合う深い味わいを生み出していた。
[ザ・リッツ・カールトン 京都] という洗練された空間で提供される日本酒ペアリングコースは、これからも多くの人々に忘れられない美食体験をもたらすだろう。今後の取り組みにも引き続き注目、期待したい。

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ライター :新井勇貴
滋賀県出身・京都市在住/酒匠・唎酒師・焼酎唎酒師・SAKE DIPLOMA・SAKE検定講師
お酒好きが高じて大学卒業後は京都市内の酒屋へ就職。その後、食品メーカー営業を経てフリーライターに転身しました。専門ジャンルは伝統料理と酒。記事を通して日本酒の魅力を広められるように精進してまいります。

 

株式会社 西田酒造店

株式会社 西田酒造店

創業
1878年
代表銘柄
田酒
住所
青森県青森市油川大浜46Googlemapで開く
TEL
017-788-0007
HP
http://www.densyu.co.jp/
営業時間
8:00~17:00
定休日
土日
ザ・リッツ・カールトン京都 

ザ・リッツ・カールトン京都 

住所
京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔​Googlemapで開く
TEL
075-746-5522 (レストラン予約)
HP
https://www.ritzcarlton.com/ja/hotels/ukyrz-the-ritz-carlton-kyoto/overview/
営業時間
11:30~14:00 17:00~20:00
定休日
不定休

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