酒蔵に聞く

【鳥取県/諏訪酒造】日本酒が持つ「旨味」と「熟成酒」の魅力を取締役COO東田雅彦さんに聞く

日本酒最大の特徴とも言える「旨味」を大切にした酒造りを行う[諏訪酒造(鳥取県智頭町)]。業界でも早いタイミングで全量純米酒に切り替え、同時に熟成酒に対する取り組みを推進してきた酒蔵だ。本記事では[諏訪酒造]取締役COO東田雅彦さんに日本酒が持つ「旨味」の魅力、そして熟成酒の可能性について聞いた。

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江戸時代、参勤交代で江戸へと向かう鳥取藩の最初の止宿でもある智頭宿。
”杉のまち”でもあり杉玉が民家の軒先に飾られていることにも注目だ。
今回は智頭宿に佇む江戸末期から続く鳥取県の酒蔵「諏訪酒造」に話を聞いた。

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諏訪酒造株式会社 取締役COO 東田雅彦さん
プロフィール
1959年千葉県生まれ。東北大学大学院理学研究科生物学専攻、博士前期課程終了後に出光興産(株)にて研究所勤務。1996年10月に諏訪酒造へ入社、2002年に取締役社長に就任する。

1.日本酒の「旨味」を追求する酒造り

「ワインやビールといった醸造酒がある中で、日本酒にしかできないことは何かと考えた時、『旨味』が一番の特徴だと思いました」と東田さんは話す。

「約20年前から、旨味を活かすために力強く味わいのある酒造りをスタートさせました。そして、そういったタイプのお酒が一番美味しく飲めるのは『お燗』なんですよ」。

現在は冷酒も一般的である日本酒だが、古くはお燗での飲用が当たり前だった。炊きたてのご飯が美味しいことを考えると、米のお酒である日本酒も温めると美味しいことはごく自然な話しだろう。

―「純米酒」と「熟成」へ舵を切ったきっかけ

「旨味やお燗を前提にした結果、純米酒というスペックに向いていったんです。全量純米造りについては[神亀酒造]との付き合いが深かったことの影響もあります」。

[神亀酒造(埼玉県蓮田市)]は業界でもいち早く全量純米造りに切り替えた酒蔵であり、[諏訪酒造]に対しては蔵の設備など細やかな指導を行ったという。そして、旨味を追求する過程で「熟成酒」も重要視された。

「旨味、お燗を追求するからこそ純米酒、熟成酒へという当たり前の流れですね。今では通常品として販売している銘柄でも3年程度熟成させているものになります」と東田さん。

日本酒は熟成を経ると円熟味が増し、奥の深い味わいへと変化する。

「飲んだ時、少しきつく感じられるお酒でも寝かしておくうちに良くなっていく場合もあります。そのあたりの兼ね合いも難しいのですが、ボディーの太いしっかりしたお酒を造れば美味しい熟成酒になると考えています」。

2. Sake World NFTに登場するお酒

Sake World NFTには5銘柄がラインアップしている。
※2024年3月現在


・諏訪泉 鵬 純米大吟醸 鵬 gold Vintage2013(右)
酒米の王様とも称される山田錦を全量使用。純米大吟醸「鵬」は漫画『夏子の酒』に登場し、JALのファーストクラスのお酒と して選ばれたこともある諏訪泉の最高峰。芳醇で風格のある味わいは、長い時を経て熟成味を増している。将来の成人式のお祝いといった、節目の日に向けキープするのもおすすめ。
・純米大吟醸 鵬 platinum Vintage2015(左)
純米大吟醸酒を冷暗所にて保存。使用される原料米は徳島県阿波町産の山田錦の中から最高品質を選別。JA職員と蔵元が自ら田んぼに足を運んで、選抜、指定されるというこだわり。特上の山田錦を40%まで磨き、すべての工程に細心の注意を払って醸造される芸術品ともいうべき銘酒だ。


・純米吟醸 阿波山田錦vintage2009 原酒
徳島県阿波町産山田錦を100%使用して精米歩合60%で醸造後、タンクで熟成させた商品。ビンテージは米の採れた年を表示している。口当たりやさしく、円熟の味わい。

・諏訪泉 純米古酒 時の旅 Vintage1989(左)
・諏訪泉 純米古酒 時の旅 Vintage1998(中央)
・諏訪泉 純米古酒 時の旅 Vintage2002(右)

「時の旅」は約20〜30年以上にわたって蔵で常温熟成させた純米古酒のシリーズ。琥珀に色づいたこれほどの長期熟成酒はなかなか市場に出回ることはない。中でもVintage1989は級別制度時代の純米酒。アルコール添加が主流だった時代の純米酒というだけでも貴重な1本。現在の特定名称が導入される以前ということで、今後より一層注目を集める可能性が高い銘柄だ。

3. NFTを通じて日本酒業界をPRできれば

「今回、Sake World NFTへ一番求めることはPRですね。どうしても単独では難しいことがあるが、業界全体としてPRすることにつながれば嬉しい。日本酒全体としては年々生産量が落ち続けているので、熟成酒も含めて日本酒全体が活性化すればと思います」。

熟成期間中は造ったお酒を現金化できない。そのため、蔵にとっては保管期間のキャッシュをどう工面するかが課題となる。

「今はどこの蔵も大変な状況だと思う。そういった現実も合わせて発信できればいいですね」。

4. 海外市場の発展、お燗酒を普及させる

「海外で熟成酒の評価は昔から非常に高いんです。以前、日本では1本も売れていない35年ものの古酒を海外のバイヤーが2本も買っていきました。現地のレストランでかなりの値段を付けて提供するそうです。それで売れる、問題ないんです。今は海外向けの販売が増えてきたので今後に期待しています」。

世界的には日本酒、中でも熟成酒の価格は非常に安くお買い得に感じられるという。一方でまだまだ課題も存在すると東田さんは話す。

「フランスのバイヤーを通じて日本酒を販売したのですが、現地の販売員がお燗はまだ海外では早いと判断してしまったようです。冷酒から普及させていく意図があるのかもしれませんが、いろいろな温度帯で楽しんでもらいたいなとは思います」。

旨味はそのまま英語でも「Umami」と通じる。お燗の温度、熟成期間などに応じて様々な表情を見せる日本酒の味わい深さが世界中の人々に知られる日は近いはずだ。[諏訪泉]が醸す力強い日本酒、熟成酒の動向に今後も注目したい。

 

ライター 新井勇貴
滋賀県出身/唎酒師・SAKE DIPLOMA
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターに転身。好みの日本酒は米の旨味が味わえるふくよかなタイプ。趣味は飲み歩き、料理、旅行など

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https://sakeworld.jp/special/

諏訪酒造

諏訪酒造

創業
1859年(安政6年)
代表銘柄
諏訪泉 満天星、鵬
住所
鳥取県八頭郡智頭町大字智頭451Googlemapで開く
TEL
0858-75-0618
HP
https://suwaizumi.jp/
営業時間
10:00〜17:00(10月〜3月は16:30まで)
定休日
年末年始

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