四万十の風土を醸す新生[fumimoto brewery]高知/文本酒造の復興ストーリー
1903年創業の文本酒造(高知県高岡郡四万十町)が第三次事業承継によって、2022年に「fumimoto brewery」として生まれ変わり再出発。120年という月日で老朽化した酒蔵を一新し、「万歳酒の探求(究極の乾杯酒)」をコンセプトに、四万十町の魅力を凝縮した純米酒の醸造。一方では地域と連携した観光事業にも取り組んでいる。
日本最後の清流「四万十川」が流れる自然豊かな「四万十町」には、小さな酒蔵ながら地元の人たちに愛されていた老舗酒蔵「文本酒造」があった。2020年には一度、老朽化やコロナ禍の影響で休止したものの、親族や従業員以外へ事業を引き継ぐ「第三者承継」によって、2022年「fumimoto brewery」としての復興を果たす。
「地域の伝統文化を絶やしたくない」という地元の人たちの想いを受け継いで、酒蔵の復興に取り組んだ岡山代表と石川杜氏に、今回インタビューを実施。
事業承継を利用した背景や新たな酒造り、今後見据えるビジョンなど興味深い話を聞いた。
この方に話を聞きました

- fumimoto brewery杜氏 石川博之さん
-
プロフィール1997年から茨城にある酒蔵にて南部杜氏のもと、酒造りを始めて2009年に杜氏となる。好きな一本は辛過ぎず飲み心地のキレが良く、香りの派手さが抑えられた「SHIMANTO SILVER 火入れ」。
地域唯一の酒蔵を守る
高知県四万十町にある小さな酒蔵として、1903年に創業されたのが文本酒造。
四万十にはかつて近隣地域も含め複数の酒蔵があったが時代経過と共に減少。文本酒造も設備の老朽化や人材不足、そしてコロナ禍の影響で日本酒消費量の衰退を受け、2020年には酒造りを休止せざるを得ない事態となった。

伝統ある酒蔵の灯を消さないため、異業種から名乗りを上げたのが、岡山代表と石川杜氏。この2人が四万十町で出会ったことを機に発起人となった。地域性を絡めた魅力発信と、職人の技を融合させて酒蔵復興に取り組み、「fumimoto brewery」へと繋げた。
酒蔵再生を軌道に乗せた「3年間の土台作り」
まず事業承継に至った背景までを聞いた。
岡山さん「四万十町とは元々PR事業で関係値があり、とある日に岩本寺の住職から『地域唯一の酒蔵を残したい』と相談を受けたのがきっかけです。『地元の文化を絶やしたくない』という住民の想いに共感し、日本酒を通じて四万十町から世界へ挑戦できる可能性があると見込んで、2022年に事業承継をしました。
ただ、私が業界未経験での承継だったため、復興は苦難の連続でした。真っ先に直面した課題は杜氏の不在でしたので各方面で探し求めた末、現在の[四万十]シリーズを手掛ける石川杜氏と出会い、醸造体制を整えることができました。」

声が掛かったタイミングでは、新たな酒蔵先を探していたという石川杜氏。
石川さん「私は茨城県の酒蔵で25年以上、酒造りに携わってきました。その最中で新たな地での酒造りも視野に入れるようになり、様々な紹介先があった中で新たな挑戦の場として選んだのが四万十町の『fumimoto brewery』でした。
決め手は『新規酒蔵の立ち上げに近い稀有な環境への興味』と、『四万十町の人情味あふれる温かな地域性』です。実際に町を訪れ、住民との交流を通じて『この町なら楽しく暮らせる』と確信し、移住と就任を決意しました。」

『fumimoto brewery』の醸造責任者を務める石川杜氏
就任直後、まず直面したのが代表銘柄の確立。
初年度の酒造りは岡山代表と石川杜氏の感性を擦り合わせ、「お米の旨味を活かした、飲み飽きしない優しい純米酒」を共通のゴールとして据えたそうだ。ここで、「fumimoto brewery」としての醸造のこだわりを尋ねてみた。

石川さん「基本姿勢として『蔵の清らかさが品質に直結する』という信念のもと、徹底した清潔な環境づくりを心がけています。そのうえで四万十町の価値を表現するため、地元のブランド食用米である『仁井田米』を原料に採用しました。
そのほか、四万十川の伏流水や高知酵母を用いることで『地域に根ざした酒造り』を徹底しました。そして完成形である、『派手過ぎない香りと食事に寄り添う飲み飽きしない味わい』を体現するため、造りは全て[純米酒]に統一しております。」
強い想いとこだわりを凝縮し、完成したのが「SHIMANTO」である。

SHIMANTO BLACK
発売当初は、販促面で苦難があったという。
石川さん「新規参入ゆえに、承継当初の2年間は強みをなかなか打ち出せず、国内でも珍しいスパウトパウチを容器に採用して話題性を見出すなど試行錯誤するものの、苦戦を強いられました。
3年目を迎えた現在、代表銘柄としてそれぞれに個性のある8種類のラインナップが出揃いました。また、市場の声を取り入れた人気商品の明確化と製造ラインの安定により、自信を持って国内外へ売り出せる盤石な土台が整いました」
日本酒をもっと自由に、地域と繋がる新たな拠点へ
着実にリブランディングが進行している文本酒造。
反面、日本酒の現状課題については、「難しい飲み物」「詳しく無いと楽しめないのでは」などのマイナスイメージが多いことを懸念しているそうで、それを払拭するために取り組まれている施策について尋ねてみた。
岡山さん「正直もっとシンプルかつ、自由に日本酒を楽しんで良いと思っています。『日本酒は難しい』というイメージを払拭してもらうため、私たちは蔵内の一部スペースを改装し、カフェ感覚で立ち寄れる『ペアリングBar』を併設しております。地産地消の料理から、スイーツにノンアルコールと様々なメニュー展開をしており、お酒が飲めない人でも四万十町の魅力が体感できる場を創出しています。

日本酒ペアリングBAR「お酒やさん」

続いて「これまでのPR活動で繋がったご縁を事業承継後も活かし、岩本寺での宿坊体験と酒蔵見学を組み合わせた滞在型の観光企画にも取り組んでおります。こういった地域との連携も事業再生の大きな柱となっています」と岡山さんは話してくれた。

滞在型観光企画で蔵人体験を行う海外観光客
最後に今後の展望について岡山代表と石川杜氏に尋ねてみた。
岡山さん「『fumimoto brewery』を、地域ブランドとして定着させたいですね。観光集客という部分では、現状限定的な効果かもしれませんが、共に町全体の魅力を磨き続け、この空間を目指して足を運んでもらえるような場所にしたいです」
石川さん「私は座右の銘として『臨機応変』という言葉があります。自然を相手にするお酒造りは常に変化の連続ですが柔軟に受け入れ、創意工夫を凝らす奥深さがあります。30年経った今でも、毎日が新しい発見に満ちています。そして人との繋がる縁がきっかけで、醸造面において新しいアイデアや原材料にも出会えています。これからも変化を楽しみつつ、外部からの刺激も大切にしながら『飲み飽きしない美味しい日本酒造り』に励んでいきたいですね。」

石川杜氏
事業承継から3年が経ち、県内や国内での認知度が高まるなか、銘柄のひとつである[YELLOW]が「Tokyo酒チャレンジ2025」で金賞を受賞。シンガポールや香港、オーストラリアなど海外でも高い評価を受けている。

今後も革新的な酒造りや四万十町を巻き込んだ観光施策など、様々なアプローチで「fumimoto brewery」の魅力を伝え続けていくことだろう。
ライター:谷口廉
高知県出身/唎酒師・土佐酒アドバイザーの資格保持。
地元の出版社を経て、フリーランスの日本酒フォトライターとして四国エリアで活動中。
インスタグラム「sakelike_ren」で日本酒情報も発信している。
fumimoto brewery
- 創業
- 1903年(2022年事業承継)
- 代表銘柄
- SHIMANTO
- 住所
- 高知県高岡郡四万十町本町4-23
- 営業時間
- 11:00〜21:00(月曜は20時まで)
- 定休日
- 火曜〜木曜
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